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第6話 ぴより、展開を看破する

(ノアさんは裏切るよ)


(えっ?!)


 仰天するエリアル。


(何を言ってるの? 彼は始まりの民よ)


 後ろ姿でも、薄緑色の髪がはっきり確認できる。

 ノアさんは正真正銘、始まりの民だ。

 それでもゲームと同じ展開になるならば、彼は絶対に裏切るのだ。


(でも今まで一緒に活動してなかったでしょ? 同じ始まりの民なのに。

 それがなんで今になって、彼は現れたの?)


 遥か昔から星を守ってきた、超常の力を持つ種族、始まりの民。

 しかし、皆が皆、先祖と同じ暮らしを続けている訳ではない。


 このエルドーラで、エリアルと共に反ホープ社の活動をしているメンバーに、ノアさんはいない。


(この街で過ごす内に、便利な生活に慣れちゃったみたい。

 エリアルを捕らえたら、上層居住区に住む事ができるんだって)


(そ、そんな事って……)


(ホープインダストリーは彼を裏切らせるために、上層居住区の生活を体験させたみたい。


 裏切る時のセリフも覚えてる。

 確か「清浄な空気とうまい飯が忘れられんのじゃー!」だったかな)


(始まりの民なら魔法をエネルギーに変換する危険を分かってるはずなのに)


 落胆するエリアル。


(なんて情けない……)


(一応、ノアさんを擁護すると、彼が機械いじりが大好きだからってのもあるよ。

 彼は自分で作った魔法ロボでエリアルをさらうつもりなんだ)


(ちょっ……! それを先に言いなさいよ。

 だったら逃げなきゃじゃない!)


「それは大丈夫だよ」


「どうなされました、エリアル様?」


 いけね、声に出しちゃった。

 振り返るノアさん。

 にこやかな笑顔だが、あたしにはそれが怪しく見える。


(何が大丈夫なのよ?)


 小声のエリアル。

 心の中だからそんな必要はないんだけどね。


(まあ見てて)


「着きました、エリアル様」


 狭い路地の奥には開けた空間が。

 しかし、そこには巨大な人型ロボットが。


「ふっふっふ、エリアル様。

 ここからはこれで参りましょう、ホープインダストリーへ」


 にんまりと笑うノアさん。

 ついにノアさんが本性を現す。

 でもあたしはそれは知っているのだ。


 それよりリアル魔法ロボ、かっこいい! 強そう!


「聞いてらっしゃいますか、エリアル様?」


「あ、はい。魔法ロボで参ります。おけまるー」


(おけまるー、じゃない!)


 エリアルが心の中で怒鳴ってる。

 そうだった。知ってる通りの展開になったので、ついおけまると言ってしまった。


「と、とにかく一緒に来てもらいますよ」


 魔法ロボに駆け寄るノアさん。

 ロボの頭部から胸にかけては透明の強化ガラスでできたハッチが。

 それを開けてロボに乗り込む。


 エンジン音とともに、腰の辺りから、粒子となった魔法の光が噴き出す。

 立ち上がる魔法ロボ。


(ほらね、裏切ったでしょ!)


(喜んでんじゃないわよ!)


 二の腕を持ち上げ、三本指のロボットアームを閉じたり、開いたり。


「これで上層居住区に住める!

 清浄な空気とうまい飯が忘れられんのじゃー!」


(ほら、言ったー!)


(だから喜ぶな!)


 こちらに近付いて来る魔法ロボ。

 そして、掴みかかって来るロボットアーム。


(大丈夫だよ。だって……)


 ロボットアームはエリアルに届かない。

 あたしの思った通り。

 何故なら、


 長い刀がロボットアームを押し留めている。


 そして、魔法ロボットとあたしの間には、黒い人影が。

 紺色のツンツン頭と黒いボディスーツ。

 イケメン傭兵、ウィンドだ。


「こんな行き止まりに向かって行くから、おかしいと思っていたんだ。

 あんたが始まりの民だから騙された」


 ここに住んでるウィンドは、この街の裏道にも詳しい。

 ノアさんの行動をおかしいと気付き、後をつけて来たのだ。


「オレの家の近くに、でかいおもちゃを持ち込むなよ」


 ゲームと同じセリフだ!


(ウィンド様、サイコー!)


(様を付けるなっての)


 ゲームでは、この区画を出ようとする度に、


「あいつ、行き止まりに向かって行くなんて、おかしいな」


 と一度表示され、他の場所には移動できない強制イベント。

 だから絶対にウィンドは来ると思っていたんだ。


「追加料金はもらうからな」


 一瞬こちらを見るが、すぐに魔法ロボに視線を戻すウィンド。


「おけまるー!」


 あたしはウィンドの背中に返事をした。

 ゲームでは、エリアルが、


「分かりました」


 と答えるシーンだったけど。

 とにかく、狙い通りにウィンドは来てくれた。


「この傭兵風情が! 邪魔をするな!」


 激昂したノアさんはウィンドに狙いを定め、パンチ。

 それをひらりとかわし、逆に刀でロボットアームを攻撃。

 金属と金属のぶつかるけたたましい音が。


 しかし、魔法ロボットに刀の攻撃はイマイチ効果が薄い。

 切れ味の鋭い刀だが、打撃力には劣っているようだ。


「ふん、わしの自慢の魔法ロボには刃物なんぞ効かん!」


 勝ち誇るノアさん。

 刀にとって相性のよくない相手みたい。


(ウィンド、大丈夫なの?)


 エリアルも心配している。

 しかし、実はこの展開もゲーム通り。


「エリアル、補助魔法は使えるか?」


 ウィンドのこのセリフもそう。

 つまり、この戦闘はゲームシステム説明の一環になっていて、プレイヤーに補助魔法の使い方を教えているのだ。


(ここはね、エリアルのオフェンスエンハンスの魔法で補助してやれば突破できるんだよ!)


(じゃあ早く魔法を使いなさいよ)


(え……?)


(エリアルはあんたでしょ)


(あ、そうか)


 でも、魔法ってどうやるんだろう?

 とにかくワンチャン、やって見よう。

 ウィンドの方に手をかざすあたし。


「オ、オフェンスエンハンス!」


 魔法の名前を唱えてみた。


 ……………


 しかし、何も起こらない。


(何やってんの。ぴより。魔力を使うの)


 そ、そう言われても……


「ま、魔力……、魔力出ろ~!」


 そう言って力んでも、状況は変わらなかった。

 出した事ないもんね、魔力。

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