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第34話 ゲームクリアからのゲームスタート!

 港湾都市マーリタスの小高い丘に建てられた聖コスモス学園。

 赤い屋根と深緑色の壁のおしゃれな校舎。

 鮮やかなレンガで作られた塀の下には、ピンクのコスモスの花壇。

 校舎と同じ深緑色の鉄柵でできた校門。


「素敵な建物ですね」


「そうでしょ、エリアル!」


 学園の制服を着た、エリアルとナタリー。


 ブラウンのブレザーの下に白いYシャツ。えんじ色のリボン。

 赤字に黒と白のラインの入った、チェック柄スカート。


 キュートなナタリーにはもちろんばっちり似合ってる。

 でも、エリアルの上品なたたずまいもブレザーにマッチ。

 お嬢様感満点だ。

 そして、


「まあまあ動きやすいか。

 早く中に入ろうぜ」


 現れたのは、男子制服のウィンド。

 ブラウンのブレザーとYシャツはわたし達と同じだが、胸元にはネクタイ。

 コットンのスラックスは黒っぽいグレーで落ち着いた感じ。

 さすがに刀はしょってない。

 普段の武骨さから一転、スタイリッシュイケメンの誕生だ。


(かっこいい!

 生きててよかったね! エリアル)


 プレーしてないゲームだから油断してたが、ウィンドは制服もかなりイケてる。

 ワンチャン、傭兵スタイルより好みかも!


(心配とか言ってたのに。

 まあ、あんたも楽しそうで何よりだけど)


 これからあたし達の学園生活が始まる。

 門をくぐろうとするあたし達。


「ごきげんよう」


 その時、後ろから女性の声が。


 振り返るとそこには聖コスモス学園の制服を着た少女が。

 金髪の巻き毛が腰まで伸びた、切れ長の目に青い瞳。

 片手の真っ赤な扇で口元を隠している。


「おっほっほっほっほ。

 初めまして、エリアル様。

 わたくし、カザリーンと申しますの」


 ああ、やっぱり出た。

 あたしはこのキャラクターを知っている。


(あの子は何者?)


(悪役令嬢だよ)


(悪役令嬢? 何それ?)


(ざっくり言うといじめっ子かなあ)


 カザリーンはエルドーラ上層居住区の生き残り。

 上層民の生活が壊された事で、反ホープ勢力を逆恨みしている。

 それでいて戦っているウィンドを見た事があって、恋心を抱いていている。

 で、ナタリーを敵視。

 嫌がらせを繰り返すのだ。


「道を開けて下さいます?」


 別に込み入ってる訳でもないのに、あたし達を押しのけようとする。

 どうやらエリアルも敵視の対象みたい。


 張り合う必要もないので道を譲るわたし達。

 ところが、


「ごきげんようずら」


 さらにもう一人女生徒が。


 薄緑色の腰まで伸びた長髪。

 エメラルドの瞳。

 背は低くて、丸顔だが、エリアルと特徴が被っている。


(あいつは?

 始まりの民みたいだけど)


(悪役令嬢だね)


(また悪役令嬢?)


「チェーンずら……ですわ」


 始まりの民の集落はもう一つあった。

 北の山脈の奥深くに分家があり、そこにも神子の候補がいる。


「分家の話は聞いてたけど、あの子がそうなんだ」


 エリアルも面識のない神子候補。それがチェーンだ。


「この学園のトップになって、わたしの方が神子にふさわしいと証明してみせるずら」


 ゲームでも次期の神子を目指していたが、ここでは明確にエリアルをライバル視してるみたい。

 チェーンも先に校門をくぐって行く。


「ごきげんよう」


 さらにもう一人、後ろから生徒が現れた。

 赤い髪と赤い瞳の女性。

 柔和そうな細目で、優しく微笑んでいる。


「シルフィーと申します。

 お会いしたかったですわ、エリアル様」


 エリアルよりも長身。ナタリーよりもナイスバディ。

 圧倒的な存在感を誇っている。


(じゃあコイツは?)


(悪役令嬢なんだよなあ)


(何人いるのよ!? 悪役令嬢)


(三人だよ。これで終わり)


(そう、それはよかった)


 エリアルはホッとため息をついている。

 しかし、あたしは戦慄していた。

 そうだ。(ファンタジック)!コスモス学園にはコイツがいた。


(どうしたの、ぴより?)


(シルフィーだけはやばいんだって!)


 コイツは、カザリーンやチェーンとは格が違う。


 シルフィーと目が合ったエリアル。

 その瞬間、柔和な細目が吊り上がり、三白眼になる。

 さらが口元も歪み、ニヤリと笑う。

 赤い髪はまるで生きているように逆巻き、深紅の瞳は炎のように燃え上がっている!


(なっ、アイツ、まさか!)


 エリアルもシルフィーの異様さに気付いた。


(そのまさかだよー。


 シルフィーはゲイルと同じ天空の民。

 新しくやって来た侵略者なんだ)


(また天空の民が現れたっての!?)


 シルフィーは、どのキャラクターと恋愛しようと、必ず卒業前に倒さなくてはならないラスボスだ。


(今の時点で、ゲイル亡式よりも強くて、しかも二段階変身してパワーアップするの)


(何それ!

 そんなでたらめな話ある?)


 続編での強さのインフレーション。

 ゲームの情報を見た時は、「そうじゃなきゃ盛り上がらないもんね」って程度に考えてた。

 けど、実際に体験してみると「もういい加減にして」って感じ。

 正確には続編と言うよりスピンオフ作品で、だからこそハメを外してる感じなんだろう。

 でも、その設定までおんなじなんて。


(弱虫ゲイルの小僧に勝ったくらいで調子に乗らない事ね)


 テレパシーで、さっそくインフレ感を醸し出してきてるし!


 三人の悪役令嬢が、校門前でわたしとナタリーを待ち受け、不敵な笑みを浮かべている。


「うう…、なんか怖いよー」


 ナタリーも泣きついてくる。


(ぴより、ゲームの知識で何とかできる?)


 このゲームはプレーする気もなくって、ネタバレ情報をある程度見ちゃってる。

 しかし、その知識だけで切り抜けられるだろうか。

 それにゲームにはエリアルは登場しない。

 同じ展開になるとは限らない。


(むむむ……)


 一難去ってまた一難とはこの事だ。

 しばらく考え込むあたし。

 そして、


(エリアル、代わって)


 どうやら、まだまだあたしは休めない。

 お役御免はまだまだ早い。

 こうなったら覚悟を決めるしかない。


「……ごめんね。せっかくの楽しい学園生活なのに」


(いいじゃない。この方がわたし達らしいでしょ?)


 あたしはしっかり腰を落として力をためる。

 そして、拳を上に突き出し、竜王の闘気を纏い、飛び上がった。


「ドゥラゴンナパーッ!」


 みーんな、あたしが迎撃します!


<おしまい>

 お読みいただき、ありがとうございました!

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