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第29話 迫る運命の時 エリアルの覚悟

 エリアルが星の危機を察知した。

 みんながエルドラの防衛で、手の離せないタイミングで。


(儀式を行わないと、取返しのつかない事になる)


 ついにこの時がやって来た。

 エリアルが天候を変えて、星を救う儀式を行う時が。


(前に話したけど、ゲームの物語通りなら、エリアルはその時、殺されるんだよ)


 そして、運命の時が。


(死ぬかも知れなくても、やらなくては。

 いえ、死んでもやり遂げてみせる)


 この言葉がハッタリでない事を、あたしは知っている。

 ゲームでは実際に殺された後に、魂になってから儀式を完成させるのだ。


 あたしは今まで、一人で儀式に向かってしまうエリアルをうかつだと思っていた。

 ゲイルに殺されるエリアルを、舞い上がって、自分に酔って、突っ走った行動をとってしまったと思っていた。


 でもそうじゃなかった。

 彼女は始まりの民の神子である事に、誇りと責任感を持っていた。

 その務めに、命を賭けていた。

 それでもあたしには、エリアルにどうしても伝えて置きたい事が一つあった。


(あのさ、エリアル。

 一つだけ生き残る可能性を格段に上げる方法があるんだ)


(本当?

 そんなのあるんだったら、初めから言いなさいよ)


 言わずに済めば、何らかの理由でゲームと同じ展開にならなければ、言わずに置くつもりだった。

 しかし、この状況になってしまったら、もう言うしかない。


(エルドーラ防衛が終わるまで待つの。

 そうすればみんなと一緒に儀式の祭壇に行ける。

 これで、きっと生き残れるよ)


 今まで生き残るために頑張ってきたんだけど、結局はこれがおそらく生き残るための最適解だ。


(何言ってんの?)


 しかし、エリアルは察しの悪いあたしを諭すように言った。


(これ以上儀式を遅らせると、天候を正常にする過程で、大雨や大雪や津波が起こる。

 それは災害の原因になり、犠牲者も出る事になるの。

 これがギリギリのタイミング)


(それは知ってるよ)


 だって、それはエリアルが姿を消した時の、書き置きの内容だもん。


(でもさ、そうなったとしても、エリアルを責められる人なんかいないよ)


 一瞬の沈黙の後、エリアルは静かに言った。


(あんた、犠牲が出る事を分かっていて、自分が生き残るために、そうしろって言ってる?)


 それは感情を抑えた言い方だった。

 聞き間違いや、思い違いではないかどうかを、確認している言い方だった。


(軽蔑しちゃうよね)


 そしてそれは、聞き間違いや思い違いなんかじゃない。


(こんな状況になったのはエリアルの責任じゃない。

 それどころかエリアルはずっと警告をしていた。


 それなのに、エリアルが犠牲になるなんて、そんなの酷い。

 理不尽だよ)


 これはこの世界に来る前から思っていた事だった。

 理不尽な悲劇を変えたかった。

 エリアルに生き延びて欲しかった。

 そして、それが実現できる可能性が出てきた。


 軽蔑されたって構わない。

 健気なこの子を守る事ができるなら。


(あたしは……、エリアルに生きて欲しい)


 涙がぽろぽろあふれて来る。


(やれやれ)


 ため息みたいな声。


(軽蔑なんかしないわよ。

 わたしの方こそ、巻き込んで悪いと思っている)


(でも、わたしはより多くの人達を助けたいって、そう思ってるの。

 それにこの星の人々は、いつかこの状況を乗り越えられるって信じてる。

 環境と発展の問題だって、解決できるって信じてる。


 そして、死にに行く気なんかない。

 あたし達ならやり遂げられる。

 あんたとわたしなら)


「参ったなあ」


 そもそもエリアルが保身を優先する事なんてありえない。

 そんなの分かってたはずなのに。


 あたしは改めてエリアルを生かしたいと思った。

 この優しい少女に、生き延びて欲しいと思った。


 だけど同時に、この子が成し遂げようとしている事も応援したい。

 この気高い少女の目的を一緒に叶えたい。

 そう思った。


「そんな事言われたら行くしかないよ」


 こうしてあたし達はゲームの物語通り、単身で儀式の祭壇に向かったのだった。

 お読みいただき、ありがとうございました!

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