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第23話 ヘニャニャンのよくないハッスル

 波乱の花火イベントは終わった。

 ナタリーに告白された後にウィンドが現れる衝撃展開だったけど、エリアルの器の大きさでなんとかいい感じにまとまった。


「これでスカイルーク号は世界中を飛び回れるぜ」


 飛行船の改造も済み、ウィンド達はゲイル追跡に、本腰を入れる事になる。

 ゲイル目撃情報に従って、スカイルーク号は北部の山岳地帯の洞窟へ。


「わたくしエリアルは修行に励むので、代わりにヘニャニャンを冒険に連れて行ってあげて下さいです」


 闘神流の技を磨きたい。

 そんな想いであたしは飛行船に残って修行に励む事にした。

 ヘニャニャンは気まぐれだけど、この時は機嫌がよかったのか、すなおにウィンドに付いて行った。

 冒険に連れて行って、少しでもヘニャニャンにも強くなって欲しい。


(ぴより、これからのウィンド達の冒険では何が起こるの?)


 ファンタジックコスモスの主人公は剣士ウィンド。

 ゲームをクリアしたあたしは、彼の冒険で何が起こるのかをすでに知っている。


(ゲイルに追い付いて、ウィンドは二度目の対決をするよ)


(へえ、重要イベントじゃない。

 でも、ゲイルと決着って訳にはならないんでしょ?)


 ゲイルはファンタジックコスモスのラスボス。

 もちろん、決着は付かない。


(互角の勝負になるよ)


 確かゲイルが、


「キサマと互角などクツジョクだな……!」


 と言い、ウィンドが、


「その内、やみつきになるぜ」


 と返す、超かっこいいシーンだ。


(へえ、ウィンドもやるじゃない!)


 感激するエリアルだが、あたしはそんなにはしゃげなかった。


(どうしたの?

 元気ないじゃない? ぴより)


 ここから物語はいよいよ中盤に差しかかる。

 そして、


(その次に登場するゲイルが、エリアルを殺害するんだよ)


(あ………!)


 エリアルはファンタジックコスモスの中盤でラスボスに殺害される、悲劇のヒロインなのだ。


(ゲイルとの対決が迫ってるんだよね)


 これがあたしが修行に励みたい理由でもある。

 ゲイルはウィンドと互角だった事にショックを受ける。

 そして、各地の原種細胞から原種核を抜き取る作業のピッチを上げる。


(そして、ゲイルは進化するの)


(進化……)


 原種核を一定数取り込んだ天空の民は進化する。


 進化したゲイル。それが「ゲイル滅式」だ。


 生物的な殻の鎧を纏った、宇宙的な、いかにもエイリアンらしい姿。

 顔や長い赤髪は兜の間から見えて、イケメン感は損なわれていない。

 とても強そうなデザインになっている。


 エリアル殺害のイベントで、「ゲイル滅式」は初登場する。

 プレイヤーへの初お披露目は、ゲイル進化のイベントムービーの時なんだけど。


(そして、祈りの儀式の時が迫っているのね)


 そう、いよいよ環境汚染が看過できない状態にまでなる。

 祈りの儀式の最中に現れたラスボス第二形態、「ゲイル滅式」にエリアルが殺害されるのが、ファンタジックコスモスの物語だ。


(でも大丈夫だよ!)


 あたしがいるからには、物語通りに殺されたりはしない。

 そのために作戦を考え、実行してきた。


 闘神流武術を習得し、ヘニャニャンの必殺技のための乱数調整アイテムもゲットした。


 そして、ゲイルが儀式の間の上から奇襲を仕掛けて来る事も知っている。


(この感じなら、ゲイルの第二形態とも十分に渡り合えるって!)


 果たしてウィンド達は戻って来た。

 意気揚々とタラップを昇って来る仲間達。

 よい結果だったに違いない。

 あたしはホッと胸をなでおろした。


 と、思ったのはウィンドの違和感に気付くまでの話だった。

 何故かウィンドは日本刀らしきものを二本持っていた。

 彼は二刀流ではない。

 それに何より一本の刀には見覚えがあった。


「あれ、その刀は?」


「ああ、ゲイルの迅雷だ」


「じっ! 迅雷っ!?」


 やっぱり!

 ゲイルの刀って事は、つまりゲーム中盤で、エリアルを殺害する凶器になる刀だ。


 ファンタジックコスモスでゲイルが迅雷を手離すのは、もっと後の話。

 エリアル殺害後、立ち直ったウィンドがゲイル・滅式に勝利した時だ。


 ゲイル第三段階、というかラスボス形態「ゲイル・亡式」は刀を使わなくなる。


「もしかして勝ったの、ゲイルに?」


「ああ」


 ウィンドが頷く。


 この戦いでは、二人は互角の勝負のはず。


 それがここで勝ってしまうなんて。

 何かが起こっている。

 展開に影響を与えるような何かが。

 分からない。あたしは何もしていないのに。


「ゲイルの奴、『人生最大のクツジョクだ! 許さんぞ!』とかキレてたな」


 セリフも違う。

 にしたって、そんなに怒らなくたっていいでしょうに。

 ラスボスの考える事なんて分かんない。


「まさかヘニャニャンに負けるとは思わなかったんだろうな」


「ヘニャニャン!?」


「ああ、それもワンパンだ。

 パンチ一発ですごい竜巻が起こって、一撃でゲイルは吹っ飛ばされた」


(すごい竜巻? 何なの、それ?)


 エリアルにはピンと来ない。しかし、


「ね、ね、ね、ねコークスクリューだ、それーーー!」


 あたしはすぐに分かった。

 竜巻のエフェクトが出たなら、それは「ねコークスクリューパンチ」だ。

 1%のねコークスクリューが発動しちゃったって事!?

 それで勝っちゃったんだ。



 ゲイル、ヘニャニャンに負けちゃったかー。

 それで、人生最大のクツジョクね。

 わかりみー。


(展開が変わって、これからどうなるの?)


(1%が発動しちゃうなんて……。

 こうなってきちゃうと、あたしにも予想が付かないよー)


 ゲイルに勝つ事ができて、喜ばしい、と言いたいところなんだけど、あたしは何故だかいい予感がしなかった。

 このヘニャニャンのハッスルが、よくない結果を招きそうな、そんな予感がしていた。

 お読みいただき、ありがとうございました!

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