第15話 違和感の正体 繋がった記憶
(そのゲームの物語は、わたし視点ではないんでしょ?)
なぜかあたしは、エリアルと親しいはずの、クレイフさんとジーナさんの事を全く知らない
その事をエリアルに話してみた。
確かにゲームでは、このタイミングではエリアルとは別行動。
だからこの期間のエリアルの行動を、よく知らないのは仕方がない。
(二人はわたしが幼い頃から一緒よ)
リラックスした、楽し気なエリアルを見れば、それはよく分かる。
あたしも二人を疑ったりはしてない。
でも、だからこそ二人がゲームに出て来ないのはおかしい。
結構、重要人物っぽいのに、なんであたしは知らないんだろう。
(それより、闘神流の修行は手応えあった?
ゲイルに勝てそう?)
(それはばっちり)
短い期間だったけど、思ったより鍛えられたような気がする。
エリアルが闘気の扱いが得意だった事も大きい。
ゲームみたいに数値で分かる訳ではないけど、強くなった実感はある。
(これならワンチャン行けると思うんだ)
もう一つの作戦もあるし。
そんなこんなで、引っかかる事はあったけど、出発の時はやって来た。
汽車に乗り込む、あたし達、始まりの民の一団。
パンライのさらに西へ向かうと徐々に山林が減って行き、視界が開けて来た。
そのまま、車内で一夜を過ごし、目が覚めると緑もまばらになっていた。
そして、砂漠地帯に入り、ついにその場所にたどり着いた。
砂漠の街、メナス。
作物はあまり育たず、貿易で栄えて来た街だ。
近年は、地中の魔力エネルギーをホープ社が狙っている。
しかし、元々熱い気候の地域を言う事もあり、温暖化によるモンスターの強化を肌で感じている地域でもある。
工業化に諸手を上げて賛成している訳ではない。
土壁で作られた建物の並ぶ街並みを歩く。
ファンタジックコスモスでもそうだったなあ、とその風情を楽しむ。
もちろん、日差しが強くて、めちゃめちゃ暑い。
ただカラッとしてるし、エルドーラみたいに臭くはない。
あたしはこの街は意外と嫌いじゃないなあ。
しばらく進むと、白い石造りの建物が。
中に入るとすでにたくさんの人々が着席していた。
あたしと言うか、エリアルが姿を見せると歓声が上がった。
「歴史のある街ですからな。
始まりの民への信心はまだ根強い」
クレイフさんが教えてくれた。
だからこそここで演説をするのだろう。
「皆さん、よく集まってくれました。
わたしが神子のエリアルです」
もちろん、主導権はエリアル。
演説なんて、あたしの出る幕じゃない。
「ホープ社は、モンスターの増加は偶然と言っていますが、そうではありません。
星の温暖化によって、生態系が変わった事によって、モンスターが人里まで現れるようになったのです。
そして、その原因は工場から発生する魔力エネルギーの排熱なのです。
わたしは星のために祈りますが、それだけで世界を救う事はできないのです。
今のまま魔力エネルギーを使い続けると、もっと強力なモンスターが出現するようになります。
モンスターを媒介とした、未知の病原菌が蔓延する可能性もあります。
今こそ無計画な魔力エネルギーの使用を控えなければならないのです」
人々は食い入るようにエリアルの言葉に耳を傾けている。
エリアルには、あたしと同じ17歳とは思えない、威厳と言うか、堂々した存在感がある。
それでいて、耳に心地よい、まるで歌でも聞いているような、美しい声で話す。
難しい話なのに、するすると頭に入って行く。
やっぱりエリアルはすごい。
始まりの民の人達も満足そうだ。
クレイフさんの尊敬のまなざしを感じる。
ジーナさんは感動して目を潤ませている。
二人ともエリアルの立派な姿が見られて嬉しいみたい。
うーん、それにしてもなんであたしは、この二人を知らないんだろう?
何が違うんだろう?
エリアルはメナスの街で演説するから、パーティを離脱した。
それは今と同じ。
しかし、ゲームはウィンド視点なので、その時のメナスの街の出来事は分からない。
だけど、何か違和感があるなあ。
再会したエリアルから、演説の話なんかされなかった気がする。
ゲームの中でもメナスの街に行く事は可能。
メナスってどんな街だったっけ?
もちろん砂漠の街だけど、それだけじゃなかったはず。
物語的に、立ち寄るのは、エリアルの死後だったけど、そこで何か気になる事が……。
そうそう。メナスには破壊された建物があった。
神子の演説についての会話もあったはず。
何て言ってたんだっけ?
そうだ。
演説は中止になったって言ってたんだ。
演説をする建物で爆発が起こり、襲撃をされて……!
そのテロの首謀者を見つけて、ホープ社の陰謀を暴く展開が、ゲーム後半にあった!
始まりの民の神子は無事だったけど、ボディガードと侍女が犠牲になったって。
ボディガードと侍女って……、クレイフさんと、ジーナさんじゃないの?!
なんて事! 間違いない!
ウィンドが主人公の物語に二人が登場しないのは、登場する前に殺されていたからなんだ。
そして今、演説の真っ最中で、クレイフさんとジーナさんはまさにあたしのそばにいる。
つまり爆破テロが起こるのは……!
(エリアル! ここは危ないって!)
(ぴより!? どういう事?)
あたしの言葉で、エリアルは周囲をぐるりと見回した。
次の瞬間。
背後から爆発が起こった!
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