第13話 おす! 転生格闘神子誕生!
ナタリーの祖父、竜王斎の元で修行する事を決めたあたし。
(わたしが武術?! 本気で言ってんの、ぴより?)
(モチのロンだよ!)
驚くエリアル。
ゲーム、ファンタジックコスコスで、エリアルが格闘をするような展開はない。
エリアルは回復魔法の得意なキャラクターだ。
普通は刀の達人であるウィンドや、格闘少女ナタリーが攻撃担当、エリアルは後方支援担当に回る。
でも実は、エリアルは序盤に関しては腕力も高い。
これには理由があって、キャラごとに設定された成長タイプによるものだ。
エリアルの成長タイプは早熟タイプで、序盤に大きく成長するが、終盤はほぼ成長が止まる。
わたしは、ゲームクリア後、エリアルを生存させる方法はないか、ネットを調べまくったのだが、その時にこの情報を知った。
ゲームの早解き勢は、序盤のエリアルの強さを利用し、攻撃にも起用するらしいのだ。
そして、エリアルを殺害するのはラスボスだけど、その時点では最終形態ではない。
エリアル殺害後、ウィンド達の怒りの猛攻を受け、一旦は敗退する程度の強さだ。
中盤を戦えるだけの戦闘力があれば、生き残る事はできるはず。
(だからこの闘神流道場で修行をするって訳?)
(そう! 中盤でのゲイル戦に備えるの)
一つの問題は、何日修行のための日数があるかだ。
ゲームでは、日数の判断はできない。
しかし、ゲームのストーリーでは、仲間が二人増える。
その仲間の一人が飛行船を所有しており、それでここに戻って来る展開だったはず。
それなりの時間が、一か月程度の時間はあるんじゃないかと、あたしは思ってるんだよね。
(それがぴよりの作戦?)
(うん! 作戦はもう一つあるけど、それは仲間が増えてから、かな)
飛行船が戻って来た時に加入しているはずの仲間が、もう一つの作戦の鍵を握っている。
まずは闘神流の特訓なのだ!
「気とは己のみの力にあらず。
天然自然と一体化する事で、大きな力が得られるのだ!」
師匠が力を込めると、手が輝いた。
わたしが手を近づけると、ほんのり熱い。
すごい! かっこいい! やってみたい!
「あちょ~~~っ!」
しかし、わたしがいくら力を込めても、手は光らないし、温度も変化しない。
「力めばいいと言うものではない。
お主は天然自然の力と一体化しておらん」
気合いじゃだめなのかあ。
思ったより、スピリチュアルだ。
「お主は心のどこかで、この世界と距離を置いておる。
この世界の事を、他人事だと思っておるのではないか?」
うーん。
それを言われちゃうと、間違いなく別の世界から転生して来たと思ってる。
さすが竜王斎師匠。
あたしの深層心理の微妙な所まで読まれてしまった。
他人事なんかじゃあないんだけどね。
命かかってるし。
それにしても「自然と一体化」は、実はあたしにとって鬼門だったみたい。
何度試してもできる気がしない。
「だめじゃ、だめじゃ!
お主のような浮ついた小娘に闘神流を修める事などできん!」
ついに師匠が怒りだしてしまう。
(は? 小娘?)
一瞬、エリアルの声を聞いた気がした。
かぶりを振る師匠。
あたしには自然と一体化する能力が足りないようだ。
「悪い事は言わん。
ケガをせぬ内に諦めるがよい」
師匠は道場を立ち去ろうとしていた。
「ま、待って、師匠!」
慌てて追いかけようとするあたしだったが、
(構えなさい、ぴより!)
心の中でエリアルの怒鳴る声が。
言われた通りに構えるあたし。
(こういう事でしょ?)
その瞬間、地面から暖かいエネルギーを感じた。
ポッとわたしの手が輝く。
それはまぶしいほどの輝き。
沸き上がる強烈なエネルギー!
髪の毛が舞い上がり、道着がたなびく。
暖かいどころか熱風を浴びているかのよう。
(要領は魔法とおんなじでしょ)
エリアルが気をコントロールしていた。
魔法と同じ感じにやってるみたい。
「おおっ!」
師匠もその輝きに足を止め、振り向いた。
「こ、これほどの天然自然のエネルギーを引き出せるとはっ!」
(エリアル、すごい!)
(魔法も気も、天然自然のエネルギーを引き出すものだからね)
さすが、高い魔力を誇る始まりの民の神子。
エリアルは気の扱い方も得意だった!
(わたしをなめんじゃないっての)
エリアルのやる気に火が付いたみたい!
「その意気じゃ!
まるでさっきとは別人のようじゃっ!」
さっきとは別人がやってるんです、師匠。
(ぴよりはこの世界で育っていないから、この世界の力は使えないのかもね)
むむむ、残念。
せっかくなら魔法や闘気を使ってみたかった。
(気はわたしがコントロールするから、あんたは身体を鍛えたり、技を覚えたりしなさい。
わたし達が生き残るための戦いなんだから、それでいいでしょ)
(そうだね! 一緒に頑張ろう!)
武術はエリアルと共同作業で学ぶ事に。
こうして本格的な修行が始ったのだった。
「じゃあ行ってくるぞ、エリアル」
そして、いよいよウィンド達が出発する時がやって来た。
あたしは演説を控えている理由で、一旦離脱だ。
ウィンドはゲイルのヘリコプターが、エルドーラの方には向かっていない事に目を付け、その方角へ。
実はゲイルの向かった、北の渓谷地帯に、魔物を生み出す「原種細胞」がある。
周辺のモンスターを生み出してる原種細胞だ。
ゲイルはその腕を買われ、原種細胞の破壊を命じられている。
しかし、実は彼の目的は、世界中の原種細胞の核を取り込む事にある。
天空の民は、原種細胞の原種核を取り込む事でこの星の情報を取り込む事ができるのだ。
ウィンド達は今回それを阻止する事はできない。
すでにゲイルが核を抜き取った原種細胞と戦う事になる。
しかし、ゲイルの目的を知る事はでき、物語の核心に迫っていく事になる。
「おっす! 頑張るっす!」
ちなみにこの時のあたしは道着姿だった。
て言うか、朝の稽古の後だった。
タオルを首にかけた、そこそこ汗だくの状態でみんなを見送る。
緑色のタンクトップの下に白いTシャツ。
ナタリーの色違いだ。
下は緑のジャージ。
ナタリーのようにキュロットを履く勇気はなかった。
「変わったな、エリアル」
ウィンドはあっけに取られていた。
「そっかなあ。それほどでもないっすよー」
そんなに見つめられると照れるー。
「いや、変わり過ぎだろ」
バーンズからは厳しい突っ込みが。
段々関係性がフランクになってきたのもゲームの通り。
「まあ、身を守れるようになるってのは悪かない」
「だしょ、だしょー」
「とってもかっこいいよ。エリアル」
ナタリーもとっても楽しそうだった。
彼女は面白がって、あたしの修行にも協力してくれた。
緑の道着も、この街にいいのが売ってなかったので、作ってくれた。
同じ武術に励む仲間の存在が嬉しかったのかも。
「みんなー、気を付けてねー!」
道着姿で大きく手を振るあたし。
ゲイルと出会わないとは言え、ウィンド達も星の命運を賭けた大冒険をする事になる。
あたしは始まりの民のお迎えが来るまでの時間で、できる限り強くならなければ。
こうしてあたし達の生き残り作戦は始まった。
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