第12話 ぴよりの生き残り作戦、始動する
エルドーラを脱出する途中で、ついにわたし達はラスボスである剣士、ゲイルに遭遇する。
ウィンドにとって師匠の仇である因縁の敵だが、ゲイル自身はエリアルの命を狙っている。
ゲイルの本当の目的は、世界を滅ぼす事。
それを阻止できる始まりの民の神子であるエリアルが邪魔なのだ。
(あいつの存在も、ゲームの物語通りって訳ね)
ゲームの通りに物語が進むと、エリアルはゲイルに殺害される。
エリアル殺害の悲劇を回避するには、そしてあたしが生き残るためには、何とかしてこの物語を変えなくてはならない。
さて、運行を再開した汽車によって、わたし達はパンライの街に着いた。
ここはウィンドとナタリーの生まれ故郷。
開発の進んでない寂れた街だが、まだ空気が汚れていない街でもある。
エルドーラで喘息を患ったバーンズの娘、ヴィエラもここに移り住んでいる。
エリアルはここで、始まりの民の迎えを待ち、他の街へ演説に向かう。
エルドーラでは演説の手応えを得られなかった上に、ホープインダストリーから追手を差し向けられた。
しかし、まだ開発の始っていない街なら、話が通じるかも知れない。
まず、わたし達はバーンズの娘が移り住んでいる場所に向かっていた。
「やっぱ変わらないなあ」
先頭を進むのは、ピンク髪のセミロングの少女。
格闘少女ナタリーだ。
田舎の街をさらに、山の方に向かう。
山のふもとの坂道にその場所はある。
瓦屋根に、赤い柱の、立派な門がお出迎え。
屋根の真下には茶色くくすんだ木の看板が。
看板には筆で文字が書かれていた。
「闘神流武術道場」
それが施設名。
ここは格闘少女ナタリーの生家である、武術の道場なのだ。
漢字の看板があるなんて、どういう世界観なんだろう、と思うがゲームの通りだ。
「あっ、ナタリーだ」
「ヴィエラー!
元気してた?」
黒髪で褐色の肌の、幼い女の子が駆けて来て、ナタリーに飛び付いて来た。
満5歳のバーンズの娘、ヴィエラの可愛らしさもゲームそのままだ。なごむ~。
あたしもヴィエラと遊びたいし、一休みしたいところだが、今はやらなければならない事がある。
(もうじきゲームではエリアルの出番がないタイミングになるんだ)
あたしは心の中で、エリアルに話しかけた。
(出番、って何よ?)
この道場は飛行船を手に入れるまでは、主人公達の拠点となる場所だ。
そして、ロールプレイングゲーム、ファンタジックコスモスは3人パーティーのゲームだ。
仲間を3人選抜して冒険し、4人目以降はこの道場で待機する。
ただしプレイヤーが選抜できるのは、仲間になるキャラクターがある程度、揃ってから。
それまでは、誰が抜けるかについては、ストーリーの展開で決まっている。
(最初に抜けるのは、始まりの民の迎えを待つエリアルなの)
剣士、ウィンドを主人公とする物語において、エリアルの出番がない期間がもうじき訪れるのだ。
「おーい、神子様」
そこにバーンズが現れる。
「始まりの民の聖地から連絡があって、ある街で演説の手配ができたらしい。
この道場に迎えに来るから待っていて欲しいそうです」
(こういう訳)
(これもゲームの物語通りって訳ね)
(そう!
そして、この期間に、この場所で、あたし達の運命を変えるの!)
(一体何をするつもり?)
あたしが向かったのは、ヴィエラと遊んでいるナタリーのところだった。
「ナタリー、ちょっといいかな?」
「どしたの? エリアル」
ヴィエラの手を握り、きょとんとしているナタリー。
「一つお願いがあるんだ」
その後、わたしはナタリーに連れられ、道場の奥に通された。
板張りの大広間があり、正面の額縁には「闘気竜王如」の文字が。
その下には白髪の老人が、腕組みをして座っている。
「おじいちゃん、連れて来たよ」
白いカンフー服のような道着を着たその人物は、ナタリーの祖父、パイロン。
別名竜王斎。
闘神流武術の師範である。
「お主が闘神流を学ぶのか?」
片目を開け、渋い表情でこちらを一瞥する竜王斎。
「おす! エリアルっす!」
(わたしが武術?!
本気言ってんの、ぴより?)
(ふっふっふー、これが作戦その一だよ)
闘神流武術を学んで、中盤までに強くなって、ゲイルをやっつける。
これがあたしの生き残りをかけた作戦だった。
お読みいただき、ありがとうございました!
もしも少しでも面白い! 続きが読みたい! と思っていただけたら、
『ブックマーク』していただけると励みになります!
さらに広告下の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして頂けると対空技の威力が上がります!




