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第11話 こっち見んな! 宿敵、ゲイル登場!

(ウィンドはこの後、わたし達と一緒に行動する事になるから)


(へえ、あの頑固そうな彼がねえ。

 どういう風の吹き回し?)


 お金のために戦う孤独な傭兵、ウィンド。

 ノンポリな彼が始まりの民の神子(みこ)、エリアルと行動を共にする。

 確かに、意外な展開だと思う。

 しかし、そうなるのだ。


(風って言うか、嵐が来るんだよね……)


 あたしは身体が震えてきた。

 これから起こるイベントは、エリアルにとって重要だ。

 今となってはあたしにとっても。


「追手が来やがったぜ!」


 そう思った矢先にバーンズが叫んだ。

 そして、ホープインダストリーの追手が車室に入り込んで来る。


 青い軍服のような制服とヘルメットを付けた特殊部隊。

 手にした警棒は電撃を放つ事ができる。


「ここ、汽車の中だよ!」


 なぜ走行中の列車に、急に追っ手が現れたのか?


 答えは上空にあった。

 外からプロペラの回る轟音が聞こえる。

 ヘリコプターで汽車に追い付いて、侵入して来たのだ。

 大掛かりで面倒なやり方だが、ゲームの通りだ。


「バーンズ、ぶっぱなすんじゃないぞ」


 ウィンドが刀を構える。


「分かってらあ」


 バーンズはバズーカを、こん棒でも持つかのように両腕で抱えた。


「他の乗客のみんなに迷惑にならないようにやっつけるよ!」


 ナタリーも拳を構えて、ステップを踏む。


 この狭い列車でバトルが起こる事を、あたしはもちろん知っている。

 しかし、目の前のバトルは、ゲームとは大違いの大迫力だった。


 ウィンドが追手の攻撃を巧みにかわして、警棒を刀で叩き落とす。

 その後、バーンズやナタリーが打撃で敵をノックアウトしていく。


 狭い列車内ではナタリーが、身軽なアクションで大活躍!

 座席の上に立ったり、壁を蹴っての三角飛びで追手を翻弄し、鋭い一撃を叩き込む。

 可愛いだけではないところを十二分に見せ付けた。


 瞬く間に特殊部隊はダウン。

 しかし、騒ぎのせいで列車は停止した。

 ヘリコプターが間近で滞空しているし。


 列車を降りたあたし達は上を見る。

 屋根の上にはまだ一人だけ追手がいた。


 赤い長髪がヘリの風圧でなびいている。

 真紅の瞳。その眼光は燃えるよう。

 不敵な笑みを浮かべてる、端正な顔立ちの若い男。


 黒いロングコートも風になびいていて、その下に着ている灰色のプロテクターが見え隠れしている。

 手に持っている刀は、ウィンドと同じく長い。


 若く見えるが、一方で貫録のようなオーラを感じさせる。

 若いというか24歳だ。

 あの長い刀は名刀、迅雷。

 ちゃんとゲームの通りのタイミングで現れた。


(あいつがゲイルだよ)


 ロールプレイングゲーム、ファンタジックコスモスのラスボス、ゲイルの初登場のシーンだ。


(あいつが……?

 なるほど。天空の民みたいね。

 赤い髪と、深紅の瞳、過去の侵略者の言い伝えの通りだわ)


 エリアルは髪と瞳の色で察した。

 過去にも宇宙から飛来した侵略者はいた。

 だから天空の民の名があるのだ。


(あ、あの刀でエリアルが殺されるの……)


 リアル迅雷を見て、ショッキングなエリアル殺害シーンを思い出してしまい、寒気がしてきた。


(ふーん)


 敵の姿をよく目に焼き付けようとするエリアル。でも、


(ちょ……、ぴより! 目をそらすな!)


(だってこっち見てるんだもん)


 このシーンは主人公である、ウィンド視点ではゲイルとにらみ合っているように見える。

 ゲイルはウィンドの剣術の兄弟子に当たり、さらに師匠の仇でもある。


 でも、ゲイルはウィンドの後ろのエリアルだけを見ているのだ。

 排除するべき邪魔者として。


 しかも、ゲイルはその事をよりにもよって、エリアルを殺害した直後のバトルの前に明かす。


「なぜエリアルを殺した! 卑劣な事をしないで、おれを狙え!」


 と激昂するウィンド様に、


「おれは初めからお前など眼中にない。儀式を行えるその女が邪魔だっただけだ」


 と、言い放つ。


 それを知ってると、共感性羞恥がやばくて、気まずい。

 それにずっとガン見されてると、陰キャのあたしは耐えられない。


(にらみ返しなさいよ!)


(無理無理無理無理! 絶対無理!)


(ワンチャンやってみなさいよ!)


(そんなワンチャンありませんー)


 リアルなラスボスの貫禄はやっぱり半端なくて、圧が凄い。


「ゲイル……! 師匠の仇!」


 そうこうしている間に、ウィンドとゲイルの因縁のイベントが始まった。


 ウィンドは一足飛びに列車の上に。

 刀を抜いてゲイルに駆けていく。


「どうして師匠を殺した?!

 なんでホープインダストリーに付いている!?」


「質問が多いな、ウィンド」


 さすがにゲイルもウィンドを見た。


「弟子は師を超えるもの、と言うだろう」


 顔色を変えず、ニヤリと笑うゲイル。


「ふざけるな!」


 斬りかかるウィンドだが、軽くいなされてしまう。

 ウィンドはさらに何度も切り込むが、ゲイルの涼しい表情は変わらない。

 兄弟弟子として育った二人だったが、実力の差は明らかだった。


「そして、このオレの才能を、ホープインダストリーは高く買ってくれた」


「だから奴らの犬になったか!」


「ふん」


 ウィンドは大きく身体をひねり、渾身の一撃を繰り出すが、ゲイルはたじろぐ事すらなく、それを受け止めた。

 逆にウィンドがバランスを崩し、倒れ込んでしまう。


「つまらん勝負だった。

 もう少し楽しませてくれると思っていたがな」


 伏しているウィンドには返す言葉もない。


「ここで死ぬがいい」


 刀を振り上げるゲイル。

 しかし、それを振り下ろす事はなかった。


 ゲイルがこちらを見おろす。

 正確にはバズーカを構えるバーンズを。


「無粋なまねをするじゃあないか」


 バーンズはゲイルに向かって、バズーカを構えていた。


「誰もフェアプレーの精神で見守ってやるなんて言ってねえ」


 ゲームではかっこよくてテンションの上がったシーンだ。

 このシーンが始まったなら、一安心。


「興が冷めた」


 ゲイルは刀をしまい、後ろに下がった。


「命拾いをしたな。

 これにこりたら、もうおれの邪魔をしない事だ」


 ヘリに乗り移ったゲイルは、もう一度、あたしを見た。

 やっぱりあいつは、明確にエリアルの命を狙っている。


 ゲームで見た通りのイベントが目の前で繰り返された。

 そして……、


「クソッ!

 ゲイルの奴!」


 列車の屋根に拳を叩きつけるウィンド。


「ゲイルの奴がホープインダストリーに付くなら、あんた達と一緒に行動した方がよさそうだ」


 ウィンドが正式にエリアルを守るために戦ってくれる事になった。

 これもゲームの通り。


「それでいいな、エリアル」


 ウィンドに見つめられるあたし。

 やっぱりどきどきしてしまう。


「ぜ、全然オッケー、……ですわ」


 これで、傭兵ウィンドが、ゲームの通りに仲間になった。


 そして、


(あいつがゲイル。天空の民……)


 心の中で、エリアルのつぶやきが聞こえてきた。

 宿敵であるラスボス、ゲイルが、ついにあたし達の前に現れた。

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