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第385話 俺Tueeeeはまだ出来るのでした

「……何だ?何をしたんだ、ノワール侯爵は」


「眩しいのう……老体にはキツいわい」


 アイシスが黄金色に輝き出して十秒足らず。徐々に輝きが増して――


「いや、ちょっ!眩し過ぎ!痛いくらいなんですけど!」


『いや、後ろ向くなり手で眼を塞ぐなりすればええやん。どうせ光で見えへんねんから。眼が灼かれるんを耐えてまで見続けんでも』


 ぜ、全裸だから見続けたわけじゃねぇし!心配だから見続けただけだし!


「ちょっとフレイヤ様!これ、大丈夫なんですか!」


「大丈夫……な、はずじゃ。肉体と魂の両方を作り変えて神族になろうとしとるのだから多少の時間は掛かる――じゃが、ここまで時間が掛かるのはちとおかしいような……」


『その子は魂も肉体もボロボロだったからね。作り変える過程で修復もされるだろうけど、普通より時間は掛かるだろうね。それにその子は勇者であり魔王みたいだし』


 勇者と魔王だと何か問題が?


「それだと何か問――」


「あ、終わるみたいだよ、お兄ちゃん」


「光が収まって来たね。直に見ても眼が痛くないかも。ほらほらジュン、見るなら今の内だよ」


「アイ、お前まで何だ……俺は紳士だぞ」


 そう、俺は紳士。気を失ってる女性の裸をガン見し続けるような事はせん。その証拠にこうやって――


「まだ目を覚まさないアイシスに毛布をそぉっ~~~~~~~~~~~~~~~~とかける。ドヤァ」


『すっごくゆっくりかけたね』


「見たいなら見たいと素直に言えばいいじゃろうに。わしの裸で良ければ見せてやるぞ?」


 おかしい。この紳士な行動を見て何故そんな感想が出るのか。


『順当な評価ちゃうかなぁ……アイシスのスキャン、終わったで。完全な死は避けられた、と見てええやろ。後遺症があるかないかはアイシスが目覚めてからやな』


 おう、そうか……後遺症?


『肉体だけやなく魂まで崩壊しかけたんやしなぁ。その状態から神族に成る事で助かったとはいえ、性格、記憶に何らかの障害が出とっても何らおかしないわ。性格や記憶っちゅうんは脳だけで構成・保管されとるもんやないからな。魂と密接に繋がっとるわけで』


 …………そうか。それは多分、どうしようもない事なんだろうな。


『ないな。まあ、もしかしたら何の後遺症も無いって可能性もゼロでは――お』


「ん………んんっ…………」


 ……目覚める、か。折角助かったんだ。完全に無事であって欲しいものだが……


「……ポラセク団長とレッドフィールド団長はアイシャ殿下を。レーンベルク団長とイエローレイダー団長はノワール侯爵を。私はベルナデッタ殿下を御守りする」


「了解だ」


「了解……警戒は要らないと思うけど……」


「この少女の護りは不要だ」「私達が居る」「というか、私達の事を忘れてないか」


 五人の団長がアイシスを警戒して配置に着く。団長達だけじゃなく、全員がだけど。


 三人の天使達は……すまん、正直忘れてたわ。


「……あ」


「起きたか。わしが誰かわかるか。自分の身体に何か異常は」


「あと、アイシスは今、全裸だから。起き上がる時注意ね」


「全裸ぁ?……あらやだ、ほんとじゃない。なぜなぁぜ?」


 ……気のせいかな。


『気のせいやないと思うで。わいも最初と人格……性格がちゃう気がするわ』


 ……そうか。


「……アイシス、どこまで覚えておる。最後の記憶は何じゃ。わしが誰かわかるか。言うてみぃ」


「ええと……ここは誰?僕はどこ?」


「……重症じゃな。可哀想に……元から馬鹿っぽい娘ではあったが更に脳内お花畑になってしまったようじゃ」


「酷い。誰が脳内お花畑なの。空気が重いからジョークで和ませようとしただけなのに」


 空気を読んだならそこは真面目に答える一択な筈なんだよなぁ。


「フザケんと真面目に答えんか。先ずはわしの名前を言うてみぃ」


「何なの一体。女神フレイヤでしょ。で、僕は勇者アイシス。神様に頼まれて別世界を救いに行って。ヘラにジュンを殺すように言われたけど拒否して。それから……どうなったんだっけ」


 記憶に関しては……ほぼほぼ問題ない、か?


 影響が出たのは性格のみ、と判断していいのか。


『人間やめて神族になったんも問題やと思うけどな、本人からすれば』


 そこは命が助かっただけ儲けものと諦めてもらうしかないわけで……


「……身体に関してはどうじゃ。お主は今、人間ではなく神族になっておる筈じゃ。何か違和感はないか」


「……神族?天使になったって事?確かに僕は天使みたいに美少女だとは思うけど」


「なんか腹立つな、こいつ」


「わたしも~」


「右に同じ」


 君らはクリスチーナで慣れてるでしょうに。


「で。どうなんじゃ。大事な事じゃからキリキリと答えい」


「どうして神族になったのかを先に教えてほしいとこだけど……ん~、言われてみれば?何か今までと違うような……んんっ~~~あっ」


 おおっ……アイシスの背中から天使の翼が出た。天使の輪は出てないが。


 間違いなく神族にはなってるっぽい。


「…………なに、これ」


「天使の翼じゃな。これで神族になったのは事実だと理解出来たじゃろう。他に何か違和感はないか」


「………………多分、無い。無いけど、僕に何があったのか誰か説明してくれない?」


「もういいでしょ。後であたしが説明してやるわよ。どうせこれで今生の別れになるんだから。結果だけ後で報せてやればいいでしょうよ」


 ああ、そうか。当然アイシスは元居た自分の世界に帰るわけで――


「ええ~……僕はジュンと――」


『ああ、それなんだけどね。アイシスは自分の世界に帰らなくても良さそうだよ。むしろ帰らない方がいいかも』


「え。何で?ていうか、誰。誰の声?」


『僕の事はあとで誰かに聞いてね。で、君が帰らない方がいい理由だけど。さっき君の家にさ、隕石が落ちてね。ほんと、ついさっき』


「「は?」」


 隕石が落ちた?それはまた何と言う不運。


『人的被害は無かったんだけど、君の家は完全に吹っ飛んじゃった。いや、崩落したって言うのかな』


「え?は?……ちょ、ちょっちょっ、な、何言ってんの?意味がわかんない」


『だからぁ。隕石が君の家に落ちて、大爆発が起きた。んで、君の家が建ってた場所が崩落した。理解した?』


「……はああああ?!いやいやいや!おかしいよ!だってアレ元魔王城だよ!?すっごい頑丈に出来てるしすっごいデカいのに!それが爆発!?崩落で消えた!?意味わかんない!」


 元魔王城って……自分で倒した魔王の城を奪ってそこに住んでたのか。


 そりゃ立派な城だったろうけども。よく住めるな、そんな城に、


『ああ、魔王の城だったんだ。通りで断崖絶壁なんて見て不安になる場所に建ってたわけだ。それに使用人の一人も居ないし、周りに誰も住んでないのも納得。なんだってあんなとこに住もうと思ったわけ?』


「だ、だって魔王を倒した褒美に魔王が持ってた土地と宝物は全て僕の物になったし……あ!宝物!ねぇ宝物はどうなったの!?」


『城が吹っ飛んだんだから跡形もないよ。決まってんじゃん。ああ、表札だけは残ってるよ。辛うじて』


 表札……魔王城に表札……


「そ、そんなぁ……僕のコレクションが……」


『素直に諦めた方が良いよ。どうも君、世界中から危険視されてたっぽいし』


「……は?危険視?」


『君、随分と周りに迷惑かけてたみたいじゃん。多分、魔王の力の影響だったんだろうけどさ。我儘だし、すぐキレるし、何でも欲しがるし、直ぐ怠けるし、凄く食べるし。嫉妬と色欲には塗れてなかったみたいだけどさ』


「……」


 心当たりがあるらしい。眼が泳ぎまくっている。


『そこに謎の大爆発だよ。これ以上増長するようなら始末してしまおうかと国が考えてる中での大爆発。国は既に勇者アイシスは死んだって発表、もし生きてたら始末しようって動いてるみたいだよ。英雄なのに随分嫌われてるね。何したの』


「……お、王子が僕に結婚しろとか偉そうに言って来たから殴った……何て事もあったかなぁ~……」


 ……それ、イエローレイダー団長を重傷にした時以上にひどい状態にしたんじゃね。その王子がどんなヤツかは知らんが可哀想に。


『まぁ、そんなわけだから。君は元の世界に帰らない方がいい――』


「ちょっと待ちなさいよ。こいつには魔王と勇者の力があんのよ。元の世界に帰ってもらわないと、あたしの世界が安定しないでしょうが」


『ああ、それももう手遅れかな。魔王と勇者無しで何とかするしかないね』


「……手遅れって何よ」


『アイシスが神族になった事で魂に宿ってた力の殆どが消えちゃったみたいだよ。大罪の魔王の力は全消失。勇者の力は残滓と呼べるかなって程度のものがほんのちょっとだけ。まぁこれも全消失と呼んで差し支えないかな。御愁傷様。自業自得だけど』


「「…………はぁぁぁぁぁぁぁ!?」」


 これは……予想外の形ではあるものの。神族になったことで出た後遺症……いや、代価か。これだけで済んだのなら御の字だろう。


 アイシスとしては納得できないだろうが。


「勇者と魔王の力が消えたって……な、何してくれやがんだごらぁ!」


「やかましい。全てはヘラ、貴様の自業自得じゃろが。不幸なのは完全に巻き込まれただけの住人達じゃろが」


「僕も被害者だと思う!僕の力を返してよ!」


「アイシス……確かにお主は被害者だと思うが、自業自得な部分もある。いくら魔王の力に影響されたと言えどな。それにお主を救うには魔王の力は回収する必要があった。命が助かっただけ有難いと思って諦めるんじゃな」


「そ、そんなぁ……それじゃ僕はこれからどうしたら……」


『元の世界には帰らない方がいいのは間違いないよ。ま、ジュンと一緒に居たいならそうすればいいんじゃない。ジュンが責任取って面倒みてくれるよ』


 おい、こら。


 俺になんの責任があるっちゅうねん。


『いやいや。アイシスの城に落ちた隕石。それってマスターのやらかしやろ。さっきそんな事言ってたやん、エロース様が』


 ……カラドボルグで斬った時の話か!?


 え、マジで!?俺が斬ったから隕石が落ちてアイシスの城に直撃したの!?


『そういうこっちゃやろなぁ。アイシスを救う為にやった事の余波でアイシスの城に隕石が落下、大爆発。因果やなぁ。ハハハ、ワロス』


 笑えねぇぇぇ!流石に笑えねぇぇぇ!


 てか、それってどんな天文学的確率で起きた事態なんだよ!宝くじ一等当たるよりも遥かに低い確率だろ、それ!


「ジュンが責任とってくれるなら……まぁ、いっか。よろしくね、ジュン」


「「軽っ」」


 はぁ……仕方ないか。こうなる運命だったんだと諦めよう。


『じゃ、フレイヤ。そろそろヘラを連れて戻って来なよ。僕の後ろで懲罰委員会の神……具体的に言うとアテナやティテュス、テミスが怒って待ってるからさ』


「お、おう……おっかないヤツばかりじゃのう。覚悟出来とるか、ヘラ」


「…………フ、フン。覚悟は出来てるわよ。サッサと帰るわよ」


 強がってはいるものの。恐怖に震えてるのが丸わかりだ。そんなにおっかない神様なのか……


『ほら早く早く。もうヘラの妨害効果も消えたしさ』


「うむ。それじゃ……ジュン、アイ。それに勇敢なる戦士達よ。御苦労じゃったな。お主らには後にわしからの祝福を贈ろう。それではさらばじゃ」


「あ。そうだ、そっちの世界にはまだあたしの――」


 消えた。いや、俺達が元の世界に戻った、のか。


 なんか最後にヘラが気になる事を言ってたような気がするが……


「お、おお!アイ!ベル!無事に戻ったか!」


「ノワール侯爵も無事なようで。何よりですな」


「ジュン!無事で良かった!」


「ママ!宰相!ローエングリーン伯爵も!全員無事に戻ったよん!」


 ……ここは城、か。どうやら転移する直前に居た場所にそれぞれが戻ったらしい。


 アム達ニリヴァ、ファフニール様の姿なんかは見えない……あれ?


「なんであなた達まで戻ってるんです?」


「あ、ほんとだ。もうベルの護衛は必要ないんじゃないの?」


「「「……」」」


 何故かベルナデッタ殿下の護衛、三人の天使まで戻っとる。表情から察するに……何も聞かされてませんね?


「よくわからんが……よくぞ無事に帰った!宴を開くからそこで話を聞かせてもらおうか。特にアイシスも戻って来た理由をな」


「ノワール侯爵救出作戦に参加した者は全員呼ぶといい」


「あ、宴?やったぁ!僕、お腹空いてたんだぁ」


 ……さっきまで死にかけてたのに、やっぱり大物やね、アイシス君てば。


「それにしても………これでほんとに全部終わったのかぁ」


「だね。あとは……ウチとの結婚式だね!どんな式にするか早速相談しよう!」


「あ、はいはい!僕も!僕も結婚式するー!」


「あ、貴女はダメよ!貴女が結婚するのは一番最後!式も挙げるのはアイシャ殿下だけです!」


 アイも元気だな…俺は正直疲れたぞ。宴よりも休みたい……


『まぁまぁ、ええやん。まだ寝るには早い時間みたいやし。わてもマテリアルボディで参加しよかなぁ』


 ……戦闘では出さなかったのにか。良いけどね……


 でも、これで本当に神様関連のゴタゴタは終わり。あとは結婚して子作り三昧の日々、か。


 あ、なんかドっと疲れが……


『だからぁ、それが使命なんやって。覚悟は決めてた筈やん』


 そうなんだけどね……せめて最後にもう一度俺Tueeeeしたかった……


『俺Tueeeeはまた出来る機会あるて。ほらほら、元気だしぃ』


 へいへい……



 あれから数日後。


 アイとの結婚式の日取りも決まり、婚約者達の眼のギラギラが日々増していき。身の危険を感じる今日この頃。


「結婚式まで俺の貞操は護られるのだろうか……」


「未だに貞操を護ってる事こそが異常なんだけどね、この世界では。ウチと一緒に居る限り大丈夫だって」


「僕も護ってあげるから大丈夫!だからユウ、結婚の順番、僕と代わって――」


「やだ。絶対やだ」


 今はアイ、ユウ、アイシスと三人で御茶してる。こんなのんびりした時間を過ごせるのも後僅か――


『やっほ。聞こえるかなー。こちらエロースでーす」


「「「はへ?」」」


 エロース様?


 一体何の用……ヘラが起こした事件の顛末を教えてくれるとかか?


「どうかしたの、エロース様」


「もしかして僕の為に結婚式の順番を変えるように神託を――」


『いや、そんなつまんない事で神託を下ろしたりしないから。ちょっと問題が残ってる事が判明したからさ。それで連絡をね』


「問題?まさかヘラがまた何かやったんですか」


『うん、その通り……いや、既にやらかしてたんだけど。ジュン、君さ、犬神って覚えてる?』


「犬神……勿論覚えてますが」


 俺を探し出す為の釣り餌にされたヤツね。クー達の養母を殺した……


『アレは君を探し出す為に送られた存在だったわけだけど。他にも複数体、似たような存在を送ってたらしくてね』


「……ん?それは魔王とは別にって事ですか」


『そうそう。魔王とは別に。その世界の何処に居るかわからない君を見つけるのに一体だけ送るんじゃ効率が悪いと思ったんだろうねぇ。そっちの世界各地に送ってたみたい。ああいうのを』


「それって……」


 それって、つまり……つまりは……


「俺Tueeeeのチャンスがまだ残っている!?」


『う、うん?……で、だね。例によってそいつらは本来はその世界に居ちゃダメな存在だから、さ。君にそいつらを倒すか送り返すかして欲しいんだ。大まかな居場所はヘラから聞き出したから。後でデウス・エクス・マキナに――』


「了解です!それでは早速!」


「あ、ちょ、ジュン!ウチも行く!」


「お兄ちゃん!黙って行ったらピオラお姉ちゃんに怒られるよ!」


「ジュン!僕も連れてってー!」


 ハッハー!俺の俺Tueeeeは何処だー!


『……楽しそうやなぁ。ええんやけど。やれやれやで』

これにて本作は最終話となります。


急病などで休載したりしてなんだかんだと四年近くかかってしまいました。

長くお付き合いいただき本当にありがとうございます。


皆様の応援、感想、評価、誤字脱字報告等々……本当に力になってくれました。

次回作でも応援して頂ければ幸いです。


その次回作はゲームの世界を舞台にした転生物を考えてます。

もしかしたら異世界とは全く別の作品の構想もあるにはあるので、そっちに舵を切るかもしれませんが……どっちにしろ何話か書き溜めてからスタートするつもりです。


それではまた、次回作でお会いしましょう。


ありがとうございました。


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― 新着の感想 ―
 作品完結あめでとうございます。お疲れさまでした。  正直な話、終盤キャラが多いうえに描写はほぼセリフ会話だけで進み、誰のセリフなのかすら判別するのに苦労するありさまで読みづらかったですが……。  と…
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