第383話 マジでした
ずっと揺れ続ける世界……ヘラの発言からしてろくでもない事が起きるのは間違いなさそうだが。
一体何をした?
「ヘラ!貴様!いい加減にしたらどうじゃ!何をしたか知らんが早う止めい!」
「止めるかぁ!何をしたかはすぐにわか――」
『どうせリセットでしょ。その世界ごとジュンを消し去っちゃおうって浅はか~な考えでしょ』
「なっ、こ、この……だ、誰が浅はかだごらぁ!」
リセット?世界ごと消すって、つまり……今居るこの世界を消すって事か。
「こ、この大馬鹿者が!己の復讐の為に世界を一つ滅ぼすなど正気か!」
「うっさいわね!この世界はまだ何にも無いんだから消してもこいつら以外は死なないわよ!」
……つまり早いとこ逃げればいいんじゃね。
「というわけで。フレイヤ様、早いとこ元居た世界に転送するなりなんなりしてください。一時的にフレイヤ様の世界に行く、でもいいですし」
「そ、それが……さっきからそうしようとしとるんじゃが……おい、エロース!ヘラが施した妨害措置は消えたんじゃなかったのか!どうなっとるんじゃ!」
『割れてはいるけど完全には消えてないみたいだね。僕が作った勝手口は完全に消えちゃったけど』
「……つまり、このままだと」
「全員死ぬ、という事だな」
「ちょ、えええ!?それは困るんだけど!私はまだ死にたくな~い!なんとかしてレオナちゃん!」
「レッ、レッドフィールド団長……」
「意外と逆境に弱いのね……」
いやでも、落ち着いてる場合でもないのは確か。一体どうすれば……メーティス!
『ん~……マスターだけならデウス・エクス・マキナの空間収納に入れるから助かるかもしれんけど。アイらは入れんから助けられへんな。でもまぁエロース様が何とかしてくれるんやろ。落ち着いてるし』
何とか……出来るの?
「エロース様!何とか出来るなら早くしてください!」
『今、僕が出来る事は無いかなぁ。せいぜいアドバイスくらい』
「え。あれ。これって本当に死ぬ流れ?流石のウチも世界の崩壊とかどうしようもないんだけど!?」
『まぁまぁ。落ち着きなよ。そろそろ出て来るから』
出て来るって何が……なんかデウス・エクス・マキナに似た球体が何処からともなく出て来たぞ。
で、その球体の前、空中に画像が出てカウントダウンしてる数字が……これはつまり?
『それは世界の管理装置だね。その装置を通じて世界の在り様を決めて行くんだけどリセット機能もついててね。その数字が0になればリセットが実行、全て無に帰すってわけ』
「一秒で1カウント進んでるみたいね」
「残り約1800秒ね……」
「30分あれば一発くらい出来る!ジュン!最後の想い出に――ぐほぅ!何をするドミニー!離せ!処女のまま死にたくない!」
「……」
「最年長のくせに情けない姿見せるな。どっしり構えて大人しくしてろ、って言ってるわよ」
「目前に迫った死を前に最年長もなにもあるかぁ!離せぇ!離してくれぇ!せめて最後に尻を揉ませてくれぇ!」
……追い詰められると人間の本性が出るというが。ステラさん、あんた裏表なく自分に正直に生きてたんだな……普段と全く変わりませんやん。
「で。フレイヤ様、何とか出来そうですか」
「てかフレイヤ様も世界の管理とかしてるんでしょ。だったらこの装置とかリセットについて知ってた筈よね。何ですぐに思い至らないの」
「う……わ、わしは世界のリセットなんぞした事無いからじゃ。他の神もリセットなんぞせんのじゃ!世界を創った責任があるからじゃ!だから、その……な?」
「やった事無いから止め方も知らないとか言わないでしょうね」
「……わ、わしはヘラを抑えておくのじゃ!後は任せたぞジュン!」
「「この駄女神がっ!」」
くっそ!わかっちゃいたが此処まで頼りない神様だったとは!ああ、もう!
メーティス!あれの操作とか出来るか?
『出来るわけ……あれ?世界の管理装置のマニュアルがデウス・エクス・マキナに入っとるわ。なんで入っとるんやろ?』
入っとるならええやんけ!早く指示してくれ!
『なんや、えらい都合がええなぁ……まぁええ。指示するよりわいがやった方が早いわ。ちょい身体の操作権、もらうで』
おう!存分にやってくれ!
『そろそろ焦った方がいいよ。ジュン、君なら出来る……お。そうそう、そのまま進めて~』
「……ジュンが何してるのかサッパリわかんねぇ」
「わたしも~」
「ピコピコ鳴ってる」
……アレだ、SF映画でもよくある自爆する基地を停める為にコンピューターをハッキングするシーンだな、これ。
剣と魔法の世界を生きる住人にはサッパリポックリだろうな……
「ノワール侯爵!頑張れ!超頑張れ!何してるかサッパリだけど!生き残れたら妹達を好きにしていいから!オマケにお母さんも好きにしていい!」
「アウレリア……お前が戦闘以外でそこまで必死になったのを初めて見たぞ……」
「でも、ノワール侯が失敗したら本当に死ぬ……んですよね」
「ギルドマスターじゃないけど……最後にキスくらい……あたた!」
「レーンベルク団長、まだ筋肉痛が治ってないのか」
「そんなのどうでもいいからノワール侯爵を応援して!」
むしろ静かにしててくれませんかね……どうだ、メーティス。
『……問題のとこまでは進めるけどもやな……恐らく、そこで終わりなんちゃうかな』
問題ってなんだ……これ以上何があるってんだよ。
『そうそう、そこを……そう、それ。で、その暗号を解読して、リセットを止める為のキーワードを入力して終わりだよ』
……暗号が解くかキーワードを知らなきゃどうにもならんって事じゃね、それ。此処まで来て。
『そういうこっちゃな……で、わいにはこの暗号、サッパリやわ』
……このわけのわからん数字の並び……0から9までの数字が無規則に並んでるようにしか俺には見えない。
が。
「アイ、この暗号って……」
「うん。なんだっけ、RS……なんちゃら?」
そうそう、RSなんちゃら。この暗号が発表された時、数万人だか数十万人の協力を得て、尚且つ当時のスーパーコンピューターを使い、かなりの時間を使ってようやく解けたとか言う……それを残り30分に満たない時間で解け、と?
無理!無理過ぎ!せめてなぞなぞにしろや!
「はーっはっはぁ!解けねぇだろ!解けねぇよなぁ!だってあたしにも解けねぇんだからな!」
「自分で解けんもんを暗号にしたのか貴様は!どこまで愚かなんじゃ!」
「あたしは答えを知ってるから良いんだよぉ!解き方を知らねぇだけだぁ!」
「なら答えを言え!」
「だれが言うかばぁ~か!」
……拷問しても言わないだろうな。どうする……まともなやり方で間に合うとは思えない――
「お兄ちゃん、代わって」
「……ユウ?」
『そうそう、それで良いんだよ。これを見越して君を送ったんだからさ』
……ユウの頭脳なら時間内に解けるってか?いくらユウが天才だって言ってもスパコン以上の演算能力があるとは思えないんだが。
「……無駄な事させてんじゃねえよ。とっとと諦めちまいな」
『ヘラ……君ってさ。人間を嫌いだと言うくせに、人間が生み出したモノは好きだよね。物語とか発明品だとか。その暗号だって人間が生み出したモノだし。どうせその暗号も、人間の作品……映画とか漫画、ドラマとか見て知ったんでしょ』
「……便利なモノは使う。面白いモノは視る。それだけよ」
『だけど人間の事は知ろうとしない。そんなんだから最後までうまくいかないのさ。人間を舐めすぎ』
「……はっ!そいつがどんな人間か知らねぇがガキじゃねぇか!それも科学の進化が止まってる世界の!そんなガキに何が出来るって――」
「解けた」
「「「「は?」」」」
〈〈解除コードを確認。リセットコマンドを停止します〉〉
……揺れが止まった。それらしき文言が画像に出てる。
え?本当に止まったの?ものの数分で解けたと?
「え?マジで?ユウ、すごくない?ウチには何をどうすればサッパリなんだけど」
『流石の僕も驚きだね。解けてもギリギリだと思ってたのに。いやはや……お見事』
「あ、あっぱれじゃ、ユウ!」
………………マジで?




