第378話 崩れました
「ジュン!我が夫よ!無事か!」「ジュン君!私が色々教える前に居なくなるなんてダメよ!」
「ステラ、貴女もいい加減諦めなさい。ジーニも。五十代と八十代の年増は必要ないんだから。ドミニーも言ってやりなさい」
「……」
「知るか。私は雇い主を救けに来ただけだって言ってるわよ」
院長先生に司祭様……じゃなくて今は大司祭様か。それにステラさんにドミニーさん、リヴァまで来た。
「大ピンチらしいの、御同輩。魔王戦ではあまり活躍出来なんだからのう。汚名返上させてもらおうかい」
ファフニール様まで居るし。此処ってヘラが許可した者しか入れないんだと思ってたが。
実際、フレイヤ様が用意してた援軍は来れないみたいだし。
「というわけで、ユウ。説明頼む」
「あ、うん。でも、それは――」
『それは僕からするよ。ヘラも聞きたいだろうしね』
「テメェ……エロース!」
この声はエロース様か。つまり、皆を送りこんだのはエロース様なわけね。
『でも、もうちょっと待ってね~あと数人送るから……と、はい、完了』
「……ここが神界、なのか?」
「どう見てもただの草原だが……」
「で。どれを倒せばいいの」
五大騎士団の団長が揃ったか。それに……
「御無事ですか、御主人様!今すぐお助けします!」
カミラまで来た。これで全員、か?
あ。
「「「……」」」
ベルナデッタ殿下の護衛に付いてた天使達まで来た。凄く不本意そうな顔しながら。
『さて、と。ヘラ、疑問に答えてあげるよ。ついでにフレイヤも聞きなよー!』
「エロースか!お主、どうやって、どうわおう!一旦眷族共を止めんかヘラ!」
「……うるさいわよ。サッサと説明しなさいエロース。どうやってこの世界に干渉してるのよ」
『まぁ勿体ぶる話でもないし、簡単な話なんだけどね。ヘラ、君がこの世界を創った時、こっそりと僕専用の勝手口を創っておいただけ。それだけだよ』
……つまり?
「テメェ……あたしを監視してやがったのかぁ!」
『監視って程じゃないよ。君がちょっかいをかけ始めた時に君の動向に注意を払ってたってだけ。この勝手口だって念のために創っただけだし』
……そうだとしてもヘラの動向、つまり何をしようとしてるのかはある程度掴んでたって事だよな。
だったら未然に防げてただろ!なーぜ放置する!
「エロース!貴様そこまでしとってなーぜヘラを止めんのじゃ!未然に防げた事態じゃろ、現状!それに援軍を送るならヘラクレスとか武御雷とか送らんか!せめてお主の眷族じゃろ!この状況で人間を送ってどうす、どわおう!だから一旦眷族共をとめんかヘラ!」
「うるっせぇんだよぉ!ヘラクレスも武御雷もあたしをフッたヤロー共じゃねぇか!煽ってんじゃねぇぞ!」
……前世の世界の神話では確かヘラとヘラクレスって一応は親子関係だったような。うろ覚えだが……どうしてあんな内容にしたんだか。
てかヘラってモテないんだな……こんな性格じゃ無理ないと思うけど。
『いやいや、何言ってんのさフレイヤ。僕が他の神に援軍なんて頼めるわけないし。僕の眷族なんて送っても仕方ないじゃん。戦闘用の眷族を新たに創るの禁止されてるの、知ってるくせに』
「じゃからって下界の人間を送ってどーするのじゃ!せめて神器くらい持たせとるんじゃろうな!」
『んなわけないじゃん。なんせ僕はヘラの嫌がらせに対して直接的な反撃は赦されない、脛に疵のある身だしぃ。その子達もあくまでフレイヤの救援って名目で送っただけだしぃ。これ以上の手助けは試練じゃなくなっちゃうしぃ。これが僕が出来るギリギリだよ』
「……試練?」
試練って……誰の。もしかして俺か?
『話の内容と状況から察するに、そうやろなぁ。この場に居る人間でエロース様と面識あるんマスターだけやし』
いやいや、試練って何よ。俺、そんなん受けてる覚えないし試練を受けるって答えた覚えもないぞ。
勝手に試練を与えるって何よ。てか、試練ってまさかこの状況の事か?ヘラを倒す事が俺の試練だとでも?
『試練はヘラ様を何とかする事で間違いないやろな。それに試練って悪い事だけやないで。試練を乗り越えれば御褒美が貰えるはずや』
御褒美……どんな御褒美だ?
『さぁなぁ。それは知らんわ。でも、過去の事例やと不老不死になったとか神界に招かれたとかあるみたいやで』
……俺って転生した時から不老不死なんだよな。神界に招くってのも無さそう。まだ子作りしてないし……他にはないのか。
『他には神器を与えたり、容姿を変えたり。死んでもうた家族の魂と会話したりとかあったみたいやで』
死者との会話……ひょっとして日本にいる家族と会えたり――
「試練だぁ?……エロース、まさかテメェ!あたしを利用しやがったのかぁ!」
『別にいいでしょ。反撃は禁じられてるけど利用するのは禁じられてないしぃ』
「ざっけんなぁ!大体テメェはなぁ!あの時も今も――」
『ハァ?それを言ったらヘラだって――』
……なんか俺そっちのけで言い争いを始めたな。いや、エロース様が時間稼ぎしてくれてるのか?
今の内に……
「アイ、お前達はフレイヤ様を救けに行ってくれ。俺の事は後回しでいい」
「エロース様にもそう言われてる……でも」
「ジュンお兄ちゃんは私が護るよ!アイお姉ちゃんは安心してフレイヤ様を救けてあげてっ」
「ベル……わかった」
……ここは別世界だけど聖女の、時の大精霊の力は有効なのかね。……有効じゃなきゃエロース様もベルナデッタ殿下を送ったりしないか。
「でもユウは何故選ばれたんだ?言ったら悪いがユウは戦力には……」
なんならピオラの方が戦力になると思う。あの謎能力は未だ成長中だし。
「私もそう思うけどエロース様が言うには私の出番が必ずあるからって。私もお兄ちゃんの救けになりたかったし……」
「ユウの出番って何――」
「おーいぃぃぃ!いつまで喋っておるんじゃ!どうせその壁はお主らには破壊出来ん!わしがやってやるからサッサと救援に来るんじゃ!どっほぉう!いや、来て下さいお願いします!」
……あの人、本当に神様なのかね。頼りなさすぎる。
「でもまぁ、聞いての通りです、ソフィアさん。フレイヤ様の救援に行ってください。イエローレイダー団長も」
「ジュン君……」
「ノワール侯……ですが!……いえ、わかりました。これを破壊するにはフレイヤ様の御力に縋るしかなさそうですから」
「いまいち頼りになりそうにないがな。そうするしかあるまい」
「じゃ、そうしよう。レオナちゃんもいい加減諦めて」
「チッ……いいか、ノワール侯爵。妹を娶るまで死ぬ事は赦さんからな!」
えー……何故俺がマルグリット嬢を娶るなんて話に……って、お願いの権利を妹さんの為に使うのか。
ポラセク団長って妹思いだったのか……ちょっと意外。
「ほら、アム達も。俺は大丈夫だから」
「ジュン……でもよ――」
「チッ!チッチッチッ!やっぱテメェは赦さねぇ!エロース!テメェのお気に入りの世界を!テメェのお気に入りをブッ殺してメチャクチャにしてやらぁ!」
っとぉ!もう少し時間を稼いで欲しかったな!
「ジュン!」
「いいから行け!カミラもだ!」
「……御意。どうか御無事で――御主人様!アレを!」
アレ?
「サッサと死ねやこ、らぁ?……あああああ!?」
ヘラの、いやアイシスの左腕が……崩れた?




