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第37話 短い自由でした

 白薔薇騎士団に拉致…いや、保護された日から七日。


 歓迎会という名のセクハラ三昧の宴も乗り切り、宿舎での生活にも慣れて――――


「このままでは良くない!!」


『わぁ、ビックリしたぁ。なんやねんな、いきなり』


 いやいやいや!この環境に慣れ始めてる自分が怖い!


 慣れたらダメだろ!この男をダメにする環境に!


『あぁ…でも、この世界の男の生活って大体こんなんやで?』


 マジか!嘘だろ…こんな堕落していく生活が普通?


 何も言わずとも食事が用意され、仕事もなく、日がな一日ボッーとしてるだけで良くて美女・美少女にチヤホヤされる生活が、この世界の男の一般的な生活?


『せや。付け加えるなら、そこに好きな時に好きなだけ子作りできるってとこやな。てか、前にもざっくり説明したやん?』


 聞いてはいたけど、まさか此処まで…異世界転生してから毎日こんな生活してたら今頃どうなっていたか…


『冒険者?なにそれ美味しいの?…とか言ってそうやな。因みに神子は子作りが仕事やから、ある意味では働き者の男やな。王族の男はまだ働いてる方やな』


 そう言えば俺と同い年のジーク王子はどうなってるのか。


 王子でソコソコ美少年らしいから、さぞモテて……とっくに襲われてそうだな。


 って、そんな事よりも!この状況をなんとかしなくては!


『えー…そうは言うてもやなぁ…三ヶ月は待ってって話なんやし、待つしかないんちゃう?最初より大分短くなったんやし、我慢しようや』


 いやいやいや!三ヶ月もこんな生活してたら本気で堕落してしまう!


『しかしやな…せや、訓練したらええやん?身体動かして汗かけば堕落なんてせんやろ』


 却下だ!あんな状況で集中して訓練なんて出来るか!


 必ず誰か近寄って来るし!


『ああ…せやったなぁ…』


 この宿舎には狭いながらも室内訓練場がある。


 素振りをしたり、二人一組が模擬戦が出来る程度の広さ。


 当然、俺以外…白薔薇騎士団の女性が利用しているのだが…揺れるのだ。おっぱいが。


 素振りをすれば揺れる。走れば揺れる。腕立てすれば揺れる。


 それらがどうしても視界に入る。壁に向かって素振りしても声かけられて指導のフリしてベタベタと触って来るし。


 目を瞑って素振りしてたら危ないから止めなさいって普通に怒られた。


 そして、この宿舎…女子寮と言って差し支えないこの宿舎。


 何故か訓練場までいい匂いがするんよ…皆薄着だしさぁ。


 シャツを着てたらまだマシな方。下着のみで歩いてる人なんてザラ。


 パンツ一枚で食堂に来る人も居るし、酷い時には風呂場から自室まで全裸で歩く人も居る。


 訓練場なんて汗をかくからって最初から上半身裸の人も居る。


 そんな場所で集中して訓練出来る訳が無い。


 と、言うわけで。俺に残された手段は一つ。


「脱走しよう」


『えー…マスターの為に皆が骨折ってくれてんのに?とんだ裏切りやで、それ』


 裏切り言うな。なにも戻って来ないわけじゃない。


 ちょっと王都の外…森にでも行って一狩りするだけだ。夕食までには戻ると書き置きしておけば問題無いだろ。


 脱走出来るかどうかは問題じゃない。


 デウス・エクス・マキナの次元間移動…早い話が空間転移が可能になったからな。


 デウス・エクス・マキナに任意の場所の座標を登録。


 登録した座標を選択すれば眼の前に空間の穴のような扉が出現。


 扉を潜れば遠く離れた場所に転移出来ると言う訳。


 一度行った場所にしか行けないという事でもあるが、それは空間転移の御約束って事で。


『はあ…ほんまに行くん?後で怒られても知らんで?』


 怒られてもいい。今はこの女の園から逃げ出したい。


 そして野生を取り戻したい。


『野生て…元々マスターに野生味なんてないやん。あるのは宝の持ち腐れになってる色気とフェロモンくらいで』


 他にも色々あるっちゅうねん!


 ええから行くで!ほら!


『はいはい。まぁ、わいもちょい退屈してたしな。森でええんやな?』


 うむ!ではGO!


 書き置きをして空間の扉を抜けた先は王都近くにある森。


 以前、カタリナに連れて行かれたピクニックで外に出た時に王都近くの河辺まで行った場所を起点に、少しずつ転移座標を登録して周ったのだ。


 その一つがこの森。子供の足でも二時間も歩けば着くだろう距離にある王都に一番近い森だ。


 そこそこ大きな森だが強力な魔獣は居らず、しかし獲物となる動物や弱い魔獣は多く、キノコや木の実、野草等の森の恵みも多い。


 王都や、周辺の村々で暮らす人々にとって大事な狩り場、食料庫というわけだ。


『やっぱり何人か狩りに来とるで。フードでも被って顔が見えんようにしときや』


 着の身着のまま出て来たが、デウス・エクス・マキナが別次元に収納されてるように私物の殆どが収納されてる。


 孤児院を出る前に用意した初心者冒険者装備セットも入っている。


 皮の胸当てにフード付マント、レザーブーツ。武器はショートソード。


 この森ならこれで十分だ。


「さあ行こう!先ずは猪でも狩るか!」


『あんまり派手にやりなや。食べ切れん量の獲物狩ってもしゃあないし』


 余ったらまた王都の孤児院全部にコッソリと寄付すればいい。


 じゃ、行くべさ!索敵は頼むでぇ!


『はいはい。取り敢えず左前方に進み。魔獣やけどジャイアントホーンラビットがおるで』


 お。最初からこの森じゃソコソコの大物。


 角のある、大型犬くらいの大きさの兎だ。


 少し進むと、水溜りの水を啜ってるジャイアントホー……兎を発見する。


「シッ!」


「キュ!」


 気配を消して近付き、剣を一閃。一撃で仕留める事に成功する。


 魔獣や動物を殺す事に、やはり最初は抵抗があったが…コッソリと狩りをするようになって数年。


 もう随分と慣れた。因みに解体の仕方はメーティスに習った。


『…前々から思ってたんやけどな、マスター』


「なんだよ」


『弱い魔獣とはいえ、簡単に倒しとるやん?これって俺Tueeeeeなんちゃうの?』


「ばーか言っちゃいかん!」


 こんな弱い魔獣倒したくらいで俺Tueeeeeとは笑止千万!


 もっと強大でもっと人類の脅威足る存在を倒してこそ!


 俺Tueeeeeが出来るというもの!


『…そんなんポンポン出てこられたら人類にとっちゃ迷惑で片付かんやろな。まぁええ。次は…お、近くにキノコが群生しとるで』


 キノコか…孤児院にあげるか。


『…ん?あー…マスター。どうやら自由時間は終わりみたいやで』


「ナンデヤネン」


 まだ三十分くらいしか経ってへんやん。あまりに短いやろ。


 白薔薇騎士団にバレたとしても、此処に真っ直ぐ向かって来たとしても。またまだ時間に余裕があるはずやろ。


『いや、見つかったんは白薔薇騎士団にやのうてな。ほら、来たで。左見てみ』


「あ!マジでジュンだー!」


「やっぱり!声が聞こえた気がしたもん!」


「ジュン、確保」


「…アム、カウラ、ファウ…」


 短い自由だった…

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