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第368話 勇者でした

「さぁさぁ!この世界を滅ぼそうとしてる悪いヤツはどこかなぁ!」


 空中に浮かんだままキョロキョロと回りを見渡す美少女。身の丈程の大剣を背負い、髪と同じ金色の鎧に身を包んだ見た目十六、七歳くらいの女の子。


 その名前がアイシス……もしかしなくてもアレですか、ヒロイン候補ですか。


「まさかアイシスまで来るとはの……偶然と考えてよいものか」


 やっぱりフレイヤ様は知ってるな、三人のメインヒロイン候補を。で、その反応からしてあの子はそのアイシスで間違いない、と。


「フレイヤ様、あの者を御存知なのですか」


「敵……なのでしょうか」


「………まだわからん。じゃがアイシスを送り込んだのは間違い無くアヤツじゃ。このタイミングで送り込む意図はわからんが……敵、と見ていいじゃろな」


 Oh……最後のメインヒロイン候補は敵としての登場ですか。でも見る限り悪人には見えない。話せばわかってくれそうな気もする……あ、目が合った。降りて来た。


「そこの君!この世界を滅ぼそうとするわる~~~いヤツってどこに居るか……知ら……な、い?」


「……ん?」


 あ。この顔知ってるぅ。まためんどくさい事になりそうな予感。


「あ~……このまま此処で話すのも何ですし、場所を変えませんか。貴女はとても目立ちますし。ほら、凄く注目されてますよ」


「ジュル……ハッ!……んんっ!いやいや、そうも行かないんだよ。早く悪いヤツ……ジュンって言う女の敵を倒さないとダメなんだ」


「「「「「「んん?」」」」」」


 あ~……そうじゃないかって思ってはいたけども。狙いは時の大精霊じゃなくて俺か。


「そいつはね、悪い神が差し向けたとっても悪い――」


「待つんじゃ、勇者アイシスよ。わしは女神フレイヤ。話がしたい、先ずは場所を変えようではないか」


「へ?女神……フレイヤ?」


「そうじゃ。念の為言っておくがホンモノの――」


「此処にも居たか女の敵!」


「ちょぇぇぇ!いきなりナニをしよるんじゃ!」


 アイシスのこうげき!フレイヤはヒラリとかわした!


 アイシスのれんぞくこうげき!フレイヤはころんだ!アイシスのこうげきははずれた!


『なんで実況?なんか平坦やし。ちゅうか、止めんでええんかいな』


 いや、大剣を使わず拳で攻撃してるあたり本気じゃないだろ。それにアイシスにやられるようじゃヘラ様を止められるはずもないし。


 アイシスに真っ向から敵対するのもまだ早いし。ここは様子見で。


「待て待て待て!待たんか!わしが一体ナニをしたっちゅうんじゃ!アレか!わしがプリテーじゃからか!わしの魅力に嫉妬するのは仕方ないと思うが落ち着くんじゃ!お主もそこそこの美少女なのは認め――どっしえええ!」


「誰がそこそこの美少女だ!僕は世界最高の美少女だい!フン!」


 まぁ、どっちも美少女なのは認めてもいいけども。争点はそこじゃないと思うんだ。


「じゃあなーぜ攻撃するんじゃ!わしは女の敵になった覚えはないぞ!大体わしも女じゃろが!」


「だって僕にこの世界を救うように言った神様が言ってたもん。女神フレイヤは僕の世界では豊穣の女神だけど男狂いのビッチ女神だって。気に入った男が居たら結婚してようが婚約者がいようが恋人がいようが大人だろうが子供だろうが食い散らかすド淫乱女神だって。間違いなく女の敵じゃん。じゃあ殴るでしょ。殴って良いって言われたし。言われなくても殴るけど」


「よーし!そのド阿呆神はどこに居るか言えい!ミンチにして森に蒔いて肥料にしてくれるわ!」


 あー……まぁ……多分それ、嘘じゃないっスね。


「そろそろ良い?兎に角一旦場所変えて話しようよ。本当に世界を滅ぼそうとしてるヤツが居るならウチらだって協力するしさ。ウチら、これでも王族だし」


「王族ぅ?……ああ~言われて見れば、これお城だね。僕の世界のお城よりちっさいし、ボロッちいけど」


「……」


「へ、陛下……此処は抑えてください」


「今、敵対を決めてしまうのは避けるべきかと……」


 ……美人のキレ顔って迫力あるよね。それが女王様ともなるとより一層に。


 この娘、言葉の端々にこっちを見下してる感があるなぁ。使者とか交渉事には向いてなさそう。なんで単独で来ちゃうかね。


「いや、だから僕は急がなくちゃいけなくて――」


「ならば立ち去る前に城の修繕費を払ってもらいましょうか。貴女の拳で壊れたのは確かな事実ですので」


「……御話しさせてもらいまーす」


 流石宰相閣下。この世界に来たばかりのアイシスに修繕費なんて払えるわけないもんな。


 因みに壊したのはフレイヤ様を攻撃した際に外れた拳が城の壁やら家具やらを壊したのだ……直撃はしてないが拳圧で。


 やはりアイシスも犬神やアンラ・マンユ達のように並の強さじゃない。


「へぇ~これがこの世界のお城かぁ。世界が違ってもあんまり違いは無いんだね。あ、でも紅茶は美味しいかも。だけどお菓子はイマイチ」


「……」


「ママ、我慢我慢」


「母上、まだですよ、まだ」


 再び場所を変えてアイシスの話を聞く事に。ただしベルナデッタ殿下と三人の天使は参加してない。


「……そろそろ本題に入ろう。アイシスと言ったな。ジュンという女の敵が世界を滅ぼそうとしてるというのはどう言う事だ」


「どういうもこういうも。そのままの意味だよ。ジュンて男が世界を滅ぼそうとしてるんだって。だからジュンを倒して世界を救ってくれって頼まれたんだよ」


「「「「「「……」」」」」」


 うん、皆俺の名前を出さないから空気は読めてるけども。どうせなら視線も外そうか。


「……具体的にどう滅ぼそうとしてるのだ。世界を相手に全面戦争を起こすとでも言うのか」


「それじゃ女の敵じゃなくて世界の敵じゃん。ジュンてヤツは世界中の女を抱いて孕ませる事が目的なんだって。で、ジュンの子供は男しか産まれないんだってさ」


 ……若干の間違いはあるものの。嘘だと断定出来ない内容だな。ただ、それは手段であって目的は真逆なんだが。


「ほんと、最低な男だよね!世界中の女を孕ませようなんてさ!責任を取る気も無いって話だし!」


「……いや、お前はその話を最初っから信じたのか?一切疑いもせず」


「うん?だって神様が言ってた事だし。かみさま、うそつかない」


 何故最後はカタコトなのか。


「で、神様は嘘つかないそうですが。そこんとこどうですか、フレイヤ様」


「神だって嘘は言うぞ。人間なんぞ道具、玩具。利用して壊して騙して何が悪いと考える神も少なくないのう。わしはお主を送り込んだ神が誰か知っておるが、アヤツは正にそういう類の神じゃぞ」


「え。なにそれ。そんなの邪神じゃん」


 邪神だねぇ。少なくともこの世界じゃ邪神で間違いないねぇ。


「そうじゃろ。じゃから此処は諦めて元の世界に帰るがよいぞ。わしが送ってやるから――」


「でも、それはきっと人違いだよ。いや神違い?だってその神様は魔王を倒す手伝いをしてくれたし」


「……魔王じゃと」


 魔王と言うと……もしかしなくても暴食、怠惰、強欲、憤怒、色欲、嫉妬に続く七つの大罪の魔王の内、残った傲慢の魔王か。


 その傲慢の魔王を倒したという事はアイシスは魔神に……いや、それは魔王が魔王を喰った場合だったか。


 勇者が魔王を倒したなら……どうなるんだ?


「お主、あの世界から来たのか」


「僕の世界を知ってるの?」


「知っておる。大罪の魔王七人が存在する世界じゃろう」


「そうそう。直感でわかってたけど神様ってのはほんとみたいだね」


「……あの阿呆が」


 フレイヤ様の反応から察するに。アイシスが魔王を倒した勇者というのは頭が痛い事実らしい。


 やっぱり魔王が魔王を喰らうと魔神になるように勇者が魔王を倒すと何かあるんだろうか。


『それもあるかもやけど。魔王がこっちの世界に来た悪影響の話があったやろ。別世界の勇者が来ても影響はあるやろ』


 ああ~……なるほど。こっちの世界でもあっちの世界でも問題が起きてるわけね。


 つまりは早急にアイシスを送り返すなりなんなりしないとダメと。


「……さっきから気になっておったんじゃが。その背中の大剣、もしや神から受け取ったモノか」


「お。流石神様、封印してあるのにわかるんだ」


 封印?使えないって事か。そんなもんもらって何にも――いや、持ち主を限定する類の封印か?


 鞘に収まったままの大剣を掲げるアイシスを見るフレイヤ様の表情がまた堅くなった。


 どうやら相当にヤバい代物らしい。


「わし……なんとな~く、その剣に見覚えがあるんじゃがのう。その剣の名前は聞いておるか」


「名前?神剣カラドボルグって……どしたの?」


 おお。地球でも有名な伝説の剣が出て来たな……おや?


「あんの……ド阿呆がぁぁぁぁ!!」

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