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第367話 来ました

「ズズッ……ふぅ。ようやく落ち着いたの」


「はあ……そっスか」


 ベルナデッタ殿下の部屋に戻ったら丁度お昼時。


 そのまま俺達も昼食を頂く事になったのだが。


「ゲッフ……美味しかったです」「ケプッ……満足しました」「ゲプッ……晩御飯が楽しみです」


「見てるだけでお腹一杯になりそうな量を食べましたね……」


「本当にな……料理番を労っておいてくれ」


 ほんとよく喰ったねぇ、あんた達。三人で十人前くらい喰ってないかい。


 てか神界の方が美味い物食べれそうだけどな。この世界の料理ってあんまし発展してないしさ。マヨネーズが未だ大人気なくらいだし。


「神界でも勿論食事は出来るが能力でパパッと作るだけじゃからの。人間の手作りと違って個々の差も無い。不味いわけじゃないが何処か味気ない物に感じたりもするの」


 うん?能力でパパッと作るとは?魔法で作るって事か?


『そんな感じやな。神界では眷族に専用の能力を与えて専用の仕事を任せるんや。料理なら料理専用の能力を与えた眷族を作るわけや。で、材料だけ用意すれば能力を使って一瞬で出来上がる、と。魔法や錬金術で合成したら料理が出来上がるって言えばイメージしやすいか?』


 ああ、そんな感じなのね、神界の料理って。それはまぁ……確かに少し味気ないかもな。


「それにこやつらは生まれたばかりでな。これが初めての食事なんじゃ。夢中になるのも……まぁ、わからんではない」


「はい?」


「生まれたばかりって……どう見ても僕と同じか少し上くらいの年齢に見えるのだけど」


 確かに。俺とジーク殿下より少し上、二十歳前後に見える。


 生まれたばかりなのもおかしいし、これが初めての食事というのもおかしい。


「こやつらはわしが作ったわしの眷族。人間のように女の腹から生まれ赤子から成長して今があるわけではない。産まれた時からこの姿で知識も備わっておる」


 はあ……へぇ……つまりは目的があって、その為に作られた存在だと。それはまた何と言うか……ちょっと物悲しいな。


「……コホン。そろそろよろしいですか、フレイヤ様」


「ん?女王か……まだ何か聞きたい事でも?必要な事は話した筈じゃが」


「今後の事です。今後世界を滅ぼしにやって来るであろう神に対してどのように動くおつもりですか」


「使徒と魔王の戦いも相当な激しさでした。神同士の戦いとなれば想像を絶するものになるでしょう。出来れば王都で、いえ人が住む場所で戦うのは避けて頂きたいのですが……」


 使徒って俺の事ですか、宰相閣下。俺は使徒じゃないって言って……あ、はい、黙ってます。


 宰相の眼、怖ぇー…


「安心せい。今もアヤツの居場所は探らせておる。見つかり次第、わしが捕まえに行く。護りはこ奴らに任せておけばよい」


「つまり……我々は何もしなくて良い、と?」


「うむ。どうせお主らが何かしたところで全て無意味……とまでは言わんが。戦うくらいなら逃げ隠れした方がマシじゃぞ」


「……私達は王国を護る五大騎士団の団長なのに」


「相手が神様じゃ仕方ないわ、イエローレイダー団長。勿論、神様が相手でもジュン君もベルナデッタ殿下も御守りして見せるけれど」


 ヘラ様は魔神よりも強いんだろうからなぁ。俺だって相手にならないかも。切札を使って全力で戦ってようやく時間稼ぎが出来るかってとこか?


『時間稼ぎだけならやりようはあるわ。全力出さんでもな。ただ勝つとなるとなぁ。厳しいなぁ』


 ……ん?その言い方だと勝てる見込みがあるように聞こえるが。


『上級神と戦った事は無いから断言は出来へんけど。デウス・エクス・マキナには神様のデータが入っとるんやで。当然ヘラ様のデータも。そこから導き出された解答は勝ち目はある、や』


 ……ほうほう。それはつまり……アレじゃね?俺がヘラ様を倒してしまってもいんじゃね?神様相手に俺Tueeeeしちゃってもいんじゃね?


『俺Tueeeeは出来へんやろ。勝てたとしてもギリッギリの内容になるやろうからな。勝率はあるけど決して高くはないんやで。今回は大人しくしとくんが吉や』


 ……そうか。それに神様ならデウス・エクス・マキナを破壊出来るんだよな。つまり、俺を殺せるし勝率も高くないとなれば……確かにフレイヤ様に何とかしてもらうのがいいか。


「それじゃ行くかの。案内を頼むぞ、ジュンよ」


「……は?何処に案内しろと?」


「お主の屋敷じゃ。このまま此処に居ても良いが、お主の屋敷の方が都合が良いじゃろ」


 ナンデヤネン。


 いや、そりゃフレイヤ様がこの世界に居る間は何処かに寝泊まりするんだろうから滞在場所を用意する必要があるのはわかるけども。


 それならベルナデッタ殿下が住む王城に居るのが合理的でしょうが。



「わしが降臨した事は出来るだけ知られん方が良いじゃろ。わしに会いたいとか言う人間が押し掛ける事になるからの。ならば此処より人が少ない場所、尚且つ警備が厳重な場所が望ましいのじゃが?」


 ああ……まぁ、うん。想像は出来る。城の人間にはもう広まってるみたいだけど、箝口令を出せば――出しても広まりそうだな。


 それを踏まえても俺の屋敷に移った方がマシ、か?


「……ノワール侯爵、フレイヤ様の仰る通りに。城には近い内にエロース教教皇らが来る事になっているからな」


「教皇一行だけでも相当な負担になりますからな……そこに神様も加わるとなれば城の者達は心労で倒れそうです」


 それはうちの使用人達も同じなんですが、それは……あ、黙って受け入れろって眼をしてらっしゃる。


 今日は御二方の眼は凄く饒舌ですね……


「……私もお兄ちゃんの家に行くの?」


「そうよ。ウチも一緒だから安心していいよ、ベル」


「ならば僕も――」


「ジーク殿下は遠慮してくださーい。大勢の人の心を護る為に」


 主に俺の心の為に。


『え~……ええやん、そろそろジークの想いに応えたったら。二千人近い嫁を抱くんやから、そこに一人くらい男が混じってたって誤差やん』


 だから何にもええことあらへんし誤差やのうて180度違う方向性――ん?!


『マスター!』


 わかってる!


「全員、警戒態勢!何か来るぞ!」


「な、何!?突然何を……まさかベルを狙う神が来たのか!」


「これは……全員、外に出るのじゃ!」


 ビンビンに感じるヤッベー気配……上か!


「アレは……何だ?」


「空が割れて……?」


 いや、アレは空では無く空間の裂け目……デウス・エクス・マキナの空間収納に似てる。


 つまり、アレは別次元の入口か。


「気をつけい。あすこから何か出て来るぞ」


「フレイヤ様、何かとは」


「さぁの。確かなのは別世界から来る、それだけじゃ」


 やはり別世界からの来訪者。なら、ヘラ様ではない、か。


 じゃあ一体誰が来るってんだ?まさかここに来てヘラ様とは別枠の新たな敵ってんじゃないだろうな。


「出て来ましたよ!」


「アレは……まさか……」


 空間の裂け目から出て来たのは……金髪の美少女。


「やぁやぁ!僕は勇者アイシス!この世界を救いに来てあげたよ!」


 ………………………なんて?

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