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第366話 どこまでも不安でした

「これで話は終わりじゃ。それでは戻るかの」


 話は終わり、か。かなりの危険物を渡されちゃったな……戻る前にいつものように収納……ああ、いや。


「待ってください。まだ聞きたい事が」


「うん?何じゃ」


「さっきは時の大精霊を狙う神様の名前を明かしませんでしたけど。何か理由があるんですか」


 魔王を送った神様と同一であるならヘラ様のはず。既に知られてるのに伏せる理由がわからん。


「あ~……それは……お主らだけに話すが他の者には黙っておけよ。今回、エロースに恨みを持って暴走しとる神はヘラ。何があって恨んでおるのかは言えんのじゃが……あの世界ではヘラは邪神での」


「邪神?」


「うむ。世界によって神話の内容とは違っておるのはもうお主らも知っておるじゃろ。大体似たり寄ったりの立ち位置になっとるのが殆どじゃが。全く違う神として語られとる場合もある。例えばわしなんかは豊穣の神、農耕の神、森の神などなど……じゃがエロースと同じ性愛の神と呼ばれる世界もあるのじゃ。全く……わしのようなプリテーな清楚系美少女神を性愛の神などと。全くそうは見えんじゃろ?」


「「ソウデスネ」」


 あーたはデウス・エクス・マキナのデータベースにある情報によれば性に開放的な神様で、ある意味エロース様より酷いらしいですけどね。


 そのデータを入れたのって恐らくはデウス・エクス・マキナの製作者ヘパイストス様でしょ。少なくともヘパイストス様はフレイヤ様を性愛の神と呼んで差し支えないと思ってそうですよ。


「で。ヘラが邪神だから何?何が問題なのよ」


「わからんか。神話の中の話とは言えヘラは悪しき神、邪神。その邪神が世界を滅ぼしに来たなんて言うてみぃ。パニックになるのは眼に見えとる。邪神ヘラは世界に滅びをもたらす神として描かれとるしの」


 ああ……神話の邪神が本当に来るとなれば、まぁ……パニックになるわな。でも、その神話って有名なのかね。


 エロース教に伝わる神話の話くらいしか聞いた事ないんだけど。


「その神話では邪神ヘラによって世界は滅びる事になるんですか?」


「いいや。エロースに選ばれたある国の王子が邪神ヘラを倒し、美少年の願いにより世界中の人々は優しさを取り戻し、世界は救われる、そんな内容じゃったか。興味があるならエロース教の者に聞けばいいぞ」


 それって以前教皇が言ってた神話の事か!俺と同じ名前の王子が主人公で別世界の史実を描いた神話とかって話の。


「それってもしかして別世界の史実を元にしたって話のやつですか。俺と同じ名前の王子が主人公の」


「なんじゃ、知っとるんじゃないか。それじゃ、それ」


「じゃあ、その神話に出て来る悪しき神がヘラ様なら、神話の元になった世界を滅ぼそうとしたのもヘラ様だって事ですよね」


「あ。あ~いや~……それは、のう……ええと……」


 なにをそんな言い辛そうにしてるのか。邪神だって事まで話しておいて。


「………実は、その、な。その神話の世界を滅ぼしかけたのは本当はエロースでな」


「「はぁ?」」


「自分を主神と崇める世界に伝える神話じゃ。邪神として登場するわけにいかんかったエロースはヘラを代役にしたのじゃ……恐らくはそれもヘラの怒りポイントの一つ……じゃと、思う」


 ああ~……そりゃまぁ、怒るわな。それで世界を滅ぼすとなるのは違うと思うが。


「………ねぇ、もしかしてさ。それをヘラに教えたのがフレイヤ様?ウチを転生させる時、フレイヤ様が口を滑らせたとか何とか言ってたよね」


「………………ごめんなさい」


「あんたも元凶の一人だったんかい!」


 ダメだ、この女神!やっぱりポンコツ駄女神で確定!


「じゃ、じゃからわし自らが降臨して世界を護ろうというのじゃ!責任はキッチリとってやるわい!」


「凄く不安で仕方ないんですけど」


「ウチも。まぁ最悪の場合はエロース様も出て来るんでしょ。一人……じゃなくて一柱の神様に対して二柱の神様で対処すれば何とかなるでしょ」


「いや、エロースは……恐らくはギリギリまで出て来んな。例えわしが敗れてもジュン、お主になんとかするだろうと考えておる」


 ……なんでやねん。


 いや、そりゃ俺だって死にたくないし。世界が滅べば流石の特別製ボディでもなんともならんだろうしさ。


 皆が居るこの世界をむざむざと滅ぼさせるつもりもないけども。


 モノホンの神様を負かしたモノホンの神様を相手に何か出来るとも思えないんだけども。


「わしもそうじゃが神がそのまま下界に降りるのは禁忌とされておる。詳しい説明は省くが世界に与える影響が大きすぎるのでな。じゃから必ず依代を用意して下界に降りる。依代に宿っておる間は神の力も制限されるのじゃ。そうする事で影響を小さくする、というわけじゃ」


 つまり、下界……俺達の世界に居る間は神様は弱体化してる、と。だから俺でもなんとか出来るはず、と。


 しかし、だ。


「フレイヤ様が何とかしてくれるんですよね。ヘラ様に勝てるんですよね」


「勿論じゃ。わしもヘラも上級神。神格は同じじゃがヘラは戦闘向きの神ではない。わしとて武神ではないがヘラよりは戦闘向きじゃ。それなりの準備もしておる。心配するでない。ドーンとまかせい!大船どころか方舟に乗ったつもりでな!ワハハハハ!」


「なんでかなぁ。ウチは不安で胸いっぱいだよ」


「なんでかなぁ。俺も同じだよ」


 いや理由は明白なんだけど。この駄女神臭がな。不安を増加させるんだろ。


 その方舟の船名、タイタニック号とか言わないよな。


「お主らは相変わらず……いや、ええ。兎に角、万一わしが失敗しても別の神が待機しとる。バックアップは万全じゃ。万事抜かりないわい」


「別の神様も?なら安心……かな?」


「別の神様ねぇ……でも不安だなぁ」


 何せ神様にあまり良いイメージがな……どの神様も俺達の都合を考えてくれないんだもの。


「……ま、まぁお主らは神の仕出かしの被害者じゃからな。多少の無礼は大目に見てやるわい。それじゃ今度こそ戻るぞ」


 ……さっきからなんだろ?俺達を別の誰かとごっちゃにしてるかのような?


「待たせたな。戻った……ぞ?」


 また一瞬で視界が切り替わりベルナデッタ殿下の部屋に戻った、のだが。


「モシャモシャ」「ガフガフ」「バクバク」


 なんか食事会が始まっとる。


 いや、食べてるのはベルナデッタ殿下の護衛の天使三人だけだが。


「何やっとんじゃお前ら……」


「あ、フレイヤ様。モグモグ」「御帰り、パクパク、なさいませ」「下界の、モシャモシャ、御飯って美味しいんですね」


 護衛そっちのけで食事で夢中でいらっしゃる。ベルナデッタ殿下を囲んでないけど……いいの?


「わしに恥をかかせるな……サッサと護衛に戻らんか」


「えー……食事抜きでモシャモシャ護衛なんてモシャモシャ」「パクパク、コンプライアンス課に、パクパク、訴えちゃいますよ」「最近は、モグモグ、神界も、モグモグ、厳しい、モグモグ、ですからね」


「せめて喰いながら喋るのを止めるんじゃ!」


 ……やっぱり不安だなぁ。

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