第363話 新たな事実でした
「……騒々しいな」
「何か大事が起きたのは間違い無いみたいですね……あたたた!」
使者からの伝言では至急登城せよ、との命令だった。
使者の様子から非常事態と判断。アニエスさん、ソフィアさん、イエローレイダー団長と一緒に来たわけだが。
いつもなら出迎えがあるか誰か直ぐに捕まえて案内を頼むのだが。
騎士も文官も使用人も。皆、右往左往に走り回っていて誰も捕まえられそうにない。
混乱の極み。そんな状態にあるようだ。
で……メーティス。この気配って……
『あ、マスターも感じてる?多分正解やで』
やっぱりか。敵……じゃないよな。
『それも多分やな。誰が来たのかまではわからんし。でも、まさかヘラ様が来たって事は無いやろ』
じゃあ味方……って、単純に考えて良いのかね。
ん~~このままこの気配の主の元に向かって良いのかな……お?
「クオンさん」
「皆様、こちらへ。陛下がお待ちです」
クオンさんが迎えに来たならアイが呼んだのかと思ったが。
それに向かっている方向は謁見の間でも陛下の私室でもない。
「クオンさん、陛下は何処でお待ちに?」
「ベルナデッタ殿下の御部屋です。姫様とジーク殿下、宰相閣下も御一緒に」
この気配の主はベルナデッタ殿下の部屋……つまりはベルナデッタ殿下に用があって来たのか。
転生者の俺でもアイでも無く。
何か思い当たるか、メーティス。
『ん~~……まぁ一つしか無いわなぁ』
ベルナデッタ殿下は聖女、その力の源。時の大精霊に絡んでる、か。
でも仮にそうだとして、だ。神様が時の大精霊に会いに来る理由ってなんだ。
しかも、こんな突然、前触れも無く。
『さぁなぁ……想像もつかんわ。聞いた方が早いやろな』
そうか……しかし、近付いてより正確に感じとれたが。複数居ねえ?
『……居るなぁ。大きな気配に隠れてわからんかったけど。合計で四人やな』
四人……いや神様なら四柱と言うべきか。いきなり四柱も神様が来るなんて何があったんだ。
「おい、レーンベルク団長。もっと速く歩けないのか」
「無理です……これでも急いで……あたたた!」
「……私が背負った方が速そうですね」
ソフィアさんは魔神戦でギフトを使った反動の筋肉痛からまだ回復出来てない。
ドライデンからの帰り道も寝たきりで、自力で歩けるようになったのが昨日。
まだ暫くは戦闘は出来そうにない。
「……遠慮するわ。ただでさえ無様な姿を大勢に見られてたんだもの。これ以上醜態を晒すわけには……」
「残酷な事を言うが、手遅れだろ」
「手遅れですね。まるで百歳のおばあさんのような動きですし」
もしくは油が切れたブリキのおもちゃ。ギギギ、という擬音が似合うのが今のソフィアさんだ。
幸い、今は誰も見てないが。
「陛下をお待たせしているんだ。レーンベルク団長、諦めて背負ってもらえ」
「ぬぐぐ……でも、ジュン君にこれ以上無様な姿は……カッコいいお姉さんという立場が……」
そんなもん大昔に消え去っとりますがな。
ヤレヤレ……仕方ない。
「諦めてください、ソフィアさん。問答無用で行きますよ」
「ジュン君……そんな、って、ええ?!」
有無を言わせずにお姫様抱っこだ。
部屋の前で下ろせば問題なかろうて。
「こ、これは……情けないような嬉しいような。不思議な感覚……ウフフフフフ」
「……五大騎士団の団長としては情けない姿で間違い無いが……何故か凄く羨ましいぞ!」
「ノ、ノワール侯……その、後で私も……」
後で私達にも同じ事をしろと騒ぐ二人を捌きつつ。ベルナデッタ殿下の部屋に近付くにつれ人集りが増えて行く。
お姫様抱っこされてるソフィアさんに注目が行く……かと思ったが、それほどでもなかった。
『普段ならマスターが注目の的やのにな。城の人間は知っとるんやろな。誰が来たか』
ああ……そりゃ神様が城に御降臨なさったと知ればな。
パニックになって当然か。
「さ、着きましたよ。下ろしますね」
「ウフフフフフ……あ、もう?もうちょっと……いえ、王都一周しない?」
なんか阿呆な事宣ってるが無視。
クオンさんがノック、入室の許可を貰って入る。
中には聞いてた通りに陛下、宰相、ジーク殿下。アイにベルナデッタ殿下。
そして……天使?背中に三対の純白の翼を持った天使が三人。
そして十五歳かそこらの少女が一人。
どうやら俺が感じてた気配の内三つは天使の気配だったらしい。
つまり、この少女が……神様か。
「来たか。フレイヤ様、これで全員揃いました」
「うむ。楽にしてよいぞ。お主らも座るとよい」
……フレイヤ?フレイヤ様と陛下は言ったか。
女神フレイヤってアイを転生させた神様だよな。
……それにしても、なんだこの配置。
ベッドに腰掛けているベルナデッタ殿下を囲むように天使が居る。
その前、ベルナデッタ殿下に背中を見せるように女神フレイヤが椅子に座って茶を飲み。
その女神フレイヤの前に、陛下らが並んで椅子に座っている。
女神フレイヤと陛下らは兎も角、ベルナデッタ殿下は……アレじゃまるで天使に護られてる、或いは囚われているかのように見えるが。
「ジュン、こっちこっち。ウチの隣に座って。ローエングリーン伯爵達はそっちね」
「は、はぁ……」
「アイ、我が友は僕の隣に……」
ジーク殿下の要望は流すとして。
アイが端っこで俺を隣に座らせたいのは小声で話がしたいからだろう。
「(で?どういう状況?)」
「(ウチもまだ詳しい話は聞いてないの。でも一大事なのは確かっぽい)」
それはわかるけどな。これで遊びに来ただけとかほざいた日にゃ。
神様だろうとツッコミ入れずには居られないよ、マジで。
「揃ったようじゃし、始めるぞ。わしが何故、下界に降りたか。何故、此処に居るのか。それはその娘を護る為じゃ」
「フレイヤ様、護るとは?ベルナデッタは何者かに狙われているのですか」
「何故ベルを……」
護る、ね。ベルナデッタ殿下を狙う理由はわからないが誰が狙っているのか。その心当たりは一つ。
女神ヘラ様、だろうなぁ。まだ諦めてなかったか。
「何故、その娘……ベルナデッタを狙うのか、狙われているのか。それはじゃな……ベルナデッタは世界の要なんじゃ。ベルナデッタに何かアレば世界が滅ぶ」
……なんて?




