第358話 出番でした
「はぁぁぁ!!」
『ゴォォ!』
英雄VS魔神……ドライデンでのラストバトル。
今のところソフィアさんの想像以上の強さで魔神との戦いは互角。
贔屓目に見て、ややソフィアさんが押してると言った所か。
『やるじゃん、あいつ。ただの人間が魔神と互角なんてさ』
『儂とお嬢ちゃん、タッグで挑んでやられた相手に互角とはのう。じゃが……あの騎士、普段の様子も見とるが、あれほど強いとは思えなんだがのう』
正直、俺も同じ。ソフィアさんのあの強さはなんなんだ。
はっきり言って異常だ。
『ゴォォ!』
「それはもう見たわ!」
至近距離からの鳥型ミサイルを難なく剣で迎撃するソフィアさん。
ゲームやアニメでよくある見えない斬撃、真空斬り、そんな技を連続で繰り出しているのか。
『ゴォォ!イイカゲンニ、シネェ!』
「死んだらジュン君と結婚出来ないでしょうが!もう行き遅れって言われる歳なのよ、私は!」
魔神の口から……音波攻撃か?ブルーリンク団長も使っていた技と似た攻撃。
それを高速で移動し魔神の足下に移動。魔神の身体を盾にする形で躱した。
移動ついでに足首を斬る抜け目の無さ。
『ゴォ!オノレェェェ!』
「ようやく頭を下げたわね!いつまでも上から見下ろして!頭が高いのよ!」
脚を集中攻撃する事で再び魔神をぐらつかせる事に成功。
段々と理性を取り戻したのか、それとも生存本能故か。咄嗟に身体を傾けスクリーンに突っ込む事は避ける魔神。
だがバランスを崩し、横這いに倒れた。
その絶好のチャンスを見逃すソフィアさんでは無く。
「はあぁぁぁ!はぁっ!」
『ゴォ!グッ、ガァァァ!』
攻撃を受けないよう、キッチリ背後に回り。魔神のうなじ辺りを斬って斬りまくるソフィアさん。
防御結界は最初から張ってあったがソフィアさんの斬撃は防げず。
それでも身体が堅いからか大きさが違い過ぎるからか。
何とか首ちょんぱにはならずに繋がって……あ、いや、飛んだわ。
「うわ、グロ。凄い血ね。噴水みたい」
『斬首出来たか。普通ならこれで決着じゃが……』
『あ。もう繋がったし』
首が飛んだ瞬間、これでどうだとばかりに少し距離を取って様子を見ていたソフィアさん。
血飛沫を避けたかったのもあるのだろうが、首が即繋がったのを見て舌打ち。
ならばもう一度と近づこうとするが。
『ゴォォ!ファイアピラー!!』
「魔法?!くあっ!」
当然、魔神も黙ってやられるわけもなし。自分の周囲に火魔法で炎の柱を出す。
余りに至近距離に出した為に自分の身体も焼けているがソフィアさんを引き離し、立ち上がる事には成功した。
此処で仕切り直しとばかりに睨み合う英雄と魔神。
戦闘経験も豊富で理性がある分、頭も回るソフィアさんが魔神を圧倒し始めた……ように見えるが。
どう見る、相棒。
『ん〜……このままやとソフィアがヤバいんちゃうか』
やっぱりか。
ソフィアさんの、あの力……どういう物かわからないが、ノーリスクってわけじゃないだろう。
あんな強力な力、代償も無しに使えるとは——
『院長先生の例もあるし、ローリスクで使えるんかもしれんから、それは考慮してへん。そこら辺はソフィア自身がようわかっとるやろし。問題は魔神や。魔神のエネルギー量があんまし減ってへんねん』
……アレだけ再生能力を使ってるのにか?アンラ・マンユ以上の再生能力だぞ、アレ。
『せや。アンラ・マンユ以上の再生能力やのにアンラ・マンユ以上に燃費の良い能力なんかな、と。わいも最初は思ったんやけども、な。アレ、見てみ。九時の方向に転がってるもん』
……死体?干からびた人間の死体……誰だ?
『誰なんかはわからんし、何処の誰なんかは問題やない。まぁ、ドライデンの人間、エスカロンの部下辺りやろうけど。次に周辺の植物を見てや』
周辺の植物って……魔神の攻撃で凸凹になった地面しか無くね?
『よう見てや。確かに荒れとるけど植物が全くないなったわけちゃうやん。ほら、折れた木とかあるやん』
……あの枯れ木か?それに枯れた雑草とかもあるが。
『それやそれ。あの木とか雑草な。最初は枯れて無かったんや。少なくともわいらが此処に来た時には』
……つまり?
『つまり、アレは強欲の魔王の能力なんちゃうかって話。欲しい物を奪う能力、奪う物を選ぶ能力やってバラしてたやん、エスカロンが』
……生命エネルギーを奪ったとか、そういう?エナジードレインか。
『そういうこっちゃ。奪ったエネルギーで再生してるんか、再生に必要なエネルギーを補ってるんかはわからへん。どっちゃにしろ周囲に奪えるもんが有る限り、ソフィアはジリ貧や』
しかも、追い詰めれば追い詰める程に。周辺の自然環境は破壊されて行く、と。
いや、それならそれで、何故俺達から奪わない?ソフィアさんからも奪えば簡単に決着が付くじゃないか。
『なんか条件があるんやろ。植物からは奪えるけどソフィアからは奪えへんような条件が。人間から奪えへんわけではないんわ、確かみたいやし』
あの死体がヒントか……出来れば近くに行って調べたいが。
『そんな暇は無いわな。睨み合いも終わって戦闘再開……あれぇ?』
「なんか、レーンベルク団長叫んでない?こっちに戻って来るし」
『なんぞあったんかの?』
『どうしたってのよ、一体』
アイ達が言うように、ソフィアさんが戻って来る。
必死の形相で。
「ジュン君、開けてー!結界に入れてー!」
……逃げて来たの?逃げ足の速さからして、まだまだ戦えそうなのに。無傷だし。
『ゴォォ!ニガスモノカ!』
「しょえぇぇ!」
……演技でもなさそう。
魔神の攻撃を躱し、ヘッドスライディングでスクリーンに突っ込んで来た。
このままじゃソフィアさんがけし飛んでしまうのでスクリーンを一部開けて流れるようにヘッドイン。
間近で見てもソフィアさんは無傷に見えるが。
「何があったんです?」
「じ、時間切れ……あ、あああ、あたたた!!」
「何よ、急に。一子相伝の暗殺拳でも使うの?」
「な、なんですか、それ……そうじゃなくて、筋肉痛ですぅ……あたたたた!」
「「筋肉痛?」」
「わ、私のギフトは……」
ソフィアさんのギフト。
それは敵対した相手が強い程。敵対した相手の数が多い程。相手の強さと数に合わせて強くなる。
敵対者の強さが百なら、自分の強さに百足される。
つまり、相手が誰であろうとギフトを使えば相手より強くなれる。チート級のギフトだ。
ただし使用限度時間が有り。相手が強く数が多い程使用限度時間は短くなる。
加えて反動も大きくなる、と。
「で。その反動が筋肉痛ってわけ?」
「そ、そうでずぅ……あたたた!」
更に更に。その筋肉痛は魔法薬でも回復魔法でも治せないらしく。時間経過に任せるしか無いとか。
「つまり……」
『ソフィアはリタイアってわけね』
『なんともマヌケなリタイアじゃのう。自滅じゃろ?ようするに』
「うぅ……素早く仕留めるはずだったんです……あああ!あたたた!」
そして、それは……
『ゴォォ!ジュンサマ!ジュンサマ!』
俺の出番ってわけっスね。




