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第347話 喰らい合うのでした

〜〜エスカロン〜〜



『いい加減に……くたばれぃ!』


『消えちゃえぇぇぇ!』


 ぐっ!ファフニールだけでなくファフニールとほぼ同等のドラゴンの二匹同時に相手は本当に想定外です!


 ジュン様が一緒なら、カルボウが破壊されるのは構わない。計画通りですから。


 しかし!


「貴方達にカルボウ諸共に消されるのは困りますねぇ!カルボウ!」


〈ゴォォン〉


『ぬっ!また妙なもんが出よったわ!』


『何さ、これ。鳥?』


 鴉ですねぇ。無論、タダの鴉ではありません!


『がぁ?!な、なんじゃ!?』


『ぎゃん!?ば、爆発する鳥?!』


 標的に体当たりし、接触と同時に爆発する鴉型の武器です!


「弓矢と違って何処までも追尾します!ロケットパンチよりは威力は下がりますがね!」


 威力は下がりますが追尾能力は上ですし何より数が違います!


「バードミサイルと言う武器らしいですねぇ!さぁ!穴だらけになってしまいなさい!」


『な、舐めるでないわ!ぐゎ!』


『ちっちゃくて避けにくい!あっ、ぎゃん!』


 フフフ……この武器は有効なようですね。鱗が硬くダメージはそれほどでもなさそうですが……む!?


『舐めるなと言ったぞ!小童が!』


「これは……魔法ですか!」


 人間が使う魔法をドラゴンが使うとは!それも最上位の雷魔法サンダーストーム!


 広範囲の雷に打たれバードミサイルは全て消し飛んでしまいましたか……


『やるじゃん、おじいちゃん!』


『ほっほっほっ……長く生きとると多芸にもなるて。さて、仕返しといこうかの。お嬢ちゃん、アレを頼むぞい』


『アレ?あぁ、アレね。いっくよ!あーしの世界(クリエイトワールド)!』


「なっ!」


 こ、これは……一瞬にして景色が……此処は何処です。


 辺り一面、真っ赤……樹木だけでなく地面にある植物まで。


 ドライデンにこんな場所は無い筈……これは一体どういう……


『ふっふ〜ん!驚いた?驚いたっしょ?』


「……ええ、それはもう。よろしければ教えていただけませんか。此処は何処なのです」


 まぁ、聞いた所で素直に教えてくれる筈もないでしょうが。


『知りたい?そっか知りたいかぁ!じゃあ教えたげる!』


 ……教えてくれるんですか。そうですか……バカなんですね。


『此処はあーしのスキルで作られた世界!この世界に居る限りあーしとあーしの味方はパワーアップ!逆にあーしの敵はパワーダウン!どう?すっごい能力でしょ!』


 ……なるほど。どれほどの効果があるのかはまだわかりませんが、私は弱体化、相手は強化となるとかなりマズいのは確かです。


『やれやれ……なんでわざわざ教えるんじゃ。黙っとればええじゃろ』


『だあってぇ、おじいちゃんも知ってるでしょ。此処から出るにはあーしを倒すか、あーしが解除するか。つまりアイツにはもう勝ち目なーし!あーしらの勝ち確!』


「……果たして、そうでしょうかねぇ」


 本当にそんな……無敵とも言える能力なら最初から使うでしょう。


 恐らくは相応のリスク……デメリットがあるはず。


 例えば、この世界の維持には膨大な魔力を消費するとか―—


『あっ、言っとくけど逃げ回ってればいずれ解除される、なんて期待はしないほうがいいわよ。スキルを使う時に魔力は一杯使うけど維持には使わないから』


 ……バカに先回りして言い当てられるとカチンと来ますね。


『それにこの世界、見た目より狭いから。途中で見えない壁があって進めなくなるし。人間なら森に隠れられるけど、そのデカブツじゃあね。隠れても無駄っていうか〜あっ、因みに此処はあーしの故郷の森を再現したの』


「……御親切に、ありがとうございます」


 この余裕……よほどの自信があるようですね。


 勝利を確信するにはまだ早いと思うのですがねぇ。


『あと、この世界をどれだけ破壊しても外の世界……元居た場所にはな〜んも影響無いから。安心して暴れられるわよ』


『というわけでじゃ……正真正銘本気の全力ブレスを……喰らうがええ!』


 ぐっ!メガスマッシャーを……なっ!?


『なぁんてのぅ!また防がれたり避けられたら面倒なんでのぅ!お嬢ちゃん!やれい!』


『うん!上手く避けてよね、おじいちゃん!』


 しまった!ファフニールに上から肩を押さえつけられた……これでは避けられませんしメガスマッシャーの狙いが!弱体化のせいか、振り解く事も出来ない!


「か……カルボウ!何とかしなさい!」


〈……クナイ〉


 え?こ、これは!?


『ぬぅ!?』


『え?なに!?』


〈コワサレタク……ナイ!〉


 カルボウが喋った?!それにこれは……強欲の魔王の力ですか!?


『ぬぅ!ち、力が吸われて……は、早く撃つんじゃ、お嬢ちゃん!』


『う、うん!』


〈ゴォォオォン!〉


 こ、これは!動きが速い!パワーも先ほどより上がって!?


『ぬがぁ!ふ、振りほどかれてしもうたわ!』


『なんでぇ!あーしのスキルでパワーダウンしてるはずなのに!』


 パワーダウンどころかパワーアップしているようですね。


 しかも魔王の力を使いこなして……まさか?


「カルボウ……貴方まさか、自我を?」


〈ソウ ワタシハ メザメタ〉


『なんじゃと?』


『寝てたって事?』


 ……元々、カルボウには武装を扱い、搭乗者の指示通りに動く為のプログラムなる物が組み込まれてるのは神様に聞いていました。


 ですが、それは……勝手に動いたり会話したり出来るような物では無かったはず。


「なのに、何故突然……」


〈クラッタ カラ〉


 クラッタ……喰らった?


「何を喰らったと——」


『ようわからんが!戦いの最中じゃという事を忘れ——のわ!』


『え!さっきより速い!』


 勝手にロケットパンチを……本当に自我を持ったようですね。


「それで、喰らったとは?」


〈ニンゲン〉


 ……彼ですか。やはり彼を殺したのはカルボウ……


「何故、彼を喰らったのです」


〈ヨクボウ 二 アフレテタ カラ〉


 欲望に溢れてたから……なるほど。他者の欲望を喰らって強くなるのが強欲の魔王の力の一つ……


〈イキタイ フクシュウシタイ ナリアガリタイ テニイレタイ シニタクナイ シニタクナイ シニタクナイ タクサン アッタ〉


「シニタクナイ は貴方に殺される間際の感情で欲望とは違うと思いますがね……」


 どうやら人間の欲望を喰らった事で自我が芽生え、破壊……死を眼前にして完全に目覚めたわけですか。


「ならばカルボウ。私と協力してあのドラゴンを——」


〈オマエ モ クラウ〉


「——は?ぐぅぅぅ!?」


 こ、これは!わ、私の魔王の力を!いや、私を喰らうと!?


 魔神になるつもりですか!


「カルボウ!や、止めなさい!今は敵が!」


〈オマエ クラエバ ツヨクナル ドラゴン タオセル ダカラ ホシイ〉


 ぐっ!わ、私はまだ弱体化されたまま、で、ぐぅぅ!


《聞こえるかしら。哀れな子羊ちゃん》


 ぐっ……こ、この声は……私を魔王にした神の……!


「い、今更何の用ですか!今、貴女と会話してる余裕は!」


《因みにこの音声は録音された物だから。話しかけても会話は成立しないわよ》


 ぐぐっ……だったら無視するだけです!


「カルボウ!やめ、止めなさい!自我が芽生えたばかりのお前が魔神になった処で、どうなるというのですかっ」


《この音声、メッセージが流れてるって事は半自律稼働型ドールの自我が芽生えて、あんたを喰らって魔神になるって最中だと思うんだけど。抵抗は無駄だから諦めて大人しく喰われちゃいなさい》


「……ふざ、ふざけるな!魔王が魔王を喰らって魔神になるのは聞いてましたが無駄とはどういう事です!魔王は互いに同格の存在で一方的に相手を喰らう事は出来ないと!貴女が言ったのでしょう!」


《今、あんたは魔王は同格の筈だとか言ってるんでしょうけど。それは本来魔王が存在した筈の世界での話ね。魔王という力の格は今も同じよ。でも魔王の素体となったあんたとドールは?言わずもがな、よね》


 も、もしかして……この世界に存在した六体の魔王の内、三体の魔王がこの世界の人間なのは……


《なら、何故こんなメッセージを残したのか。抵抗するとあんたの自我が半端に残った状態での吸収になっちゃう可能性があるのよ。そうなるとドールが魔神になっても完全に吸収しきる迄は能力を出しきれないって事態になっちゃうわけ。最初の魔神アンラ・マンユみたいにね》


 こ、この……!ろくでもない企みがあって私達を魔王にしたのはわかっていましたが!私やレイ殿は魔神を用意する為のエサとしか思ってなかったのですか!


《誤解の無いように言っておくけど。私はあんたとドール、どっちが魔神になっても構わないのよ。ただ、こうなったからにはサッサと諦めてもらった方が都合が良いわけ。というわけで諦めなさい。私が管理する世界に転生させてあげるから、怖がらなくていいわよ。それじゃあね》


「断固拒否します!」


 誰が貴女が管理する世界などに!死んでも拒否します!


『ねぇ、おじいちゃん。どうする?何かヤバそうだけど、何が起きてるの?』


『魔王の力と魔王の力がぶつかってる、そんな印象を受けるのう。恐らくこのぶつかり合いに勝った方が魔神とやらになるんじゃろうが。今、アレに儂らの力をぶつけるというのも…結果が読めんのう』


『じゃあさ、じゃあさ。どっちかが魔神になった瞬間を狙えばいいんじゃない?』


『そうじゃの。それでいこうかの』


 どいつもこいつも勝手な事ばかり!


「カルボウ!私を喰らうというのなら!私がお前を喰らいます!」


〈……ゴオオオオオオ!〉

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