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第337話 裏で動いてました

誤字脱字報告ありがとうございます。


いつも助かってます。

~~ジュン~~



「で。何故こうなる?」


「暗殺者が動いてるからでしょ?だいじょーぶ!ウチが皆守ってあげる!」


「皆とお喋り楽しいよ!」


 パーティーが終わった後。狙われる可能性が高い人物を出来るだけ護衛しやすいように数部屋に纏めた。


 結果、俺とアイ、ベルナデッタ殿下は同じ部屋。アニエスさんとブルーリンク辺境伯が同室。


 ジーク殿下は俺と同室を希望したが断固回避。シルヴァンと同室になってもらった。


 しかし、だ。


「結局一部屋に大半が集まってんじゃん…」


「まだ寝るには早えし、いいだろ」


「わたし達、ジュンとあんまり話せてないしぃ」


「護衛もする」


 まぁ、なぁ。暗殺者が動いてるとなれば警戒するのはわかるんだが……俺達を狙ってるとは思えないなぁ。


『へぇ?そりゃまたどんな理由でや?』


 エスカロンとレイさんの狙いは俺だろ。


 エスカロンは俺を王にしたい。つまり手に入れたい、生け捕りにしたい。


 レイさんは俺を殺したい。自分の手で。


 どちらも俺に暗殺者を送る理由が無い。他の誰か……俺の護衛を減らすのが目的だとしても、誰かが死んだ時点で俺達は王国に帰る事になる。


 それじゃエスカロンもレイさんも目的が果たせない。計画に修正が必要になる。


 故に暗殺者の狙いは俺達じゃない。


『一理はあるわ。でも甘い、甘いでぇ、マスター。ティラミスに練乳とハチミツかけたくらいに甘々やで……いや普通に美味そうやな。練乳ハチミツかけティラミス』


 ……うっぷ。


 そ、それはいいとして、甘いとは?


『確かにエスカロンらがマスターを殺す目的で暗殺者を送る事は無いやろな。他の誰かを殺す事も。でも誘拐ならどや?』


 ……少なくとも即帰還、とはならないだろうな。


『せやろ。誰かを誘拐してマスターを脅す、とか全然有りやろ。ジークとか誘拐されたらアインハルト王国は逆らえへん。マスターだけを従えたいならもっと狙い目なんがおるし。エルリックとか』


 警護が厳重なジーク殿下より赤ん坊のエルリックが狙い目なのは確かだな。


 でも、それで俺が永遠に従うと考えるか?


『永遠に従える必要は無いやろ。エスカロンに限ってはマスターを王にしたらええみたいやし。次に……狙いは帝国かもしれへんな』


 その場合はアインハルト王国とツヴァイドルフ帝国の分断が目的か。


 そっちの方が可能性は高そうだな。


『せやな。まぁ、今挙げた中に狙いがあるなら対処出来るわ。偵察機もあるし精霊達の監視もある。ハティかて気付くやろ。カミラらもおるし、そうそうヤられる事は無いやろ。でもなマスター、一番厄介なんはエスカロンの支配下に無かった場合や』


 ……あん?暗殺者が独自に動いてるって事か?


『それかエスカロン以外の誰かに従ってる場合やな。ほら、元々はエスカロン()やったわけやん?』


 エスカロンと同じように都市の代表をしてた仲間、そいつが暗殺者を動かしているって事か。


『全部想像に過ぎへんけどな。でも、そいつらかて子飼いの暗殺者は居るやろし。何より、エスカロン派って完全な一枚岩やったんかなぁ』


 ……というと?


『内乱の手際の良さから見て、エスカロンが王になるまでは総意やったんやろな。でもなぁ……普通に考えて他国の貴族に王位を譲ろうなんて普通はありえへん考えやと思うで。反発があって然るべきやろ』


 ああ、そりゃそう。他国の人間を王にするくらいなら自分がやるって考える奴は居るだろな。


『居るやろなぁ。その場合、幾つかやりそうな事は思いつくけど……向こうの内情まではわからへんからな。エスカロンを暗殺、は全然してくれてかまへんけど』


 それはそれで面倒事になりそうだけどな、普通なら。訪問先の国王が暗殺されたとなれば捜査が終わるまで招待客は全員軟禁とかされそうだ。


 魔王が暗殺されるなんて無いだろうが。


『無いやろなぁ。まぁ、今んとこ暗殺者の姿はあらへん。わいが見張っとくし、安心して乳繰りあっててええで。なんやったら子作りしてまう?』


 するか!


「うぅ……おぎゃああぁぁ!」


「ああ……またか。今度はなんだ、ミルクか」


「ミルクはさっきあげたからオムツでしょう」


「全く……何故私が……結婚もまだなのにすっかり慣れてしまった」


「身事な手際よね……お互いに」


 カタリナとイーナは手際よくオムツを替えて……おやぁ?


「ん?どうかしたのか、ジュン」


「いや……なんでも」


 今、一瞬だけ魔王の力を感じたけど……気のせいか?




~~エスカロン~~



「……気付かれましたかね」


「気付かれたでしょうね」


『気付いたでござろうなぁ」


 ほんの一瞬ではありましたが、魔王の力を使わざるを得ませんでしたから、仕方ないでしょう。想定外の行動をされないと良いのですが。


「全く……本当に余計な事をしてくれたものです。まさか貴方がこのような行動に出るとは。貴方の事は信頼していたのですが」


「……」


「欲が出ましたか。私を殺し、レイ殿を殺し。ジュン様をも殺す。そうする事で自分が王になる。そう夢想しましたか」


「それは違います!」


「ではなぜ此処に。カルボウを使って何をしようとしたのです」


 私の側近として傍に居た貴方の事は良く知っている。戦闘能力の無い貴方が事を起こすなら、必ずカルボウを使うと思っていましたよ。


「おまけに魔獣は兎も角、暗殺者まで……彼女らは後々役に立ってもらう為に、王都からの避難を命じていた筈です。貴方が呼び戻したのでしょう」


「……」


 ジュン様が王になった暁には、きっと必要になる。そう考えて暗殺者達の指揮権を()にも与えたのがいけなかったようですね。


「だんまりですか。言っておきますが黙秘なんて通ると思わないでもらいましょうか。口を割らせる方法はいくらでもあります。魔王の力を使うのが最も容易い。ですが……使わせないで欲しいのですがね」


「……ジュン、エロースの使徒を殺す、つもりでした」


「……ハァァァ」


 前にも一度言っていましたね。私がそのまま王で在り続ければよい、と。あの時は納得して引き下がったと思っていましたが……そうではなかったと。


「部下の管理がなってないみたいですね、エスカロン殿」


『全くでござる。拙者が気付いてなければ今頃はどうなっていたか』


「……返す言葉もありませんね」


『感謝の言葉くらいは欲しい物でござる』


「……ありがとうございます」


 剣の癖に随分と舌が回る……舌なんてない癖に。


「それにしても、何故気付けたのです。私には全く……」


『その者は例の男に嫉妬しているのでござるよ。主君に、自分よりも遥かに期待を寄せられる、あの男に。拙者はその嫉妬を感じてただけでござる。嫉妬の魔王でござる故』


「彼は怒りも抱いていたよ。あの男さえいなければってね」


「……ぐっ!勝手に人の心を覗くのは止めていただきたい!」


 ……どちらにせよ、彼の暴走の原因は私、ですか。やれやれ……間違いなく私の失態ですね。


「しかし、困りました。明日は式典、貴方には働いてもらうつもりだったのですが……魔獣もまだ使い道があったというのに」


『主殿がほぼほぼ倒してしまったでござる』


「……僕だけの責任みたく言うな。お前だって同罪だろう」


 まぁ、私も少々……いえ、そんな事よりも、です。


「取り敢えず、貴女達は王都から離れておきなさい。明日以降の事は……追って連絡します」


「はっ」


 彼女らはこれで良いとして。問題は彼、ですね。


『殺せば良いでござろう。主殿の丁度いい練習台にござる』


「ん~……それはちょっと」


「……だから僕に殺人を強要するな」


 今回は兎も角、彼は今まで尽くしてくれましたし、ジュン様の統治に必要な存在です。その為の知識は与えて来ましたから。


 殺すのは簡単ですが、また新たな人員を育てる手間を考えると……惜しい。


『エスカロン殿の眷族にすればよいのではござらぬか?』


「私の眷族にするのはちょっと……意味が無いですね」


 普段はでくの坊になるので。それでは意味が無い。


「そう言えば貴方達は眷属を作らないのですか?」


『拙者は眷属を作る事は出来ないでござる。そう言った能力が備わってないのでござるよ』


「僕も同じです。魔王は全ての能力が同じように備わってるわけではないみたいですよ」


 ふむ……となると取りうる選択肢は……


「これ以降は私の計画に従うというなら殺さずに此処で監禁します。眷族にもしません。ですが、まだ諦めないというのなら仕方ない。此処で殺します。さぁ、どうしますか」


「……承知、いたしました。此処で全てが終わるのを待つ事にします……」


「よろしい」


 カルボウを隠す為に魔王の力で張った結界を作り変えて……これで入る事も出る事も簡単には出来なくなりました。彼には不可能でしょう。


「それでは大人しくしている事です。食事くらいは運ばせましょう」


「はい……あの、エスカロン様。申し訳ありません……どうか、ご武運を。それと明日の為にも睡眠をとってください」


「……そういうわけにも、ん?」


『どうかしたでござるか、エスカロン殿」


「あのデカブツがなにか?」


「いえ……なんでもありません」


 一瞬、動いた気がしましたが、気のせいでしょう。アレが今、動く筈はないですからね。

いつも本作を読んで下さりありがとうございます。


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