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第335話 明日でした

明けましておめでとうございます。

今年も本作をよろしくお願いします。

 精霊でも侵入出来ない何かで阻まれた王都ガリアの城。


 先頭の帝国の一団が門をくぐる直前、その力は霧散した。


 が、完全に消えたわけではなく、今でも城の一部に残っているようだ。


 同時に、感じていた異様な空気も鳴りを潜めた、ように感じる。


 少なくとも和らいだ、と言っていいはず。


「……レーンベルク団長」


「ええ……わかってるわ、ポラセク団長」


 が、異常事態は城に入っても変わらず……いや、異常性は増したと言っていい。


 城内の各所には兵士が立っているが生気を感じられない。いや、まるで眼を開けたまま寝てるかのようで意思がないよう。


 だが全ての兵士がそうでは無く、少数の兵士はきびきび動いてる。騎士やメイドらも同じだ。案内役のレイさんの周りにいる騎士や使用人、皇帝らの応対をしてる執事ら。


 一部の人間は問題無い、どころかやる気に満ち溢れているかのよう。


 ここまで両極端な人間が混在し動いている。外部の人間が見てすぐに気が付く程だというのにも関わらず、ドライデンの人間はそれが普通であるかのよう。


 普通なら自分が働いてる横でだらけてる、何もしてない人間がいたら不満に思うはず。だが何も感じていないように見える。


 そして門の向こうから感じる気配。


 俺達はまだ城の外門をくぐって中庭に入ったばかり。城内部に入る為の門の向こうに、何かがいる。


 いや、何かではなくあの門の向こうにいるのは確実に――


『魔王やろうな。んでもって、ここのやつらを見る限り連想される魔王は強欲でも嫉妬でもなく――』


 怠惰の魔王、か。


『やろうな。断定はまだ出来んけど。はてさて…怠惰の魔王はどんな奴なんやろな』


 まだレイさん以外の魔王の正体は割れてないからな。アンラ・マンユや犬神の例を考えると人間ではない可能性もある。


 はたして、どんな奴が待ち構えているのか。


「入るわよ、ジュン君。馬車から降りて」


「お前達は馬と馬車の移動だ。その後は荷物を運び入れろ。非戦闘員の護衛をしつつ、な。警戒を怠るなよ」


 城内にはまず先に皇帝と皇族の一団、アイ達王族、その後に俺、アニエスさん、ブルーリンク辺境伯と続き。五大騎士団団長と護衛の一部。


 クリスチーナとアム達は平民枠での招待なので一番最後。院長先生らも最後になる。


 カミラ達元暗殺者組は既に散らばり城内を探ってるようだ。


 残りはポラセク団長が指示したように動いている。


「門が開きましたよ。私から離れないでくださいね、ノワール侯」


「レッドフィールド団長はジーク殿下の御傍に。婚約者候補なのでしょう。ポラセク団長の側に居たいのはわかるけれど、王族三人をブルーリンク団長だけにずっと任せるわけには行かないわ」


「……仕方ない。寂しいだろうけど、泣かないでねレオナちゃん」


「誰が泣くか!サッサと行け!」


 普通に考えて俺よりも王族三人に戦力を集めるべきだと思うんですけどね。多分、今この場で仕掛けて来る事は無い、と思うし。


『ほっほう?そりゃまたどういう根拠があっての話や?一応言うとくけど、ドライデンの人間が居るから、は根拠として弱い……どころか全く気にせぇへんやろ。別世界から来た存在なら。巻き込んで死なせるとか考慮すらせんやろ。既に魔王の手下になっとる可能性すらあるわけやし』


 ……正直、ドライデンの人間が居るから、も根拠の一つとして考えてたけども。


 恐らく、動くなら式典の日。つまりは明日だろう。


『そりゃなんでや?魔王もエスカロンも狙いはマスターやねんで。マスターが到着した時点で襲う事は十二分にあり得るやろ』


 そうだな。でも、俺達がいつ到着するかは数日前まで予測しか出来なかった筈だ。俺を殺すにしろ捕まえるにしろ、計画を練った上での実行のはず。


 綿密な計画であればあるほど、確実性を重視する。少なくとも俺ならそう。


『……マスターが確実に居るのは式典の日、その会場。だから事を起こすなら式典の最中って言いたいわけやな。確かにありそうな話やけども。まさか式典の最中なら俺Tueeeeが一際輝く、なんて考えてへんやんな』


 ……………………………………………………………………………………………………………………考えてないよ?


 さ、俺達の順番が来たぞ。


『……怪しいなぁ。まぁ、ええ。一応は戦闘に入る心構えだけはしとくんやで』


 既に帝国組は城内に入っている。アイ達も入っていて、戦闘音も何も聞こえない。


 城内に入ってすぐにバトル開始にはならなさそうだ。


「おお、これはこれは。闘技大会でお会いして以来ですね、ノワール侯爵様」


「……ええ、御無沙汰しております、エスカロン陛下」


「おや?どうかされましたか」


「いえ、その……大丈夫ですか?」


 城に入ってすぐにエスカロンの出迎えを受けたのだが。一目で見てわかる程に疲れている。目の隈が凄いし、頬がこけて以前よりかなり痩せている。


 両手を広げて歓迎の意を示しているが、その手もやせ細っている。どう見ても不健康、なのにこの……隠しきれない濃密な力の気配。


「ああ……少しばかり明日の式典の準備の為に無理をしまして。何せ明日、私の望みが叶うか叶わないかがわかるものですから。仕事に熱が入るというものですよ」


 ……やっぱり、全ては明日の式典か。


 そして、感じていた気配の持ち主は……エスカロン。


『……そうみたいやな。この場に居るドライデン側の人間に目ぼしいのは居らん。エスカロンとレイを除いて、な。エスカロンが魔王で確定と見てええやろ』


 そうなる、よな。俺達の予想では怠惰の魔王だったが……仕事のし過ぎでやつれてるのを見ると怠惰の魔王ではない?


「…………エスカロン陛下、単刀直入にお聞きします。貴女が魔王なのですか」


『ええ……マスター、それは大胆すぎるやろ。折角この場でいきなりバトル開始はなさそうやったのに』


 わかってる。だけど聞かずにはいられなかったんだ。


 エスカロンも、この場でストレートに言及されるとは思わなかったのか。目をパチクリとして少し呆けた様子を見せている。


 アイや団長達も少し驚いた後に警戒を一層強めている。流石に武器を手にしてはいないが、いつでも戦えるように態勢を整えている。


「フフ……アハハハ!実に豪胆ですね!本当に貴方は素敵だ!アハハハハ!」


「……フン」


 琴線に触れたのかエスカロンは本当に嬉しそうに、楽しそうに笑っている。俺が質問したと同時にエスカロンの横に移動したレイさんも笑ってはいるが、こちらは楽しそうというより不適の笑みという感じだ。


「ハハハ……フッ~……フフ、その質問の答えは明日、わかりますよ。明日、式典で全て、ね」


「今日はゆっくりと休んでください。今日は絶対に何もありませんし、何もしませ……ああ、いや。招待客全員を歓迎してのパーティーはあります。そちらには是非皆様でご参加を」


 全ては明日の式典で、か。

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