第317話 やっぱり居ました
「きゃははは!たかーい!」
「あわわわ…ジュ、ジュン君、パメラは本当に大丈夫なのかな」
「……多分」
火、水、大地、風の大精霊達の争いに終止符は打たれた。
代わりにパメラという暴君の誕生だ。
パメラは今、風の精霊の力で浮かんでいる。パメラの力ではないので失敗して地面に激突、なんて事態にはならないだろうが地面には大地の精霊達が万一に備えて待機。バックアップも完璧だ。
パメラのギフトが精霊の声を聞くだけの物と勘違いしたのはパメラがまだ幼いからというのもあるが、今まで接触した精霊の数が少なかったし、大精霊のような力ある精霊に会ってなかったのが理由として大きいようだ。
だが、今回の騒動で幼いながらも何となく自分の力を理解したパメラは…
【ア、アハハー…シルフィードも遊ぶのは好きだけど、そろそろ休ませてー…】
【【【【休ませてー】】】】
「だめー!もっとなのー!」
「パ、パメラァ…あ、遠くに行っちゃダメだよぉぉ」
精霊を遊び相手…オモチャ認定した。
新しいオモチャを手に入れた子供の行動力とエネルギーは凄い。そして無慈悲だ。相手の状態を一切考慮しない。
子供なんて我儘で当たり前だとは思うが。我儘な大人にならないように教育…誰がするんだろ。
おっさんに期待は出来ないし。なら…姉のカタリナだな、うん。
…あの騒ぎから既に三日。ご飯と睡眠時以外はずっと精霊達と遊んでいる。
連日、飽きる事なく。今日も朝から昼まで相手をしていたウンディーネはグロッキー状態だ。
【おい、大丈夫かよウンディーネ】
【だいじょばないし…疲れたし…誰か〜…雪解け一番水持って来てし〜…】
水の精霊だけあって美味そうな水欲しがるな…だが此処にそんな物はない。
パメラはウンディーネと遊ぶのが一番楽しいらしい。
今は夏だから水遊びが楽しくて仕方ないんだろう。
「で。どうするか決めたのか?」
【いんや、まだ。誰も引かねぇからな。まだかかるぜ】
何の話かと言えば。誰が俺を勇者にするのかって話だ。
【ボスから喧嘩はするな、騒ぐなって言われてっから力尽くも無理だしよ】
【力尽くだとしても負けないし……今は勘弁しろし…】
【やんねぇよ、流石に。今は休んどけ】
あれだけ仲の悪い二人だったのに今は奇妙な友情が生まれつつあるような。
「しかし、時間がかかるのか…なんか妥協案とかないのか」
【ねぇな。アンタと同じくらい良い男がいたらわかんねぇけど?】
………メーティス。
『わいに聞かんでもわかってるんやろ。マスターと同じくらい良い男なんておらんわ』
…そうですか。
「そもそもな話、どうして勇者は男だけなんだ?」
「ウフフ…だって私達、精神的には女だもの…」
「…居たのか」
ルナは…レティシアは気配が薄いな。精霊の能力なのか本人の個性なのかわからないが。
「で、女だから男を選ぶって。恋人選びじゃあるまいに」
イフリートとウンディーネは人型だがノームとシルフィードは動物やん。
まぁペットでいいならモグラ一択だが。
「ウフフ…似たようなものよ…」
「じゃあルナはシルヴァンが好きって事か?」
「ウ、ウフフ…そんな時期もあったかしらね…」
…可哀想なシルヴァン。
「で。例外は無いのか?女を選ぶ事は本当に皆無?」
【あるにはあるぜ。例外が二つほど】
【あー…そう言えばあったし】
あんのかい。で、それは何よ。
【一つは時の大精霊だな。人間の女の中に生まれる特殊な精霊でよ。その女は時の大精霊の加護を得る…まぁこいつは聖女って呼ばれるから勇者じゃねえな】
【もう一つは氷の大精霊シヴァだし。アイツは女好きだから選ぶなら女だし。一度だけ女を勇者にした事があったし】
ほう。氷の大精霊シヴァ。ルナからは聞いてなかった存在だな。
「ウフフ……シヴァの事は忘れてたわ……だってもう千年以上会ってないし」
【あ~…アイツは最北の地に引きこもってっからなぁ。あそこは雪と氷ばっかで火なんてねぇし。イフリートもずっと会ってねぇ】
【ウンディーネは偶に会ってっし。相変わらずの寂しがりやだったし。呼んだら喜ぶだろうけど、此処は暖かいからまず来ないし】
アインハルト王国は大陸で最南に位置する温暖な国だからな。今は真夏だしイフリートも居るしで余計に来なさそう。
で、シヴァは女好きでさみしがり…居場所も最北の極寒の地となれば会いに行くのは難しそうだな。
『なんや、なんか用でもあるんか?精霊はもう十分おるやん。まだ誑し足りんのん?』
いやいや、当初の目的があるだろ。俺達の戦力UPという目的が。アイか団長の誰かが勇者になってくれれば大きな戦力UPが見込めるだろ。
『ああ……まあ仮に近場でも会いに行くんは無理やろ。王都から出るの禁止されとるんやし』
そうだったな……そろそろベルナデッタ殿下の未来予知に何か変化が起きてないものか。
『聞きに行けばええんちゃう。最近はジークとも会ってないし』
……ベルナデッタ殿下にだけ会いに行こう、うん。アイを通じてアポ取ればいけるだろ。
というわけで翌日。
アニエスさんとソフィアさん、アイを御供に登城。早速ベルナデッタ殿下の私室に…行こうとしたのだが。
「アイシャ殿下、陛下が御呼びです。ノワール侯爵、ローエングリーン伯爵、レーンベルク伯爵も来るように」
いつぞやのように宰相の出迎えによって阻止されてしまった。なんで俺達が来るって知って……いや知ってて当然か。
「でもさ宰相。ウチらはベルに会いに来たんだけど?まあベルならいつでも大丈夫だろうけど。約束した時間ってのがあるからさぁ」
「問題ありません。ベルナデッタ殿下も御一緒です。陛下は私室で御待ちです」
「はぁ…わかったわよ。あ、ジークは?」
「ジーク殿下は不在です。最近、外出される事が増えたのですよ」
そりゃいい事だ。二つの意味で。
「ジーク殿下は何処へ出かけられてるのですか?」
「さあな。外に出る事を嫌がっておられたジーク殿下が出掛けられるようになられたのだ。下手に干渉してまた引きこもりがちになられても困る。それに最近は自室に居るのを怖がられているようだ」
「怖がられてる?どういう事でしょうか」
「……ふむ。レーンベルク伯爵、いやレーンベルク団長。他騎士団の団員だがアズゥ副団長は何かあったのかね?」
「はい?えっと…何かとは?」
「アズゥ副団長が積極的になった。本来、そう言う事をしない事が護衛には求められるのだが…陛下はジーク殿下を矯正する良い機会やもしれんと黙認なされた。しかし…あの堅物のアズゥ副団長がなぁ。何か切っ掛けがあったと推測するのだが?」
「あー…」
アズゥ副団長のアピールが逆効果になりつつあるのか。魅了のスキルがあるのに…どうなってんだ。
「ほう?ノワール侯爵は心当たりがあるのかな?」
「…あります。というか、私がけしかけたようなものです。陛下には引き続き黙認して頂けるようお願いします」
「…そうか。陛下が何とかしろと仰ったのだ。問題ないだろうな」
そうでないと困ります。つうか恋人を作ってもらうのが一番穏やかな解決策だ。これがダメならどうしろって話だし。
「陛下、御連れしました」
「入れ」
「ママ、来たよん」
…まぁね。予想はしてたさ。ベルナデッタ殿下以外にも誰か居るんじゃないかなって。
「やぁ。久しぶりだな、ノワール侯爵」
来てたんスね、ブルーリンク辺境伯…




