第316話 恐ろしい子でした
前回のあらすじ。
ルナは喧嘩の仲裁する自信が無いらしい。
「ウフフ……だからね……彼も困ってるから…」
【うっせぇぞルナ!引きこもりのぼっちは黙って占いでもしてろ!】
【あんたはやっぱ馬鹿だし!ルナは人間の身体に引きこもってるし!あとルナ!次はウンディーネの番だし!早くウンディーネの勇者とイチャイチャさせろし!】
【ああん?!何言ってんだルナの次はイフリートが使うんだよ!】
「ウフフ………薙ぎ払っていいかしら……」
確かに仲裁は無理そうか…ルナ、意外と煽り耐性低いな。お前まで参戦してどーする。
てかレティシアの中に入る順番って決まってんの?たまには解放してあげなさいよ。
…ん?何かが地面から…おおう?!
【やっほい】
【【【【やほほーい】】】】
も、モグラ?人間の頭ぐらいの大きさのモグラと普通の大きさのモグラが地面から頭を出して挨拶して来た。
穢れ無きつぶらな瞳で俺をジッと見つめながら。
【やっほい】
【【【【やほほーい】】】】
なんかリピートしてる。これは俺にも挨拶しろと?
「や…やっほい」
「ジュン?どしたの」
「下に何か居るの?」
アイとソフィアさんには見えてない、か。それにモグラが地面から出て来たなら地面に穴が開かないとおかしい。
つまりこのモグラも精霊。いや喋ってる時点で普通のモグラじゃないのは確定なんだが。
『大地の大精霊ノームやな。この登場の仕方、この姿で風の大精霊やってなったら詐欺やろ』
だよな。詐欺じゃない事を願う。
「えっと大地の大精霊ノーム…で合ってる?」
【やっふ!】
【【【【やっふー!】】】】
…合ってるんだよな。バンザイして笑ってるし…笑ってるんだよな?
「…ルナ、ノームが来たぞ。ノームはイフリートとウンディーネとはどうなんだ」
「ウフフ…悪くはないわ…良くもないけど…ノーム、貴女も手伝って頂戴…」
【やっふ?】
……やだ、このモグラ可愛い。動物のモグラに触れた事は無いが…このモグラなら飼ってみたい。
モグラがコテンと首を傾げる姿がなんとも愛らしい…
「わうわう!わうう!」
「ハティ?どした」
「急に怒って、どうしたのぉ」
「くーんくーん」
ハティがノームに吠えた後、俺にスリスリ…ヤキモチか?
ハティにはノーム…精霊が見えている?
『みたいやな。魔獣にまでモテモテやん』
そう言えば雌だったな、ハティは…って、ハティは恋愛面で嫉妬してるんじゃなくペットとしてだろ、多分。
【やっふ!やふぅ!】
【あぁ?ノームまで来たのかよ。お前の出番はねぇよ。帰んな】
【火の精霊の癖に冷たいし。久しぶりに会ったんだから優しくしてやるし。ノーム、おひさだし】
【やふ】
お、おぉ?ノームの愛らしさには弱いのか、態度が軟化したな。
少なくともルナよりは可能性を感じる。
…しかしノームはまともに喋れないのか?
【ところでノームもあのイケメンはウンディーネが勇者にした方が良いと思うし?ちょっとウンディーネと一緒にイフリートわからせるし】
【やらん。大精霊同士が喧嘩をすれはどうなるか理解しているだろう。ルナはともかく、彼を困らせるな】
えええ!ちょ、ええ?は、ハ◯ーン様?それかインテ◯ラ?可愛い見た目に反して凛々しいお声だこと!ギャップが凄いんですけど!
つか普通に喋れるんやんけ!
【む…確かにアイツを困らせたくはないけどよ。ウンディーネが引き下がらないのが悪い】
【困らせたくないのはウンディーネも同じだし。それに後から来たくせにイフリートが出しゃばるから悪いんだし。ジュンはウンディーネが勇者にするし。引っ込んでろし】
【いいや。彼はノームが勇者にする。彼の優しさは深く広い。大地の勇者たるに相応しい人物】
【【【【やっふーい!】】】】
【【はぁ!?】】
いやいや結局あんたも参戦するんかーい!ルナは仲裁の協力頼んだよな!
「そもそも…勇者って大精霊に認められて尚且つ相性が良くないとなれないんだよな。俺ってその点クリアしてるのか?」
「ウフフ……勿論よ。イフリートが好むのはカッコいい男。ウンディーネはイケメン。ノームは優しい男。ウフフ……貴方は全てクリアしてるわね……この精霊たらし」
「……急に八つ当たりしてくんな」
『この精霊たらしー』
お前までなんじゃい……
【ジュンはイフリートが勇者にするんだ!】【【【【そーだそーだ!】】】】
【ウンディーネがジュンを勇者にするし!】【【【【そーだそーだ!】】】】
【彼はノームが勇者にするに相応しい】 【【【【やふやふー!】】】】
火と水の精霊の力がぶつかり合った結果水蒸気が生まれた。そこに大地の精霊の力が加わると…どうなる?
【ぬはぁぁぁぁ!】【【【【うわわぁぁぁ!】】】】
おおう?火の精霊達だけが押し負けた。三つ巴になって拮抗、騒ぎは一時的に治まる、なんて事を期待してたんだが。
『火と水の力はお互いに相性悪いけど、土と水は相性がええねん。せやから三つ巴にならず火だけが押し負けたっちゅうわけやな』
はぁ、なるほど。そう言えばイフリートよりもウンディーネと仲良さそうだったもんな、ノームは。
でも次はウンディーネとノームの対立になるのか。さっきまでは水蒸気が発生して…次は?砂混じりの小雨でも降るのかね。
『そんな可愛いもんやないで。実は相性の良い精霊同士の争いの方が危険やねん。お互いの力が強化されて災害が引き起こされるからな。大自然の中でぶつかると何処からともなく土石流が発生したりな。大規模な地崩れが起きる事もあるな。王都内で言うても王都の外には自然があるわけやし。あ、地鳴り』
………大災害の前触れじゃねえか!?男を取り合って大災害起こすとか!ある意味先代の色情狂皇帝よりも性質悪いぞ!
「おいルナ!なんとかしてくれ!このままだとマズい事になるぞ!」
「ウ、ウフフ……………ごめんなさい」
「謝って済む事態か!あきらめんとなんとかせい!」
「ねぇねぇ、ジュン。さっきから何か異常事態なのはわかるんだけどさ。もしかしてヤバいの?」
「何が起きてるのか理解してるなら説明しろ。避難した方が良いのか、それとも何とか出来るのか」
くっ……俺が何とか出来る、か?精霊達を魔法でフッ飛ばす?いや、俺が王都から出れば少なくとも王都に被害が出る事はなくなるか?
『どっちも難しいんちゃうか。あ、ほら、新手やで。事態を収拾に導く救世主か。はたまた更にややこしい事態に導く混沌の者か。どっちやろな』
新手って…なんだ、鳥の大群?
「なんだぁ?急に風が強くなったな」
「髪がボサボサになっちゃうぅ」
「髪の毛が多いと辛い」
緑色の鳥の大群が現れたと同時に風が強くなる。お次は風の精霊の御登場か…
【いてて…よくもやりがったなって、シルフィードまで来たのかよ】
【アハハー!皆、久しぶりー!元気してたー?】
【【【【元気ー?】】】】
【相変わらずウッセーし!お前もお呼びじゃないからサッサと帰れし!】
【ウンディーネに同意する。シルフィードには御帰り願おう】
【アハハー!ひどーい!】
う~む…察するにシルフィードはイフリートと相性が良く、ノームとは相性が悪い、ウンディーネとはどちらとも言えず、か?
『それで正解や。因みにイフリートとシルフィードが自然界で争った場合。そこかしこで山火事が起きたり、火柱が立ったり、発火性物質が火を噴いたり。これまた大惨事が起きるで』
…風の力で火の勢いが増す結果か。街中の方が火種は多そうだな……やばし!
『ウンディーネの真似か?結構余裕あるやん。で、どうするん?シルフィードが混ざった事で拮抗状態にはなりそうやけど。それが崩れた時はどうなるかわからんで』
シルフィードもルナに呼ばれたから来たわけで、その目的は俺を勇者にするかどうか、なわけだが…頼むから気に入らないでくれ。此処でシルフィードまで俺を勇者にするとか言うた日にゃ……神よ!
【アハハー!君、おもしろそう!よっし決めた!君を風の勇者にしてあげるー!】
【【【【あげるー!】】】】
……祈る相手を間違えたようだ。そりゃそうだ。この世界の神様はエロース様だもんな。
せめてシルフィードが青い鳥だったら結果は違っただろうか。
幸せの青い鳥…探しに行こうかな。結構マジで。
【おいこらシルフィード!お前の事は嫌いじゃねえけど譲らねえぞ!ジュンはイフリートが勇者にする!】【【【【そーだそーだ!】】】】
【違うしウンディーネがジュンを勇者にするんだし!どいつもこいつも後から来たくせに出しゃばんなし!】【【【【そーだそーだ!】】】】
【いいや。ノームの加護こそが彼に相応しい。お前達のように思慮分別を欠いた者に勇者にされても迷惑なだけだ】【【【【やっほほーい!】】】】
【アハハー!いーじゃんいーじゃん!風の勇者でいいじゃん!】【【【【いいじゃん!】】】】
………取りあえずシルフィード一派がうるさいのには同意。シルフィードが加わって三つ巴、三すくみならぬ四つ巴、四すくみのような状態になって珍現象は鳴りを潜めたが。これは嵐の前の静けさに過ぎないわけで。
この時間で何か打開策を講じないとダメなん「うるちゃああああい!!」だがって、おお?
「パ、パメラ?どうしたんだ急に」
「うるさいって…何がですの?」
声がした方に振り向くと。イーナに手を引かれたパメラが頬を膨らませてぷりぷりしてる。精霊達を見てるようだ。
「あにゃたたち!おにいちゃまをこまらせちゃメッ!でしょ!」
【【【【は、はい!】】】】
【【【【ごめんなさいいい!】】】】
お、おお?大精霊含め、全ての精霊達がパメラに屈してる。
「パパいってちゃ!お兄ちゃんにはおせわになっちぇ…おせわに…えっと…そう!めいわくかけちゃいけないよっちぇ!だからうるさくしちゃメッ!」
【【【【はい!】】】】
……パパ?あのおっさんが俺に気遣いを?!バカな!?未だにクリスチーナを口説いたりジェノバ様にまでちょっかいかけたあのおっさんが!?
『ええ、そっち?そっちよりパメラの言う事に素直に従ってる事に驚きぃや、精霊達が。ルナの言う事はほぼ無視やったのに……って、そういやルナは普通やな」
ああ、そう言えば。ルナは普通に、パメラの言う事に従ってる風には見えないな。
「で。説明出来る?期待してないけど」
「ウ、ウフフ………私の評価に不服を申し立てるわ……あの子のギフトは精霊の声が聞こえるだけのものじゃなかったみたい…あの子のギフトは恐らく精霊使いよ…」
精霊使い…精霊を使役する能力って事か。想像以上に強力な能力なんじゃね。
「ほう。で、ルナは何で平気なんだ」
「ウフフ……今の私はレティシアでもあるもの……本来の姿なら……ああなってたわね……」
ああ、レティシアの中に入ってるから影響下に置かれなかったと。取り敢えず…王都で大災害の発生はなくなったか。
「だきゃら~しずかにしてなちゃい!なかよきゅしゅること!」
【【【【はい!】】】】
……あの従順さはもはや使役というより支配な気もするが。
パメラ…恐ろしい子。




