第315話 喧嘩でした
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「…クライネ!状況を!」
「黒薔薇騎士団!警戒…いや戦闘態勢!武器を取れ!」
「青薔薇騎士団は非戦闘員の避難誘導だ!」
「黄薔薇騎士団は帝国皇族と大公国公子一行を護衛!」
「赤薔薇騎士団は……とりあえず戦闘態勢で」
モクモクと広がり続ける水蒸気。異常事態だと認めた団長達が指令を飛ばす。
が、敵襲ではなさそうなんだよな。
「報告します。ノワール家の敷地内にのみ、至る所で水蒸気が発生しています。ですがそれだけです。人にも屋敷にも被害はありません」
「水蒸気?何も無い所からか」
「クライネ、不審者か魔法道具は?」
「捜索中です。まだ何も見つかっていません」
だろうなぁ。レティシアが来たなら精霊絡みだろうから。
「で。どういう状況?」
「ウフフ…喧嘩してるのよ…あの子達は昔から仲が悪いから…」
「あの子達?」
「ウフフ…ウンディーネとイフリートよ…」
水と火の大精霊か…相性が悪いのは何となくわかるけど。何で喧嘩してんの。
「ウフフ…理由は関係無いわ…顔を合わせたら必ず喧嘩してるもの…」
「じゃあ何で同じ日に来るんだよ…」
此処に来たのはレティシアに…いやルナに呼ばれたからだろうけどさ。
仲が悪いなら相手を見たら帰るなり日を改めるなりすりゃいいのに。
「おい、ジュン。聞こえていたんだが…アレは精霊の仕業なのか。どういう事だ」
レティシアとは近距離で小声で会話していたんだがアニエスさんにはバッチリ聞こえていたらしい。
俺が勇者になる計画は誰にも話して無い。出来るだけ周りに知られたくなかったし、正直あまり期待してなかったからだ。
「実はカクカクシカジカ」
「…ジュンを勇者に?確かに戦力アップにはなるだろうが…また特大な悩みの種を。せめて事前に相談しないか」
まだ勇者になれると決まってませんけどね。
それよりも、だ。
「レティシア、取り敢えず喧嘩を止めて来てくれ。騒ぎが大騒ぎになる前に」
既に手遅れな気もするが。
「ウフフ………………ごめんなさい」
「何故謝る」
それはアレか。十分に予測出来た事態なのに何も考えずに呼びつけた事か。
それとも喧嘩の仲裁は出来ないってんじゃないだろうな。
「ウ、ウフフ……あの子達だけじゃなくて他にも仲の悪い子の組み合わせが…」
「今すぐ予定を調整して来い」
いや、先に目の前の喧嘩だ。今の所被害は無いが大精霊同士の喧嘩なんてエスカレートしたらどうなるか。予想出来ん。
『出来るで。嵐が起きたり河の氾濫が起きたり…大規模な自然災害が起きたりするねん。此処は王都の中で自然は多くないから、そこまで大きな災害にはならんと思うけど』
流石ファンタジー世界。自然災害の原因もファンタジー…
「なんて言ってる場合じゃないな。兎に角止めて来てくれ」
「ウフフ……ごめんなさい」
「お前…わかった、俺も行くから。取り敢えずチャレンジしろ」
どうやらマジで仲裁する自信が無いらしい。俺だって無いけど。しかし放置は出来ない。
「ノワール侯爵、何処に行くつもりだ」
「外は危険です。何者かの襲撃の可能性が高いんですよ」
「ん〜…私の勘だと戦いにはならなさそう」
レッドフィールド団長の勘、当たってるといいなぁ。
でも外に出ないわけには行かないので団長達の制止を振り切って外へ。
途中でブルーリンク団長も外に出ておけばいざという時は逃げやすいだろうと後押ししてくれたので、それほど手間取らずに外に出れた。
「あ!侯爵様!」
「ジュン!どうなってんだよ、これ!」
「あんた、またなにかやらかしたわけ?」
「わふ!」
玄関前に庭で訓練していたアム達とルー達、リヴァとハティが居た。
皆、怯えてはいないが立ち込める水蒸気に困惑してる様子だ。
ところでリヴァよ。またってなんだまたって。
「皆、怪我はないな」
「あたいらは無いけどよ」
「屋敷の周りには人が集まってるみたいだよぉ」
「ドラゴンの次は謎の水蒸気」
あぁ…うん。次から次に珍事件が起きてるもんな。
そりゃ野次馬も集まるか。
「で、レティシア。お客さんは何処だ」
「ウフフ…あっちよ…」
レティシアが指差したのは空。位置はノワール家の敷地、丁度中央付近か。うん、水蒸気で何も見えん。
『いや水蒸気が無くても精霊は見えへんで、今は。見えるようにしよか?』
そうだった。普段はメーティスが見えないようにしてるんだったな。普段から見えると中々に鬱陶しいからって。
今は説得の必要がある。見えるようにしてくれ。
『了解や。声も聞こえるようにするで』
ああ、声も聞こえないようにしてたのね。
………あれ?じゃあ俺ってパメラ以上にレアなギフト持ちって事になるんじゃ?この世界じゃ。
『何を今更……ほれ、もう見えるはずやで』
どれどれ……って、なんか多くないか?
【ああ!うっぜ!いいから根暗女は大人しく帰れ!そして死ね!】
口の悪いアムに似た口調の髪が炎で出来てるように見える女性。アレが火の大精霊イフリートだろう。イフリートの周りにイフリートを手の平サイズの子供にしたような、ちっこいのもいる。
【ウザいのはアンタだし!アンタはバカだし!アンタこそ帰れし!そして死ねし!】
ちょっとギャルっぽい?口調の、髪が水で出来てる女性。アレが水の大精霊ウンディーネか。イフリートと同じようにウンディーネを小さくしたようなのが周囲に沢山いる。
察するにちっこいのは普通の精霊、火と水の精霊達だろう。
【お前なんかの加護もらっても役に立たねぇよ!数百年振りの良い男はイフリートの加護こそが相応しいんだ!】
【【【【そーだそーだ!】】】】
【役に立たないのはアンタの加護だし!数百年振りの良い男はウンディーネの加護こそ相応しいし!】
【【【【そーだそーだ!】】】】
ちっこいのがそーだそーだと叫ぶ度に力の波動のようなものがぶつかっている。その後に残っているのは水蒸気のみ。
どうやら火と水の精霊の力がぶつかった結果、水蒸気が辺りで発生しているらしい。
そして会話から察するに。イフリートとウンディーネはどちらが俺に加護を与えるかで喧嘩してるのか。
『そうみたいやな。どうするん?』
んん~……もう少し様子見で。
【大体アイツはサンが勇者にした男の番だぞ!じゃあサンと仲がいいイフリートが与えるべきだろうが!】
【【【【そーだそーだ!】】】】
【バカ言うなし!ジークxジュンも悪くないけどシルヴァンxジュンが最高カップリングだし!嫌がるジュンをシルヴァンが強引に押し倒すとか最高のシチュだし!だからウンディーネが与えるし!】
【【【【そーだそーだ!】】】】
………………………うん、そうか。
「メーティス!ハイパーメガ粒子砲スタンバイ!焼き払うぞ!」
「お、おおう!?突然どーした!?」
「よくわからんが何もしないなら屋敷に戻れノワール侯爵!」
いいや何もせんわけにいかんけん!あんなん百害あって一利なしじゃけん!世界から抹消したらぁ!
『いやいや、落ち着きぃやマスター。わいは友達になれそうな気がしてるでぇ。どっちも。是非語りたいわぁ。それにしてもいつの間にシルヴァンxジュン本が出てたんやろ。迂闊やったわぁ』
ほんとにな!あんだけ尻叩いたのにアイめ!懲りずに新作を出しやがるとは!
「おまたせ。どういうじょう、きょ!?あばばばば!」
「アイィィィ!てめぇ!いつの間に新作BL本を出してやがったこらぁ!」
「ノ、ノワール侯爵!止めないか!」
「アイシャ殿下に何をする!いくら婚約者でも許されないぞ!」
チィ!団長達の前ではお仕置き出来んか!
「よ、よくわかんないけど……ウチは新作のBL本出してないよ。出したのは多分弟子」
「……弟子?」
「そ。ようやく弟子…アシスタントの子が独り立ちしてね。最近デヴュー作が販売開始されたらしいよ。ウチはまだ読んでないんだけど」
……弟子はノーマークだった…不覚。てかアイも釘さしとけよ。
「……で。どういう状況?」
「…尻庇うな。どういうわけか精霊が集まって喧嘩してるらしい」
「ウフフ……火と水の精霊よ……」
俺を勇者に云々は省く。説明しても面倒な事になるだけだし。
「精霊が?それならば確かにこの不可解な現象の説明は出来るが…」
「精霊がこんな街中で暴れる事があるでしょうか?」
「兎に角、敵襲ではないのだな?何故精霊と解かったのか教えて欲しいがな」
それは秘密で。兎に角今は喧嘩の仲裁を。
「というわけで。レティシア、いやルナ。出番だぞ」
「ウフフ……………やらないとダメかしら………」
そんなに自信ないんかい。
いつも本作を読んでいただきありがとうございます。
去年入院してから一年が立ってました経ってました。何とか再入院せずに働けてます。
皆様も御体には御気をつけて。




