第305話 止められました
誤字脱字報告有難うございます。とても助かってます。
「「「「院長先生~!おかえりなさい~!」」」」
「みんな、ただいま」
帝国からの帰り道。ちょっくら寄り道してスッキリしてから六日後。
俺達は無事、王都ノイスに到着。真っ直ぐ屋敷には戻らず、先に孤児院に向かった。御土産もあったしね。
「へ~…此処がノワール侯爵が育った孤児院?意外と小さいのね」
「マルちゃん~失礼よ~」
公子…いずれ大公になる姫君からすれば一般的な家よりちょっと大きい程度の孤児院なんて、小さな小屋程度にしか見えないんだろうが…昔はカタリナも似たような事言ってたし。
「国営の孤児院ではなく、私個人で設立した孤児院ですから。友人らの支援と国からの補助金もありますけど」
「私は冒険者仲間からカンパを集めたりしたかな。ジーニは土地の選定…ドミニーは改装…いや改築か?まぁ、家の建て直しに協力して…元々は此処は何だった、ジーニ。…ジーニ?」
「ジーニなら教会に戻ったわよ。大司祭になったのだもの。忙しいのでしょ」
「ああ…あいつも大変だな」
「………」
「お前は本当にどうでもよさそうだな、ドミニー」
ドミニーさんはブラッディローズ討伐の際に手に入った素材の使い道を考えてるに違いない……おっと、そろそろ来るかな。
「ジュンお姉ちゃんだ!御帰りー!」「御土産!御土産ある…あれ?」
「「「「「「「ん?」」」」」」」
あれ?いつもの如く子供達のタックルが来るかと身構えていたのだが。何か固まって…ああ。
「ドロテア様、コンチェッタ様。どうかされましたか」
「「なんでもないです~」」フフン
「「「「「「「むぎぎぎ!」」」」」」」
何故か孤児院の子供達と俺と手を繋いでる皇女二人が睨み合っとる。
皇女二人は見るからに平民ではないから喧嘩を売るのはマズいと子供達もわかってる…とは思うが。あまり長居も出来ないし、サッサと離れるべきか。
「あ、院長先生お帰りなさい。ユウとジュンも御帰り。で、ママに御土産は?」
「…あるけど」
「お母さん…もう」
ジェーン先生は相変わらず、と。今更落ち着いた大人になられても反応に困るし、ジェーン先生はこのままで構わない、と今では思ってる。
『院長先生みたいになる事は無いと見限ってるって事やのうて?』
…オブラートに包んで差し上げて。
「ところでピオラ…先生は?ルー達の姿も見えないけど」
「ルー達はジュンとこのメイドさんとの訓練に行ってるわよ。ピオラは今日はお休み。屋敷で待ってるんじゃない?」
…ピオラが屋敷に居るのは良いとして、ルー達はメイドと訓練?メイドって…カミラ達だよな。
「あたいらが頼んだんだよ。あたいらが居ない間鍛えてやってくれってな」
「なんだかやりたそうにしてたもんね~」
「気合い入ってた」
「すぐに屋敷に帰ろうか」
そう言えばルー達の指導に混ざれない事を納得いかないって顔で見てたな。このままではルー達が生気を失った眼になる未来しか見えない。
なんでよりによってカミラ達に任せるかな。
「いや、ジュン。先に王城へ行った方が良さそうだぞ」
「ローエングリーン伯爵から使者が来られましたわ。直ぐに登城するようにと。勿論殿下先生も」
「あ~…多分、ママが結果を報せろって急かしてんのね」
「寄り道した事もバレてるんじゃないかな。これ以上遅くならないように釘を刺したって感じじゃない?」
アイとユウの予想通りなんだろうな…事実出来る事なら行きたくない…というか忘れたい。
「……じゃ、行ってきます。ジェノバ様方は屋敷に。一緒に行くのはアイとクライネさん達で」
「あたしも行く――」
「マルちゃん、私達はお忍びで来てるんだから~事前告知も無く挨拶に行ったら騒ぎになっちゃうわよ~」
「……そしたら大公様の耳にも入る」
「うっ…」
それは遅かれ早かれだと思うが…救世主認定の話だけじゃなく公子一行の件もあったな。預かる皇女が増えた事も…レイさんの事だけで十分なんだけども。
どうしてこう厄介事ばかり舞い込んで来るのか。
『巻き込まれたんもあるけど大半はマスターの行動が…って、もうええか。早い事城に行った方がええんは間違いないと思うで、マスター』
へいへい…わかってますよ。
「レイさんの新情報が無いかも聞いて来るから、院長先生も休んでて」
「……ありがとう、ジュン。お願いするわね」
と、言う訳で王城へ。
道中の熱い視線は華麗にスルー、城内を歩いてる時のナンパもクライネさん達に捌いてもらいーの、早歩きしーので。
陛下との謁見も根回しされててスムーズに案内された。案内された陛下の執務室には宰相とアニエスさんとソフィアさんが。
アニエスさんとソフィアさんの顔色が悪いのが気になるな…こっちでも何かあったか?
「来たか。何事も無く…なんて事は無いだろうな。だが無事なようで何よりだ」
「ただいま、ママ」
「御呼びとの事で参上しました、陛下」
「うむ。早速だが何があったのか細大漏らさず説明しろ。遠回しな表現等で誤魔化そうとするなよ」
初っ端からデカい釘を刺されました。
…皇帝陛下や教皇猊下に知られている以上、女王陛下に話さないわけにもいかないから最初から話すつもりでしたよ、ええ、本当に。
「―――以上です」
「………まさか、本当に使徒だったとはな」
「いえ、陛下。俺は使徒ではなく救世主になる予定の――」
「同じ事だろうが。殆どの人間にとっては使徒だ救世主だなんてものは呼び方の違いに過ぎん。はぁ…お前、確か捨て子だったか」
「え?あ、はい」
陛下に俺が捨て子だったなんて話したっけ?ああ、アニエスさん辺りから聞いたのか。
「お前が救世主云々は当然秘密にするが捨て子というのも秘密にしておけ。救世主の出自が不明なんてバレれば面倒臭い事を言いだす阿呆共が増えるのは間違いないからな。全員によく言い聞かせておけよ」
ああ…自称俺の母親、親戚が集まって来るわけね。王国内だけでなく諸外国からも。平民貴族問わず。
そりゃ確かに面倒臭い。
「で、皇女を連れ帰っただけじゃなくお忍びで来てた公子まで……お前は厄介事が好きなのか?それとも厄介事がお前を好きなのか。どっちだ」
「少なくとも俺は…あ、いえ。私は厄介事を好きではないですし、好かれるのも御免被ると…」
「公式の場でも無いし言葉使いは多少崩れてても構わん。今更気にするな。……更になんだ、エロース教本部の移転だと?しかも我が国に。エロース様は我が国を宗教国家にするおつもりか?」
「殆ど思いつきとノリで言ってるようでしたので……」
「帝国はともかく……他国との摩擦が起きるのは必至でしょう。早急な対策を講じる必要があるかと」
「ああ……お前、こんな重要案件を抱えておきながらよく寄り道なんてしたな。普通大急ぎで帰って来るだろうに」
「………俺も現実を直視したくなかったんですよ」
「器がデカいんだか小さいんだか……」
「肝が小さい奴ならば青い顔して帰って来るでしょうから、大きいという事でよろしいでしょう」
……それって褒めてるんですかね、宰相殿。褒めてる?そっスか…
「…えっと、陛下。俺からもお聞きしたい事が。レイさん…失踪した神子の事で何か情報はありませんか」
「ああ……帝国の宰相の言うようにドライデンで目撃された、というのはこちらでも情報として挙がっていた。事実だろうな。で、そのドライデンだが……お前も行くつもりか?」
「はい」
間違いなく院長先生は行くからな。魔王も居るとなると俺が行かないと話になるまい。レイさんを何とか出来るとしたら俺しか居ないわけで――
「止めておけ」
「――はい?何故です」
まさか止められるとは。この件に関しては救世主認定が後押ししてアッサリ許可が出ると思ってたんだが。
「ドライデンは今は誰にとっても危険な国になってる。お前に限らず、誰が行くのも止めておけと忠告する処だが……お前はそれだけが理由ではない」
「……というと?」
「ベルナデッタ殿下が新たな予言を出されたんだ……」
「ジュン君が、その……死んでしまう未来を」
………………なんて?
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