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第304話 スッキリしました

「ハーハハハッハッー!アッハッハッハー!ヒィーハァー!」


『えらいハイテンションやな…ちょっと気持ち悪いくらいに』


 折角いい気分なんだから水差すでない!


「ほぉーれ!次ぃ!ヒャッハー!」


「…ジュンってば相当欲求不満が溜まってたんと違う?」


「……かもなぁ。最近は冒険者活動は出来てなかったしよ」


「教皇とか勇者とか皇女とか。不要なお客さんが多かったもんね」


「減ったと思ったら増えたし」


「それって」


「私達の事でしょうか…」


 後ろでなんかゴチャゴチャ言ってるが!次だ、次ぃ!


「あ、ステラ。ボスは見つけた?」


「ああ、当然だ。ジュン、アッチに居るデカいのが群れのボス、って最後まで聞かんか!」


 レッドフィールド公爵領に発生したAランクの魔獣…正確には一匹の魔獣に支配された雑多な魔獣の群れ。規模の小さいスタンピードのようなもの。


「そのボスがコイツ!植物型魔獣ブラッディローズ!魔獣を魅了するフェロモンを発し従え吸血し食糧にもする性質の悪い奴!群れの数次第で討伐難度は変わり今回の規模だとAランクになります!因みにブラッディローズ自体はBランク魔獣になります!」


『誰に説明しとるんや…それにしてもフェロモンで従えるって…マスターみたいな魔獣やな』


 だーれが魔獣じゃい!勿論Sランクなんだろうな!


「ギィィイ!」


「おお!自己紹介も済んだ事だし早く退場したいか!そうかそうか!ではお望み通りに!」


『そいつはそんなん言ってないと思うで…魔石は根っ子に近い幹の中央にあるで』


 そこは破壊せずに倒せって事ね!お任せオッケー!では植物型魔獣らしく炎が弱点らしいのでー!


「炎でサックリ!と、見せかけてー!バラッバラになるがよい!」


『薔薇だけにってか?』


 フッ!敢えて弱点である炎を使わず剣で倒す!圧倒的実力差があってこそ出来る俺Tueeee!フハッハッハー!久しぶりに最高の気分やでー!


「本当に討伐難度Aランクの魔獣の群れを一人で…流石あたしの夫!」


「さ、討伐も終わったし、帰ろうか」


「ちょっとあたしを無視しないでよ!」


 さてさて。改めて状況を説明すると、だ。


 アム達が集めて来たレッドフィールド公爵領に出没したAランク魔獣の情報。王都への帰り道から少し外れるものの、そう遠回りでもないのでやっちゃう事に。


 レッドフィールド公爵軍で討伐しようと軍の編成をしてたようだが、俺らでかっさらったわけで。あ、勿論公爵に許可はもらっているが。


「男に、それも一人で魔獣の群れを討伐させるなんて何を考えてるんだと思ってたけど…驚いたわ」


「本当ね~噂は本当だったのね~」


「……バトルマニア」


「それも本当だったわね~」


 それもってなんじゃい。バトルマニアってのはあまんじて受け入れるが。その他は内容によっちゃ断固否定すっぞ。


「え。院長先生の息子さん、ドライデンに居るのか?」


「確かなんですかぁ?」


「わからないわ。でも他に情報も無いし、行って見るつもりよ」


 道中、アム達と院長先生らの話題になるのはレイさんの事。やはり院長先生はドライデンに行くつもりのようだ。あの国って、今はどうなんだろうか。内乱が終わって以降の情報が余りないな。


「ドライデンか…あの国は改革の最中だと言うのに外に情報が流れて来ない…というのはお母様に聞いているが、イーナはどうだ」


「わたくしも同じですわ。ブルーリンク辺境伯なら何か知ってるかもしれませんわね」


「ならウチから手紙出しとくね。ドライデンの情報と…可能ならレイさんの情報も渡すようにって」


「お願いします、アイシャ殿下」


 事情を知ってるだけに、皆院長先生に協力的だ。勿論、俺だって協力する…のは当然なんだが。魔王の件を知ってる俺からすればレイさんの事は俺にとっても頭痛の種だ。


 だがまぁ…レイさんについて話してる組はいいのだ。


 良くないのは……無理に一台の馬車に詰めて乗ってるというのに阿呆な事してるこの二人。


「フッ。近衛騎士を辞めたと言っても傷跡が増えてないだけで今までのが消えたわけじゃない。それに筋肉が弛んで逆効果になってるんじゃないかい?」


「そんな事はありません!騎士を辞めても鍛錬はかかしてませんから身体は引き締まったまま!いえ、一層磨きが掛かっているのです!貴女こそ運動不足なのでは?足がむくんでませんか?」


「失敬だな。マッサージは定期的に受けているしアイシャ殿下考案の体力作りのメニューは私もやっている。よく見たまえよ。この腰のくびれを。細くなったから対比で足が大きくなって見えてるだけさ」


「ぐぬぬ…」


 クリスチーナとジェノバ様だ。この二人は合流して顔を合わせてからというもの、暇さえあればこうやって競い合っている。


 どっちも美人でいいじゃない…って言ったら矛先がこちらに来るので見て見ぬふりをしてるのだが。馬車の中で全裸になろうとするんじゃない…………クリスチーナ、その下着は新作?ユウのデザイン?ユウ、恐ろしい子…


「フッ。またしても私の勝利で確定したようだね」


「うっ………うぐぐぐ!わ、私だって同じ下着を着ければ……」


「私と同じ物を?プライドが許すなら好きにすればいいんじゃないかな。お買い求めはぜひエチゴヤ商会まで」


「くっ…うううう!」


 今回もクリスチーナの勝利らしい。似合うと思うけどね、ジェノバ様にヒモパン。


 で、何故か争っているもう一組が。


「………」


「………」


「ねぇ、カトリーヌ。ターニャはなんで絡まれてるの?」


「さあ~?でも一方的に絡まれてるわけじゃなくて、ターニャちゃんも思う所があるみたいだけど~」


 そう、どういうわけか睨み合い、火花を散らしてるのはファウとターニャさん。特に何事も無くそうなっていたので原因がわからない。


「…なんか似てるから」


「毒舌無口キャラは二人も要らない」


「「「ああ~……」」」


 なるほど、確かに二人のキャラは似てる。ポジションも三人組の魔法使い枠でかぶってるし。同族嫌悪…に、なるのか?だけどクリスチーナとジェノバ様の二人とは違って勝負をするつもりは無いようだ。


「馬車内じゃ危険だから」


「……決着は後日」


「勝負はするのか…危険って何する気だ」


「決まってる。魔法で勝負」


「……無口で勝負は出来ない」


「無口って言う程じゃないですもんね…」


 言葉数が少ないだけで。勝負するのは止めないけど、怪我はしないように。


「それにしても~賑やかでいいですね~仲良く出来そうな人ばっかりだし~」


「そうですか?ツヴァイドルフ皇家の人も居ますが」


「ツヴァイドルフ皇家を嫌ってるのはマルちゃんだけで~私とターニャちゃんは特に何も~。そちらの……ファウちゃん?とも仲良くしたいと思ってますよ~私は~」


 どうやらカトリーヌさんは主や友達が敵対視してるから自分も、とは考えてはいないらしい。見た目通りに穏やかな性格みたいで何より――


「それに自分に火の粉がかからないなら他人の喧嘩って近くで見るに限ると思いません~?クリスチーナさんとジェノバさんの争いとか~見ててとても面白いですよね~」


「いい性格してますね、あんた」


 前言撤回。なかなかの悪趣味やで。


「カトリーヌは腹黒だから。見た目に騙されないように気をつけなさい。あたしの夫なんだからカトリーヌの夫にもなるかもしれないし」


「え~、やっぱりそうなるの~?別にいいけど~他の奥さんとも仲良く出来そうだし~」


 夫を共有するのは国は違えど同じ、か。その前に貴女と結婚する気はありませんけども。既に結婚してる体で話すなし。


「まぁまぁ~そう結論を急がないで~もっとお話しして親睦を深めましょ~マルちゃんもノワール侯爵だけじゃなくて奥さん達と仲良くしてた方がいいわよ~」


「そ、そうね…円満な結婚生活の為にも必要ね」


 ……仲良くする分にはいいですけどね。


 それにしても、こんな穏やかな気分で旅をするのは久しぶりな気がする。賑やかなのはいつも通りなのに、何故だろう。


『そりゃ久々に俺Tueeeeして不満が解消されたからとちゃうか。スッキリ爽快な気分なんやろ』


 ああ、なるほど。つまり俺Tueeeeは心の健康の為にも定期的にやる必要があるという事だな。うんうん。


『…それは好きにしたらええけどな。確実に気が重くなる問題があるわけやし』


 ……いい気分なとこに水差すんじゃないってば。

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