第297話 爆発しました
前回のあらすじ。
どっちが良い女か決めるらしい。
嫌な予感しかしないからやめて欲しいんですが。
「どっちが良い女か?フッ…」
「な、なによ…その不敵な笑みは」
「いえね。フィーアレーンの公子様は被虐趣味でもあるの?わざわざ自分から惨めに敗北したいなんて。ウチには真似出来ないわ~」
「なっ…な~んで最初からあたしが負けるって決まってるかのように!」
おお、煽る煽る…アイって格闘技やってるにしてはインドアな趣味だったりするし挑まれたら必ず迎撃するくらいに好戦的だったり。しかし王女として教育を受けたからなのか空気は読めるし相手の行動の裏を読む事も出来る。
だから今、この場では空気を読んで勝負を受けたらどうなるか想像してくれ。頼むから。
「ちょっと、アイさんや」
「だって誰がどう見てもウチの勝ちじゃない?始める前から勝つのがわかってる勝負なんてやる意味ある?ウチは弱い者いじめ嫌いだし~」
「ど、何処が負けてるってのよ!あたしが負けてる所なんて何一つ――」
「先ず資産。ウチ、これでもかなり稼いでるからね。王女として、じゃないわよ。『エロの伝道師』ってペンネームで本を出してるの。結構売れてるのよ」
「エロの…って、えー!」
「え~嘘~アイシャ王女が『エロの伝道師』先生~?」
「………サインください」
Oh…やはりこの三人はアイのファンだったらしい。いや、わかるよ?娯楽の少ない世界だから漫画が普及するのが速いってのは。
でもあの内容だぞ…しかも女の子が熱中していいものでもないだろ。
『そら偏見やでマスター。日本でもエロ本を愛読しとる女子は沢山おったやろ。公けにしとらんだけで。ちなみにわいも愛読しとるで』
知っとるわい!
そしてお前が愛読しとるんが一番の問題作っちゅう事もな!
「てか、そうじゃなくて。アイさんや、不味い事になるからそろそろ――」
「そ、それが本当なら!確かにお金は持ってるでしょうけど、それだけで女の価値が決まるわけじゃないわよ!」
「嘘なんかつかないわよ。次に武力…は説明不要よね。ウチには闘技大会優勝という実績がある。貴女は何かある?」
「ぐっ…そ、それは…」
「マルちゃんに実績…何かあったかしら~ターニャちゃん」
「……マルレーネは足が速い。城じゃ一番」
「それって武力と言っていいのかしら~」
「あんた達もっと何かひねり出しなさいよ!」
恐らくひねり出してそれじゃないでしょうか。
いや、足が速いって良い事だと思うよ。戦闘でも役に立つだろうさ。でも闘技大会優勝の実績を上回る事じゃないよね。
まぁ美脚なのは認める。
「いやいや、だからそうじゃなく。アイ、本気でそろそろ――」
「次に知識…は、互角かもね~ウチは王女として教育を受けてるけど貴女も公子としての教育を受けてる筈だし。負ける気はしないけど。美貌に関しては…言わないであげるわね」
「う、うぐぐ………」
「フッ……敗北を悟ったようね」
そこで胸を張って勝ち誇るアイ。それは俺も認めるよ?背はマルレーネ様の方が高く脚も長いがトータルで見てアイの方がスタイルは良いと認めるさ。
アイはまだまだ成長するし、背丈も脚の長さもそこまで差があるわけじゃない。とある部分で圧倒的差でアイの勝ちだし。
だから、だ。
「アイ……いや、二人共。この話は此処までに――」
「あたしはまだ負けてない!資産と武力に関しては百歩譲って負けてるとして!美貌……美しさに関しては認めないわ!胸の大きさで美しさが決まるわけじゃないわよ!バランス!バランスが大事なのよ!デカければいいってもんじゃないのよ!」
「ほほ~う。それこそ間違いなくウチの勝ちだと断言出来るけど。どうやって勝負を決めるのかしら」
「と、投票で決めましょう!この街に居る男を集められるだけ集めて美しいと思う方に票を入れてもらうのよ!それに勝った方がノワール侯爵に相応しい女!」
「いいわ!受けて立とうじゃない!」
「ちょっと待て~い!」
恐れていた展開に!その後の展開が眼に見えるわ!
「そういう話であれば我々も参加せざるを得ませんなぁ!」「まさか御自分達だけで全て完結させるなど仰りますまい?」「此処は帝国、御二人は王女と公子とは言え他国の人間!」「御自分の意思が全てまかり通る事は無い事くらいは御分りですよね」「勝者はノワール侯爵の新たな婚約者になるという事でよろしいな!」
「「……え」」
「え じゃねぇ!こうなる事は予測出来ただろうが!」
予想通りの展開過ぎるわ!そしてこの流れはこの場にいる人間だけじゃなくお茶会に参加出来なかった貴族や商会の人間にまで広がり平民にまで及ぶ!下手したら帝国中の人間が集まって来るんだろ!知ってたよ!
『それどころか王国……いや世界中からも人が集まって来て世紀の大イベントにまで発展しそうやなぁ。ハハ、ワロス』
やめろ!そんな怖い未来予想図を語るな!
「そ、それは是非参加しないと!」
「ああ、そうだな!ブルネッラも!」
「はい!」
お前らもかーい!あんたら牽制役に回るとか言うてなかったか!何あっさりと手の平くるりしてんねん!
「そういうわけだベッカー辺境伯!」「早速手配したまえ!」「参加は貴族のみに限りたまえよ!」「人手が必要なら貸してやる!」
「「「「「さぁ!」」」」」
「……………」
ああ……またしてもベッカー辺境伯に飛び火が。ほんと、ごめんなさい。このお詫びは必ず……
『いやお詫びとか考える前にや。何とか事態を収拾する方向で考えな。無理っぽいけど。何とか出来るとしたらマスターだけやで』
ハッ!そうだな、何故アッサリと諦めてるんだ俺は!
「取り合えず…ベッカー辺境伯!何もしなくて結構ですからね!これ以上、胃に負担をかける事は――ベッカー辺境伯?」
「ちょっと何よ、この騒ぎは!宰相、見てたなら説明しなさい!」
「説明は可能ですが姫様。ベッカー辺境伯の様子が変です」
「変?……ちょっとベッカー辺境伯、どうしたのよ」
此処で皇帝陛下と皇女達も集合……したのはいいが。ベッカー辺境伯の様子がおかしい。
俯いてずっとブツブツ言ってる………だけでなく。何か異様な力を発してるような……この感覚、何処かで覚えがあるぞ。
『アレや。王国会議でベルムバッハ伯爵らがおかしくなった時と似とるわ。何らかの力がベッカー辺境伯に干渉しとる』
……アレか!すると何者かがマイケルの色欲の魔王と同様の力でベッカー辺境伯に干渉してるのか!
『そうなるな。となれば、や。マスター、暴れ出す前に眠らせるんや』
だな!今なら何もしてないからベッカー辺境伯が咎め――
「お前らぁぁぁぁぁ!!!!いぃぃぃぃ加減にぃぃぃしろおぉぉぉぉぉうぅぅぅぅ!」
カッ!!!!
「「「「「えええええええ!」」」」」」
ばっ、爆発しましたけど!?怒りが爆発したって事じゃなく言葉通りに爆発が起きましたけど!?
「ゴホッゴホッ……皆、無事か!」
「う、ウチは大丈夫……でも、何人か倒れてるっ」
『ベッカー辺境伯の近くに居た人間がヤバいな。ベッカー辺境伯の異様な空気に押されて距離を取ってたんが幸いして死人こそ出てないけども』
えらいこっちゃやないか!目立つとかなんとか言ってられんな!
「さ、宰相!回復魔法を使える者を大急ぎで――ノワール侯爵?」
「ほう!流石ノワール侯爵ですな。回復魔法もお手の物とは。あっと言う間に全員治してしまいましたな」
取り敢えず、これで死者は出ないだろう……メーティス、肝心のベッカー辺境伯は?
『気絶しとるだけやな。何者かの干渉も無し……今回は何者かに操られたっていうより、爆発物に変えられたって感じになるんかなぁ?データが足りんから確定はできんけど』
確かに結果だけ見ればベッカー辺境伯を爆弾に変えたようなモノだが…何処に居る何者の仕業かは知らんが、遠距離に居ながら他人を爆弾に変えられるのなら……危険だな。
どう対策すべきか……




