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第295話 理由が出来ました

「とーにかく!私達はこれからお茶会なの!招待されてない人は御引取りを!ていうか国に帰れ!」


「い・や・よ!ホントはお茶会なんて興味無かったけど、ノワール侯爵様が参加されるなら話は別!金なら払ってやるから有難く受け取ったら~?」


「お金が欲しくてお茶会開いてんじゃないわよ!大公国の公子だからって我儘が通るなんて思わない事ね!」


「ざ~ねんでした!あたしは今はお忍びで来てるから公子としての立場は関係ありませ~ん!必要なら遠慮なく使うけどね!」


「「「「「………」」」」」


 皇帝vs公子、絶賛生ライブ中……掴み合いの殴り合いにこそなっていないが、直にそうなりそうな雰囲気。仲が悪いというのは本当らしい。


「公子じゃないなら遠慮は要らないわね。宰相、騎士に言って街の外に放り出してしまいなさい」


「人の話聞いてないの?必要なら公子としての立場は遠慮なく使うって。ツヴァイドルフ皇家は他国の公子を問答無用で追い出した無礼者だって広めてやるわよ」


「私を舐めるんじゃないわよ!そんな脅しに屈するもんですか!」


「あら強気ね。自国の貴族にビビって外出を控えてた小心者の癖に」


 ……そろそろ止めた方がいいかなぁ。俺が止めた所で言う事聞いてくれるかは微妙だが。女同士の喧嘩はこの世界じゃよくある事で、見慣れてしまったけれど居心地は決して良くないし。早い事終わらせて欲しい気持ちでいっぱいだ。


 まして皇帝と公子の喧嘩なんてな。


「しかしフィーアレーン大公国の公子がジェノバ様の異母姉妹で仲が悪い事は以前お聞きしてましたが。皇帝陛下と一番仲が悪いんですか?」


「ええと……はい。自分が一番眼の敵にされてるとは思いますけど……」


「マルレーネ様は皇家以外の人間には人当たりがいいのですが。皇家にはそれはもう……特に異母姉妹のジェノバ様と同い年の姫様を嫌っているようで」


 つまりツヴァイドルフ帝国が嫌いというよりツヴァイドルフ皇家が嫌いだと。元々はマルレーネ様とジェノバ様だけでなく、大公家と皇家は親戚だったというのに。こじれたもんだなぁ…父親を奪われたんだから無理もないけど………あれ?


「あの、聞いていいのかわかりませんが……」


「なんですかな。ノワール侯爵が知りたいのでしたら何でも答えますとも。姫様達のスリーサイズから初潮を迎えた年齢まで。何でも答えれますとも」


「なんでアンタがそんな事知ってんだよ……」


「おや。カサンドラ様にミネルヴァ様。居たのですか」


「最初っから居たよ…何、アタシってそんなに影薄い?」


「どーでもいいから早くベッド~…」


 御二人の影が薄いというより、目立つ人が多すぎるってだけじゃないですかね……そんな事より、だ。


「あの、ジェノバ様とマルレーネ様の御父上はどうなったので?帝国に奪われたと言っても生きているならそこまで憎むような事でもないような…」


 何せ男は共有するのがこの世界の常識、現状だ。大公の夫だろうが皇帝の夫だろうが同じはず。現にアイにだって異母姉妹が何人かいる筈だしな。


「ああ…何となく察しはついているのだと思いますが、既にお亡くなりに」


「………死因はなんです?」


「それは、その…………腹上死、だそうです……」


「はい?」


「つまり子作りのし過ぎが原因らしいですな。先代皇帝には夫が大勢いましたが、その中で一番イケメンがジェノバ様とマルレーネ様の父君で。それはもう大変な人気で。毎晩、いえ昼も夜も問わずにひっきりなしに求められた結果、帰らぬ人に」


 うん、そりゃ恨まれるわ。そりゃジーク殿下を渡せと言われたら戦争になるわ。本当に酷い皇帝だったんだな、先代は。


 そして俺には他人事に思えない。俺にも同じ未来が待っているような予感が…


『マスターは子作りで死ぬような身体やあらへんから平気や。世界中の女を孕ませても死ぬ事はあらへんから安心しぃ』


 …何一つ安心出来んがな。


 しかし、そろそろ喧嘩を止めたいが。話進まねぇし。


「ですな。お茶会までまだ多少の時間はありますが、皆様準備もありますし。教皇猊下もいらしてる事ですしな」


「………気付いてもらえていたようで、何よりです」


「このまま放置かと思ったぞ」


「そんな事よりも、です。御二人の喧嘩を止めるのに、協力をお願いできますかな、ノワール侯爵」


「「そんな事…」」


 戦争が始まって距離を置かれたエロース教とは関係修復を始めたばかりなのに…いいのかな、そんなおざなりで。


 例のアーティファクトで最大限の譲歩を引き出すつもりなんだろうけども。


「で、協力とは?内容によっては御断りしますが」


「大した事ではありませんとも。一緒に写真を撮らせていただくだけですな」


「それくらいなら構いませんが…それで止まります?」


「確実に止まりますな。それでは……皆様!折角集まったのですから集合写真など如何ですかな!」


 ああ…全員で写真を撮るから喧嘩してないで笑えって?そんな事で止まるんかいな。


「はぁ?なんでこいつと写真を撮らないとなんないのよ」


「それはあたしのセリフ。宰相はいいけどツヴァイドルフ皇家と写真なんて吐き気がす――」


「喧嘩する悪い子はノワール侯爵とツーショット写真を撮る権利を失いますので。この魔法道具は私の私物ですからな。それでもよろしいですかな」


「折角だからドレスアップしてからにしましょう。どうせお茶会が始まる前に着替えるのだからいいでしょ」


「あたし達も着替えるわよ、カトリーヌ、ターニャ」


「……………」


 いいけど。一緒に写真撮るくらいいいんだけど。ツーショット写真て。聞いてませんけど?あと、使用人や護衛の皆さんも髪の乱れや身だしなみを気にしてますけど、貴女達も撮るの?


「行きましたな。やれやれ…しかし、次回からは帝国ではなく王国側で行った方が良いかもしれませんな」


「……主にベッカー辺境伯のために、ですね」


「ですな。姫様にすり寄って来る貴族が減って、帝国貴族との関係改善が遅れるかもしれませんが、ベッカー辺境伯を敵に回しては意味がありませんからな」


「相当に荒れてたもんね。ウチも心配になるくらいに」


「では、そのベッカー辺境伯もお誘いしますかな。忙しくて御断りされるかもしれませんが。誘わなければそれはそれで怒りそうですしな」


 写真を撮ってる暇があるなら貴族共の対応をしろって怒鳴りそうだな。お茶会までに捌けるのかね。


「そうですな…ふむ…パシャっとな」


「……なんです?」


「飛び入り参加をしようと集まった貴族の大半は参加出来ませんからな。せめて手土産の一つでも持たせてやろうかと。パシャっとな」


「それで何故俺を撮るんです」


「彼女らの目的はノワール侯爵ですからな。ツーショット写真までは無理ですが、アップ写真くらいは持たせてやろうかと思いましてな。勿論、タダではありませんが。パシャっとな」


 ……俺の盗撮写真、フランをとっちめてもまだ売られてるみたいなんだけどな。既に相当数売れてるみたいだけど、需要あんのかね。


「てか、無断で撮らないでくださいよ」


「これは失礼。御礼はちゃんとしますから御安心を」


「お金ならいりませんよ」


「そうですか。では情報ではどうですかな」


「情報?」


「王都ノイスで行方不明になった神子…探しておられるのでしょう?」


「それって…」


 全員の視線が院長先生に集まる。行方不明になった神子と言えば、レイさんしかいない。


「レイを…あの子の居場所を知っているんですか!?」


「……あの子?まぁ情報が入ったのは偶然なのですがな。ドライデンの王都で、神子を見た、と。そういう情報がありましてな。その行方不明の人物だという確証はないのですが。もし情報が真実なら可能性はかなり高いのではないのですかな」


 ドライデン…あの国にはエロース教の教会が無いはず。かつて存在した跡地なんかはあるが、赴任してる神子なんていないはずだ。


「ドライデン……あの国にはエロース教の支部、教会がありません。情報はほぼ挙がってなかったのですが…」


「だからこそ、漏れてたんだろうな。しかし、何故帝国の宰相がそんな情報を知っている」


「宰相だからこそ、色々な情報を集めているのでして。ましてあの国は内乱が終わったばかり。まだまだ多くの国が注目しているのです。その情報によると…あまりいい状態とは言えないようですな」


 ドライデン…カミラ達の一件以来、関わりが無くて注目してなかったな。


 あの国にレイさんが居る?…となれば、行かなきゃならないのか……ドライデンに。

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