第286話 決着しました
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「他の勇者の能力についてわかるか?」
ベルムバッハ伯爵領に向かって出発する前に。レティシアに勇者についておさらいを聞いていた。
曰く、大精霊の加護を得。勇者となった者は自身の能力が強化されるだけでなく他者…味方の能力をも強化するのだという。
月と夜の大精霊ルナに選ばれた勇者は味方の精神と魔力を強化する。
太陽と光の大精霊サンに選ばれた勇者は味方の全能力を強化する。ただし日中に限る。
大地の大精霊ノームに選ばれた勇者は味方の体力と回復力、土魔法を強化する。
風の大精霊シルフィードに選ばれた勇者は味方の速さと技、風魔法を強化する。
雷の大精霊ヴォルトに選ばれた勇者は味方の力と速さ、雷魔法を強化する。
水の大精霊ウンディーネに選ばれた勇者は回復力と技、水魔法を強化する。
火の大精霊イフリートに選ばれた勇者は力と技、火魔法を強化する。
「つまり勇者とは個人の戦闘能力に秀でた戦士としてではなく、軍を率いる指揮官、或いは指導者として求められる存在という事か」
「ウフフ……鍛えれば勇者個人の能力も一騎当千…並の騎士じゃ束になっても敵わない存在になれるわよ…鍛えれば」
…今の男達には期待出来ないって事だな。まぁ、その場に居るだけで味方を強化出来るのだから十分と言えば十分か。
「あとは…ああ、海の大精霊ネレイドの加護については聞いてなかったな」
「ウフフ…あの子の加護は特殊なのよ…『海の勇者』の能力はね―――」
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「うぉらあああ!今の俺は!絶!好!調!であ~~~る!」
『…何処の艦隊総帥やねんな。でも良い調子やでマスター!』
今の俺には『月夜の勇者』と『太陽の勇者』の能力の御蔭でパワーアップしてる!ベルナデッタ殿下に回復してもらって身体的にも精神的にも絶!好!調!
だが!しか~し!有利になった反面、問答無用でアンラ・マンユを倒す手段も封じられたという事実もある!
『それやると周りに居る人間に犠牲が出る可能性が高いもんなぁ。上手い事アンラ・マンユを空中に放り投げて空に向かって攻撃、とかせんと。かなり限定されてもうたな』
だよな。
仮に岩山を消したように空から大地に居るアンラ・マンユに向けて最大出力のビームキャノンを撃った場合…
『大地に大穴が空く…だけで済めばええな。地盤沈下が起きたりして地形が変わるとか全然ありそうや。地下水脈まで貫いてクレーターが湖に早変わり…流石にマントルまでは到達せんけども』
そもそも今のアンラ・マンユにビームキャノンを当てるのは至難だしな。もっと別の…方法は、と。
何かないか、相棒。
『このまま攻撃を続けて削っていくんが一番無難やな。二回に渡る自爆攻撃でかなりエネルギーを消耗したみたいやし。わいの見立てではアンラ・マンユのエネルギーは既に五割近く消耗しとる。それに…気付いとるかマスター』
ああ、うん。アンラ・マンユの角と眼だろ。
『どういうわけか再生してへんな。自分から引き抜いたからか自爆攻撃に使ったからか。出血は止まっとるから、まるで再生してないってわけでもなさそうやけども』
あの自爆攻撃は強力な反面エネルギーの消費が激しいし、使用した部位も簡単には再生しないというデメリットがある、か。
自爆攻撃は使えても後一回が限度ってとこだな。
「うぅぅ…このままじゃ、このままじゃ……うわぁぁぁぁぁぁぁ!死ね!死ね!死ね死ね死ね!死んでよぉぉぉぉぉ!」
「…嫌だね!」
俺も決定打に欠ける状態ではあるが追い詰められているのはアンラ・マンユ。
奴の焦り様から自爆攻撃以上の手は――
『油断したらあかんでマスター。アイツは一度は追い詰められて逃げ出してパワーアップしとるんや。また同じ手段を取らんとはかぎらん。此処で確実に仕留めるんや。でないと……』
…暴食の魔王の能力でパワーアップを図るってか。色欲を喰らったように、他の勇者を狙う、か。レイさんが狙われる可能性があるって事ならば、だ。逃げるって選択肢を取られる前に仕留めたい。
『勇者だけを狙うわけでもないやろしな。回復目的でただの一般人を狙う可能性も十分に……マスター!』
「…アハハ!美味しそうなのみっけ!」
こいつ!逃げるじゃなく喰いに行く、を選びやがった!狙いは…カタリナ!?いやエルリックか!
また赤ん坊を喰い殺そうっていうのか!今度は俺の眼の前で!
そんな事……させるか!
「な!こっちに来…る?」
「だ、大丈夫ですカタリナ殿!僕が居れば……あれ?」
「ウフフ……止まったわね」
「う、うぐぐ……う、うごけ、ない……」
「うぅ……おぎゃああ!」
…何故、止まった?いや、止められた、のか?誰かがアンラ・マンユを止めた、のか。
アンラ・マンユはクレーターの上に居るカタリナに抱えられたエルリックに向かって飛び、空中で停止している。
身動きすら封じられているようだが…誰がやっている?どんな力だ?
『……これは良い意味で想定外やなぁ。流石やでマスター』
…お、俺?俺がやってるのか、アレ。
『せや。マスターが新しい能力に目覚めたんや。土壇場で新たな力に目覚めるとか。主人公してるやん、マスター。よ!日本一!』
いや異世界で日本一ってお前…俺が何の力に目覚めたって?
『超能力、或いは念動力…サイキック、エスパー。神通力でもええかもな……おっと、アンラ・マンユから意識を逸らしたらあかんでマスター。アイツを止めてるんはマスターの意思や。動くなって念じて一切の動きを封じるんや』
「うぐぅぅぅぅ!こ、この!動け!動けよぉぉぉぉ!」
お、おう……超能力、ね。何とも都合のいい能力に目覚めたもんだけど…これも神様の御手製特製ボディの御蔭ってか。
『…いんや、違うわ。特製ボディに備わってた能力なら、わいも使えそうなもんやけど………うん、わいには使えへん。これは多分、マスターの魂に眠ってた能力や』
俺の魂に眠ってた能力?俺に超能力の才能があったって事か。
『地球じゃ目覚める事はなかったと思うけどな。…レティシアから聞いた『海の勇者』の能力、覚えとるか』
……ああ。確か『海の勇者』の能力は―――
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「ウフフ…あの子の加護は特殊なのよ…『海の勇者』の能力はね…海では絶対に溺れなくなるし海に居る間は海が荒れる事も無い。味方も同じよ」
「なにそれ。すっげぇ微妙」
船乗りには垂涎の能力かもしれんが……限定的過ぎる。海軍の重鎮、ポラセク家なら欲しがりそうだが。
「ウフフ……それだけじゃないわ。海は多くの生命が生まれた場所……だから魂の揺り籠を象徴する……『海の勇者』のもう一つの能力は魂を揺さぶって魂の力を目覚めさせる、よ。…誰でも必ず目覚めるわけではないけれど」
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――だったか。
つまり、俺が超能力に目覚めたのは『海の勇者』エルリックの御蔭か。
『そうやな。でも切っ掛けはそのエルリックがピンチやったから、やろ。いくら『海の勇者』の補助がある言うても自分のピンチやなく他人のピンチで覚醒する辺り、かっこええやんマスター!』
……ああ、ありがとな。
さて、と
「長々と戦っていたが…ようやく終わらせる事が出来そうだな、アンラ・マンユ」
「うぐぐ……こ、これはやっぱりお前の仕業か……くっそおぉぉぉぉ!」
お、おう……ちょっとずつだか動き始めてるな。流石は亜神、いや魔神か。それにこの超能力…かなり負担が大きいみたいだ。
転生してから頭痛なんて初めて感じたぞ。初めて使ったからか慣れてないからか……どちらにせよ、あまり長時間使うのは良くなさそうだ。
「だから……そろそろサヨナラだ、アンラ・マンユ。もしも生まれ変わったら……普通の人間に生れたらいいな」
「…に、人間になるなんて嫌…うわぁぁぁぁぁ!」
超能力でアンラ・マンユを上空に。
そして奴に止めを刺すに相応しい武器は……メーティス、グングニルを。
『……ああ!対アンラ・マンユには最高やな!少なくともビームキャノンよりはええわ!なんで思いつかんかったんやろ!』
デウス・エクス・マキナ、グングニルモード。地球の神話で主神オーディンが持っているとされる神の槍。
デウス・エクス・マキナで再現されたグングニルの能力。それはあらゆる物質、あらゆるエネルギーを消し飛ばす。
鉄で造られた壁だろうが魔力で作られた結界だろうが電気エネルギーで張られたバリアーだろうが。全てを貫き消す。
「そしてこの槍を投げれば……必ず当たる!」
ゴウッ!!!
人間が投げた槍とは思えない音(実際グングニルの能力で飛んでるようなものだが)を立てながらグングニルは飛び、そして……
「う、うああああああ!がっ!……かっ…はっ…」
アンラ・マンユの胴体中央にグングニルは刺さり、内包していたエネルギーごとアンラ・マンユの胴体を消し飛ばした。




