第285話 目覚めました
「…――――…」
『違う、そうじゃない』
「…?―――」
『違う、そうじゃないんだ』
ああ、これは夢だ。久しぶりに見る夢だ。
「…――――…」
『違う、そうじゃない』
同じ事を繰り返す、同じ会話を繰り返す。
病気の時、熱を出した時なんかによく見る夢。
『――って!―――ぇや!』
『違う、そうじゃないんだ』
いつぶりだろうか。少なくとも生まれ変わってからは一度も…………生まれ変わった?
『――スター!おーいってば!マスター!はよ起きてぇやぁ!やばいんやってホンマに!』
マスター…………メーティス!?
『ようやく起きたんかいな!ほな自分で動いてぇな!わいは魔法とデウス・エクス・マキナの操作に集中するさかい!』
自分で………動く?ヤバイって………うぉおおう?!
「アハハハ!ほらほらぁ!いい加減に死んじゃいなよぉ!痛いんだろぅ!」
こいつは、何だ!…アンラ・マンユか!全身に傷を負って再生中って感じだが…何があった。
いや……ボロボロなのは俺も同じか?
『マスター!しっかりするんや!取り敢えず距離をとって体勢を整えるなりなんなり!わいも援護するから!左眼と左腕は無いから注意するんやで!』
お、おう!………って、俺、左腕と左眼が無いの!?…………おおい!マジやんけ!一体何がどうなった!
『自爆や!アンラ・マンユの自分ごとフッ飛ばす爆破攻撃にモロに巻き込まれたんや!咄嗟に全力で防御したけど防ぎきれずに左半身はほぼ全損!マスターは気絶や!一見アンラ・マンユの方がデカいダメージ受けたように見えたけど再生能力はアッチの方が上や!わいが回復魔法で治すより先にアンラ・マンユの方が動けるようになって襲って来たんや!ほんで今の状況があるわけや!』
な、なるほど……高い再生能力を前提とした自爆攻撃……俺が気絶してる間はメーティスが俺の身体を動かして凌いでいた、と。
『せや!左脚を優先した回復させてなまともに身動きもとれずにやられとったで!ほな、わては回復に集中するで!』
お、おう!
しかし、やってくれたな、ほんとに。
それに、此処は何処だ?さっきまでとえらい風景が変わってないか……ちぃ!
「ええいもう!しぶといなぁ!そんなにボロボロでなんで動けるんだよ!やっぱり人間じゃないでしょ!この化け物!」
「お前にだけは言われたくない!」
本当に、何処だよ此処は。さっきまで街道傍の草原地帯に居たはず……なのに今は……荒地?周りは丘になってるし…まるでクレーター内にいるかのような。
『クレーター内にいるんや。爆発で地面は吹き飛んで大穴が出来たんやからな。さっきまでデッカいキノコ雲があったんやで。それで視界が塞がれるんを嫌ってアンラ・マンユが吹き飛ばしたんやけどな』
キノコ雲って……おいおい。それってアレか、大型ミサイルとか核ミサイルとかで出来る、映画や原爆資料館とかで見れるアレか。
『流石に核兵器に匹敵するような爆発やない。でも爆発で起きた衝撃波は五大騎士団が居たとこまで届いとる。死人は出とらんけど怪我人は出とるわ』
マジかよ……そこそこ距離はあった筈なのに、そこまで…………って、アイ達は!?アイにソフィアさん達五人の団長はどうなった!五大騎士団より近くに居た筈だろう!
『心配ない、生きとる。わいが咄嗟にデウス・エクス・マキナを飛ばしてシールドを張ったんや。無傷とはいかんかったけど、マスターよりはよっぽど軽傷や。打撲と火傷、鼓膜が破れて気絶しとる。その代わりデウス・エクス・マキナが一部故障や。展開してたドローンは全機使用不可。ビームサーベルもや。プロテクターは右側は小破。左側は中破や。シールドはもう張られへん。そのつもりで頼むで』
お、おお……無事ならよし!よくやったメーティス!あとで何か御褒美あげるからな!
『期待しとくわ。それよりもマスター。一部とはいえデウス・エクス・マキナが破壊されたっちゅう事実。これは重く受け止めなあかんで』
……例え神様でも簡単には壊せない代物、だったかデウス・エクス・マキナは。それを破壊したって事はアンラ・マンユは神に近い力を持ってる、と。
『そういうこっちゃ。亜神の中でも最上位に来る存在やろ、今のアイツは。流石にさっきの爆発と同等の攻撃を何度も繰り出す事は出来んと思うけど……油断したらあかんで。……おっしゃ左眼は完治や!』
戦いながら、攻撃魔法も使いつつとなると流石に回復に時間がかかるな。しかし、大分持ち直した!左腕も回復したら攻勢に――
「ああ、もう!普通の人間はそんなに早く怪我は治らないんだぞ!も~~~~~~~!僕だって痛いのは嫌なんだけど!」
「っ、何を!」
自分で左眼をくりぬいて…………投げた!?
『マスター!また自爆攻撃や!距離を取るんや!』
またかよ!出来るのかよ!流石にもう一度同じダメージを受けるわけにはいかん!メーティス!ビームサーベルをもう一度出せ!
「アハハハ!また一緒に爆発…………って、なんでぇえ!?」
爆発前にビームサーベルで眼玉を蒸発、消し飛ばす。これで爆発はしな、っう!?
「でも隙だらけだよ!アハハハハ」
「ぐぅ!!」
『マスター!離れるんや!無理やり引き抜いても死なへんから!』
左脇腹…プロテクターの無い、爆発で通常の防具も吹き飛んでいた為に生身の部分を長い爪で刺されてしまった。
アンラ・マンユに蹴りを入れて引き抜く…寸前にアンラ・マンユは腕を横に払い胴体を半分裂かれてしまった。
「ゴフッ…………いってぇな……」
「まだ生きてるんだ……やっぱり人間じゃないよね、お前。ま、本当に使徒じゃないかは喰えばわかるし。どうでもいいんだけど」
ちぃ…やばいな。こうなったらもう、秘密がバレるとか言ってられない、か。
メーティス、奥の手を……なんだ?
「さぁさぁ。そろそろ諦めて僕に喰われ…………何、それ」
何か黒く、淡い光が俺を包んでる……一見禍々しい、危険な光に見えなくもないが危機は感じない。
むしろ…安心を感じる。これは一体……メーティス?
『わいやない。これは…………マスター!腕!左腕!』
え?………おおう!?いつの間にか左腕が元に戻っとる!いや斬られた胴体も!それどころかデウス・エクス・マキナ以外の全てが元に戻っとる!
「ちょっ!何さそれ!傷だけじゃなく物まで直るなんてズルい!インチキ!やっぱお前は人間じゃないだろ!絶対人間じゃないだろ!」
「うるせぇ!俺も驚いてるんだよ!」
何がどうなって………おお?
「ジュン!我が友よ!よくわからないがそれはベルの力だ!ベルが……えっと…覚醒したらしい!そうなんだな君!」
「よくわかりませんがきっと僕の美しさの御蔭ですね!」
「ウフフ………私もビックリ」
アレはジーク殿下にシルヴァン君にレティシア。ベルナデッタ殿下は何やら祈りを捧げてる……って、五大騎士団全軍でクレーターを囲んでんの?アニエスさんまでいるじゃん!
「ジュン!アイシャ殿下にレーンベルク団長らは保護した!今は治療中だ!命に別状はない!」
「負けるんじゃないわよ、ジュン!」
カタリナまでいるし……エルリックを抱いたまま。せめて後方にいなさいよ。
「御同輩!全力を期待しとるぞ~!」
「ジュン様!貴方にエロース様の御加護を!」
おいおいおい………教皇御一行まで。あんたらもさっきの爆発見てたでしょうに。なして近付いて来るかね。
「ジュンー!生きてっか!生きてるよな!」
「ジュンー!怪我無い~!?平気だよね!?」
「無事っぽい」
「ま、まぁ?あ~しは心配してなかったけど~」
「わふう!」
アム達まで来たか…どうやら俺とアイが転移したのに気付いて追って来たらしいな。
取り敢えず…クレーターに入って来ないように結界を張ってっと。
「ジュン!これじゃ入れない!せめて私だけでも入れて頂戴!もう失うのは嫌なのよ!」
「…院長先生。大丈夫だよ!もうすぐ終わらせるから!そのまま抑えててくださいね、ドミニーさん!」
「……………」
「わかったからサッサと終わらせろって言ってるわよー!」
やれやれ……でも、まぁ……アレだ。
「ここでお前を倒すのは最高の俺Tueeeeシュチュエーション!そう思うだろ、アンラ・マンユ!」
「何言ってるか全然わかんない!いい加減死んでよ!」




