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第270話 アイツでした

~~ソフィア~~



「実に壮観だな、黄色の」


「ええ。五大騎士団が全て揃って陣取るなどそうはないですから…ところで私を黄色と呼ぶのはやめてください、ブルーリンク団長」


「各団の団長が代替わりしてからは初じゃないか。だよな、アウレリア…おい、こら寝るな」


「…大丈夫、寝てない」


 ジーク殿下から突然の全五大騎士団の出撃命令。相手はベルナデッタ殿下の予言によれば例の悪い勇者。


 以前の予言ではジュン君と殿下先生も一緒に戦う筈だったけど、この場には居ない。


 それに関しては好都合だと思ってる。ジュン君を危険な眼に合わせたくはないし、何よりこの場にはエロース教教皇一行も居るから。


「どうですか、ファフニール様」


「強者の気配とやらはあの中に感じるのか?」


「いや…どうやらあの一団からは離れたようじゃのう。少し離れた場所で戦っておるようじゃ」


 何か話しているようだけど…流石に聞こえないわね。どうして教皇らがこの場に来たのか、聞きたい所なのだけど。


 今は目の前の相手ね。


「しかし、全五大騎士団を招集、全軍出撃とは一体何事かと思ったが…まさかあの一団が相手なのか?何か聞いているか、レーンベルク団長」


「…詳しくは。しかし、決して油断しないでください。あの中には未知の力を持った存在が居ます。それは確かです」


「未知の力?ふむ…」


 私達の調査でも、ベルナデッタ殿下の予言でも。ベルムバッハ伯爵らを操ったであろう敵の能力は解らなかった。


 その敵と、目の前の一団の中に居る筈の悪い勇者が同一だとするのなら。その能力は未知。あの時のベルムバッハ伯爵らの状態から察するに精神を支配するような能力だとは思うのだけど。


「レーンベルク団長は色々知ってそうに見えるが?私達には教えてもらえないのか?」


「…ごめんなさい、ポラセク団長。詳しく話すのは国家最重要機密に触れなければならないの。私とローエングリーン伯爵が知ってるのは偶々居合わせたからで、許可なく話すと重罰が下る。わかって欲しいわ」


「…つまり、あそこに居るのは国を脅かす存在だと言う事だな。それだけわかれば十分だ」


 …まるっきり的外れでもないから訂正はしなくていいかしら。


 相手は既に伯爵なんて上級貴族にまで手を出しているような犯罪者。正体も能力も未知となれば警戒しておくに越した事は――


「団長。ジーク殿下からの命令です。総員、警戒態勢のまま待機。いつでも全力戦闘に移れるように準備しておくようにと」


「了解したわ。でも待機?」


「はい。殿下は先ずは会話で相手の情報を得ようとお考えのようです」


「そう…」


 ジーク殿下は軍の指揮を執るのは今回が初めての筈。なのに思ったより冷静…いえローエングリーン伯爵がアドバイスしてるのなら当然ね。


「話合いで終わるとは思えないわね。総員に通達。精神攻撃対策を三重に張って待機。精神の隙を作るな」


「はっ!」


 精神攻撃対策を事前にジュン君も施してくれているけれど…防ぎ切れるかしらね。もし、防ぎきれない時は…



~~ジーク~~




「僕はアインハルト王国王太子ジーク・エルム・アインハルト!そちらに勇者が居る事はわかっている!話がしたい!前に出て来てもらいたい!」


「…出て来ないね、ジークお兄ちゃん」


 うん、出て来ないねぇ…このまま一生出て来なきゃいいのに。でも、それだと女の大軍に囲まれてる状況から抜け出せないな。


 やっぱり早く出て来い…あ。


「出て来ましたよ、殿下」


「うん」


 見た感じ二十代の男…少し痩せてるかな。目つきは悪く不機嫌そうな顔をしてる。でも賊にしては小奇麗にしてるかな?


「よく見えますね、殿下…ああ、遠視の魔法道具ですか」


「うん。母上が持たせてくれた。見てみる?」


 しかしアイツの服装…何処かで見た事あるような。


「アレは…エロース教の神子用のローブですね。少しばかり汚れてボロボロですが」


 ああ、神子の。…あれ?という事は?


「アイツは神子って事になるのかな」


「見た目で判断するならそうですが…ぶちぶちと文句を言っている姿はとても神子らしくないですね。ローブは何処かで盗むとかしたのではないでしょうか」


 ああ、盗めば確かに…でも盗むにしてももっと綺麗で新しいの選べばいいいのに。


「って、文句言ってるの?よく聞こえるね」


「それが私の持つギフトですから。それより…レティシア。本当にシルヴァンの力で奴の力を防げるんだろうな」


「ウフフ…『月夜の勇者』は周りにいる味方の精神と魔力を強化する…他にも対策をしてれば先ず大丈夫よ…ウフフ………多分」


「お前今、最後に小声でボソッと多分って言ったろ」


「だだ、大丈夫、大丈夫ですともローエングリーン伯爵様!この僕が居る限り!」


 …少なくとも勇者である僕とシルヴァン君は大丈夫らしいけど。大精霊の加護がある者はあらゆる状態異常に高い耐性を得られるとかなんとか……でもレティシア嬢から聞かされると不安で仕方ないな。


「……ゼフラ。お前も見てみろ。あの男に見覚えは無いか」


「は?はぁ…………確かに、何処かで見たような気がします」


「お前達…それは陛下がジーク殿下に下賜された物だ。許可なく使い回すな。だが何か気になる事を言ったな」


 確かに。僕もそれは気になる。


「お前達、あの男に見覚えがあるのか。何処で見た」


「はい…いえ確信はないのです。だけどあの厭らしい眼は確かに」


「……もしかして。ああ、いえ。幸い、この場にはエロース教の最高責任者が居るのです。確認してみては?」


「それも良いが先にお前達が答えろ。あの男をいつどこで見た」


「…エロース教会です。そうだなゼフラ」


「ええ…もう十年ほど前になりますか」


「十年?エロース教会………おいおい。まさかアイツがそうなのか?」


「ええ、おそらく。あの厭らしい顔つきは面影があります」


「ジュンに決闘を挑んで負けてエロース教本部に移送された希代のド阿呆神子、マイケル。多分アイツでしょう」


 ………誰?

いつも本作を読んでいただきありがとうございます。


更新が遅れて申し訳ありません。


風邪でもインフルでもコロナでもない第四の刺客にKOされ数日寝込んでいました。


扁桃腺炎ってキツいっスね…皆様もお体に気を付けてお過ごしください。

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― 新着の感想 ―
[一言] 根性腐ってんだから幽閉して種馬にしときゃいいのに野放しにするから…
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