第265話 事件でした
「なぁ…ジュン。何度も聞くけどよ」
「本当にこんな事してていいのぉ~?」
「楽しいけど不安」
「こんな事って君達…御仕事だよ、御仕事」
王国会議、そしてレイさんの失踪から一ヵ月。
新しい情報も事件も無く。このまま王都に留まっていても何も進展しないかと考えた俺は――
「助けてエリザえも~ん」
「何よエリザえも~んって…」
エリザベスさんの魔法で東に行くといいという情報、アドバイスをもらった。
例の人探しの魔法を使ってもらい件の犯人…勇者を探してもらったのだが王国東部のこの辺りにに居るとしかわからなかった。
どうも探す対象の情報が少ないと大まかにしかわからないものらしく、フランの時のように血縁者が居れば情報が少なくてもわかるそうだが。
ならばとレイさんを探してもらったわけだが
「うぉう!?地図が燃えましたけど!」
「…何なの、今のは」
何かの力でエリザベスさんの魔法を妨害されたらしく。レイさんの居場所は特定出来なかった。
尤も、僅か一日で遠く離れたエロース教本部に移動出来る能力を持ったレイさんの現在地がわかった所で追いつくのは至難だろう。俺だけで行くなら可能だけど院長先生も連れて行くとなるとな。
そんなこんなで。帝国行きも決定したのもあって後顧の憂い…ベルムバッハ伯爵達を操った犯人を見つけ出すべく王国東部…例のベルムバッハ伯爵の領地にある森に来ていた。
調査がてらベルムバッハ伯爵領の街で依頼を受け冒険者としての仕事をこなしつつ勇者を探そうというわけだ。
同行者はアム、カウラ、ファウ。そして――
「いいんじゃないの。何にも起きてないんだし。何か襲って来てもあたしが護ってあげるわよ」
「わふっ」
「……」
「いいから働けって言ってるわよ」
リヴァにドミニーさん。ハティも付いて来た。
更に――
「う~ん…ここはアヘ顔のアップがいいかな。それともまだ耐えてる表情の方がいいかな。どう思います御義母様」
「どう思いますかと聞かれても…」
アイと院長先生も同行していた。アイは森の中を歩きながら次回作のネームを描いているらしい…器用な奴。
院長先生はいつぞやのように冒険者時代の装備をしている。
アイは勇者が居るかもしれないならと付いて来た。院長先生も俺を狙ってレイさんが現れるかもと言って付いて来た。
孤児院はジェーン先生とピオラ任せ…ピオラも院長先生には勝てないので大人しく残ってくれたらしい。
代わりに御土産を要求されたが…ジェーン先生に、何故か俺が。
いいんだけどね、御土産を買うくらい。
……ああ、白薔薇騎士団の護衛も当然います、はい。
「でもよぉ~…ジュンを狙ってる正体不明の奴を探そうってんだろ?ならこんな何も無い森に来たってしょうがなくねぇ?」
「それに此処ってジュンの事が好きななんとか伯爵の領地なんでしょ~?長居しない方がよくないぃ~?」
「鴨葱」
言いたい事はわかるけどな。エリザベスさんの魔法を抜きにしても此処には来る必要があったんだから。
何せ唯一の手掛かりがベルムバッハ伯爵達なんだから。
「というわけで、この森の調査が終わったらベルムバッハ伯爵に会いに行く。晩餐会に御呼ばれしてるから、そのつもりで」
「「「ええ~…」」」
「ウチも一緒なんだからおかしな真似はしないわよ。ただでさえ王国会議でやらかした身だし。だいじょぶだいじょぶ」
ま、普通はそうだろうな。また何かされてなきゃ何事も無く終わるだろ。
晩餐会にはあまり人を呼ばないと手紙にはあったし。
「手紙って?」
「冒険者ギルドに預けられてた。こっちからも事前に訪ねる事は伝えてたから。あまり目立ちたくないとも伝えてあるから晩餐会もパーティーみたいに大勢は来ないよ、多分」
「ふ~ん…」
そんなわけで、とっとと仕事を終わらせよう。
受けた内容は最近森で増えつつある人面蜘蛛の討伐。頭が人の顔なのでは無く、人の顔のような模様が背中にある大きな蜘蛛型の魔獣だ。
人面蜘蛛の討伐をしつつ森に怪しい人物が居ないか、その痕跡が無いかを調べているわけだ。
今のとこ成果は挙がっていない。
メーティスに偵察機で探させてはいるが…何かあったか?
『いまんとこ何も…あ、いやあったで。この先に少し開けた場所がある。そこで何者かがキャンプした形跡があるわ』
…魔獣が出る森でキャンプ?近くに街もあるのにそんな事するのは…陽の当たる場所に出れない脛に傷を持つ人間くらいだろ。盗賊とか。
『盗賊にしちゃ人数が多いわ。これ百人規模でキャンプしとるで。そんな大規模の盗賊団やったら冒険者ギルドで情報あがっとるやろ』
確かにそんな情報は無かったな。よし調べてみるか。案内してくれ。
『了解や』
メーティスの案内に従って移動。皆には適当な言い訳をしつつ歩いていると人為的に開いたと思われる場所に出た。
小さな川も流れていてキャンプをするには丁度いいかもしれないが…
「こりゃあ…焚火の後だな。誰か此処に来てたのかよ」
「こっちにはテントを建てたような跡もあるよ。それも沢山」
「骨や野菜の欠片に皮もある」
なるほど。確かに誰かが此処でキャンプしてたらしいな。メーティスの言う通りに大勢の人間が。
いや亜人の線もあるか?
「盗賊か?それにしちゃ大人数みたいだけどよ」
「ん~…結構前の跡っぽいし、それらしい音も聞こえない。近くには居なさそうだよ」
「そっか…ところでこれ、何の骨かわかっか?」
「……」
「それはワイバーンの骨だって言ってるわよ」
ワイバーン…Cランク相当の魔獣だな。此処でキャンプした人間が狩って食ったのだとしたらそこそこの戦力は有しているらしい。
大人数だからこそ倒せたのかもしれないが…盗賊団がそんな戦力有してるものかね。
ならやはり亜人…オーガか?確か遊牧民的な種族だって言ってたよなメーティス。
『いやオーガやないで。確かにオーガは住処を転々とするけど冒険者が使うようなテントは使ってないないわ。それに薄っすら残っとる靴跡からも人間やとわかるで』
ならやっぱり盗賊か。でもなんか違和感があるんだよな。
「ん?何してるのよハティ」
「そこに何かあるのぉ?」
「わふっ!うぅぅ!」
ハティが何か見つけたらしい。近くにある木の根元を掘って…うっ!?
「こ、こりゃあ…」
「っ!ジュンは見ちゃダメよ!アイシャ殿下も!」
「……もう見ちゃいましたよ御義母様」
ハティが掘り返した場所からは…人間の赤ん坊と思しき遺体があった。




