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第264話 行方不明のままでした

 前回のあらすじ。


 院長先生マジギレ。


「久しぶりに踏んだけど相変わらず踏みやすい頭ね。良い事だと思うわ。ジュンもそう思わない?」


「え…え~…」


 初めてされたわ、そんな質問。てか前にも踏んだ事あるんスね。


「冒険者時代から苦労させられたから、リーダーの私が。悪さしたらこうやって躾して来たのよ、リーダーの私が。ねぇジーニ」


「は、はいぃ!いたっ、いたた!そ、そうですー!昔からマチルダにはご迷惑をおかけ、いたぁぁぁ!鼻がつぶれる!いや顔が床にめり込むぅ!ジュン君たすけてー!」


 無理です。


 助けたい気持ちはありますが今の院長先生に逆らってはいけない。本能がそう訴えている。


 なんなら犬神よりも怖え。


「助けなくていいわよ、ジュン。これはお仕置きであり躾。五十を過ぎた年増の癖に未だに躾が必要なバカにはこれぐらいしないとダメなのよ」


「だから私が年増なら貴女も年増…あ”あ”あ”!」


「何か言った?よく聞こえなかったわね。それよりもう一度質問するわよ」


 …サディスティック院長先生。


 そんな状態で会話を続けろって…表情は普段通りの院長先生だがスカートからはみ出して見える素足からかなりの力が入ってるのが見てわかる。


 綺麗なおみ足ですね…


「どーしてレイが失踪した事を私に黙っていたのかしら」


「だ、だから…行方不明だった息子とようやく再会出来たのにまた失踪しましたなんて言えな…あああああ”!」


「そこは真っ先に言うべきでしょう?」


「そ、それもそうなんだけど、何て言ったら良いのかわからないって私の気持ちもわかって、欲しっ、あがががが」


「ジーニ、それは貴女の悪い癖。嫌な事は先延ばしにする。いつまでも隠し通せる事じゃないのに隠そうとする。それとも隠し通せるとでも思った?」


「滅相もございません~!本当になんて言ったら良いか解らなかったんです~!」


「そうよね、だから今日私に話に来たのよね。ジュンが来れる日に。ジュンが一緒なら怒られずに済むかもって。そう考えたのでしょ」


「そ、それは…あがががが!」


 ああ…そこも怒りポイントなのね。俺を利用して罪を軽くしようとした事が気に入らないと。


 わからなくもないけど、だ。


「院長先生、そろそろやめてあげ――」


「何か言ったかしら、ジュン」


「……ナンデモナイデス」


 笑顔なのに圧が凄い…気のせいか体感温度も下がってるような。


『わいもそんな気するわ…院長先生こわー』


 その割には呑気な声だな、おい。俺の中で避難決め込みやがってからに。


「で?レイの行方はわかったのかしら」


「も、目下捜索中で、うごごごご!」


「まだ見つけてないのね。男が一人でウロウロしてたらどうなるか、エロース教の司祭ならよーーーーく!わかってるわよね」


「も、ももも、勿論です!ですのでレーンベルク伯爵を通じて捜索願いを出してますし教皇様の御名前で全エロース教信徒に捜索するよう指示も出てますぅぅぅ!もう少し時間をくださ、あがががが!」


「ふん…最低限の事はやってるのね」


 あ、少し圧が下がった。でも足の力は緩めないんスね…そろそろ床に穴が空くか司祭様の顔がつぶれるんじゃ。


「で?何故レイは失踪したの。誘拐と言わない辺りレイが自分から居なくなったのでしょ。何があったの」


「そ、それは………さぁ?…あ”あ”あ”」


「ふざけてるのかしら。赴任してる神子を護るのは支部の責任者である司祭、つまり貴女の責任でしょう。それなのに失踪の理由がわからないの?」


 司祭様…レイさんが勇者になった可能性を話してないのか。何故だ?院長先生になら言っても問題は無いだろうに。


『そらマスターの為やろ。レイが勇者になったとなれば勇者が使徒を狙ってるって話までする必要がある。教皇が使徒を探してる事は院長先生も知ってるやろし。そんで実際にレイがマスターを襲ったらもう言い逃れできんわ。それ避ける為やろ』


 …なるほど。俺の為に黙ってくれてるのなら、俺も司祭様を助けないとな。


「院長先生、本当にそろそろ止めてあげて」


「ジュン…」


「レイさんが失踪したのは司祭様の責任じゃない。突然の、前触れもない行動だったんだから。止めるのは無理だよ」


「…ジュン、貴方なにか知ってるのね。教えてちょうだい。レイに何があったの」


「それは…」


 正直に言うのは…ダメだな。司祭様の頑張りを無にする。それにレイさんが俺を襲うかもしれないと知れば院長先生は…


『マスターを護る為に息子と戦う…なんて選択をするかもな。或いは逆か。どっちゃにしろ院長先生は苦しむんは間違いないわ』


 だよな。となると…会議の時の事件を利用させてもらうか。


「…確定じゃないけど、王国会議の時にこんな事件があってね。実はカクカクシカジカ」


「……そのベルムバッハ伯爵達と同じようにレイも操られた可能性があるって言いたいのね」


「そう。だから司祭様に責任――」


「ならレイもベルムバッハ伯爵達と同じようにジュンを狙う可能性が高いわね。その時は私に任せて。必ずレイを止めてみせるわ」


「……あ」


 しまっったああああ!結局そっちの流れに!なんとか軌道修正しなくては!


「い、いや、院長先生…母子で戦うなんてよくないよ。俺ならなんとか出来るから、俺に任せて――」


「ありがとう、貴方は優しいわね。でもね、ジュンも私の大事な息子なの。息子同士が争う姿を見たくないのよ。それもわかって」


「話続ける前にそろそろ足をどけ、あぐぐぐぐ!」


 あかん。軌道修正不可能…どないしよ…


「いや俺なら本当に大丈夫――」


「司祭様!大変で…司祭様ぁ!?」


 教会のシスターさん…このタイミング現れたって事はレイさんが見つかったか?


「どうしたのってマチルダ!そろそろ足どけて!報告が聞けないでしょ!レイ様の事かもしれないでしょ!」


「…仕方ないわね」


「ふぅ…よく折れなかったわね、私の首……それで貴女、何事?」


「…え?あ…はい。鼻血出てますけど大丈夫ですか?」


「いいから。早く報告なさい」


「はい…神子レイ様の事なんですが…」


「レイが見つかったの?!」


「落ち着いてマチルダ。続きを。全て話して構わないわ」


「…はい。神子レイ様はエロース教本部にある宝物庫に侵入。いくつかの武具、アーティファクトを強奪して再び行方不明になったと…」


「なんですって!?」


 …エロース教の宝物庫にある武具やアーティファクトを強奪、その目的は…やっぱ俺?


『まず間違いないやろな。それをつこうてマスターをどうにかしよって事やろ。マスターは兎も角、物によっちゃ周りに被害が出る事は避けられへんかもしらんなぁ』


 うへぇ…次から次へと…襲って来るならそれでもかまわないから、せめて行方不明状態だけは脱して欲しかった。


 レイさん…あんた今何処よ。

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