第262話 仕事が増えました
「運命は…残酷だ」
「お、おう?突然どうした?」
「まぁ…ジュン君にとっては残酷な展開よね…」
そーです。とても残酷な展開…未来予想図が地獄絵図なんです。
ジークが勇者になったっぽいから登城しろとの陛下からの呼び出し…教皇一行がいる王城に呼び出し。
絶対に面倒くさい未来が待っとるに決まっとる。
そんなわけでとりあえず。
「アイ、後でお仕置きな」
「なんで!?」
「お兄ちゃん…気持ちは解らなくもないけど…」
なんでもなにも。俺の未来予想図にブラックな絵の具を塗りたくってドロドロドロロォォォンにしてくれちゃったのはアイだろう。
昼ドラの悪役の末路バリにドロロンな感じにしてくれちゃってもう…
『どこらへんが?マスターの未来予想図はピンク色やん。真っピンクやん。モザイク必須でお茶の間に流せへんピンクドリームやん。桃源郷やん。シャングリラやん。エルドラドやん。ユートピアやん。マスターと美女だらけのハーレムにジークが加わるだけやん。ジュンxジークかジークxジュンの違いなだけやん。ちなみにわいの御薦めはジーク受けやな』
お前が見てる未来予想図に違いがあり過ぎ…いや受け取り方が違いすぎる。
そこにジークだけは加えてはいけない。ダメ絶対。混ぜるな危険。
てかメーティスよ…お前、さてはアイの漫画読んだな…
『…黙秘権!』
よし。お前のお仕置きはスペシャルコースに変更だ。
はぁ…まぁそんなこんなで。陛下に呼ばれた俺達は陛下が待つ部屋まで城内を移動中だ。
同行者はアニエスさんとソフィアさん。それにアイ、居合わせたユウも。
そして…
「ウフフ…一体誰が勇者にしたのかしらね…」
「ジーク殿下が勇者になっても一番美しいのは僕ですがね」
真贋を見極めてもらう為に大精霊ルナと勝手に付いて来たシルヴァン。
以上をクオンさんの案内で進んでいる……のだが。
「ああ…憂鬱」
「そうだな…私もだ」
「ジーク殿下の行動は想像通りでしょうけど…陛下がどう対応されるかよね…」
ジークはまぁ…敵対する事は無いだろうから俺へのアピールが激化するんだろうな……ウヘップ。
陛下はどうだろうか…パターンとしては情報を秘匿するか大々的に公表するか。
ただでさえ女性から狙われているジークが勇者だと公表されればジークを狙う女性が増える。それはジークも嫌がるだろうし陛下も避けたいだろう。秘匿する可能性は高そうだ。
しかし公表すればジークを王にするのに反対する者は居なくなるだろう。ジークの権威にも箔が点く。
諸外国に対する政治的影響力も計り知れない。政治的判断をするならジークが勇者だと公表する事も考えられる…よな。
『どーやろなぁ。前にも言うたけど勇者って今では古い御伽噺に出て来る程度の存在やからなぁ、一般的には。「勇者?なにそれおいしいの?」って言う勇者なんて知らんって一般人も多数おる世の中で国王が勇者やって公表したところでどの程度の影響があるかっちゅうと…う~ん…難しいとこやな』
ああ…そう言えばそうだったか。ここんとこ身近で起こる勇者フィーバーで誰もが知ってる存在だとばかり。
記録にも殆ど残ってないくらいだから一般人…平民はおろか貴族や王族でも知らない人間は多そうだもんな、
「着きました。こちらで陛下は御待ちです」
「ここって…」
「ママの部屋だよ」
陛下の私室か。城内でも厳重な護りがされている場所…情報が漏れないようにする為か。
「入れ」
「失礼します…え?」
部屋の中に陛下だけじゃなくジークと宰相が居るのはわかる。
しかし…
「教皇猊下…」
「陛下…よろしいので」
「構わん。お前らにとっても悪いようにはせんから安心しろ」
「「「……」」」
部屋の中にはファフニールを除く教皇一行が。まさかこの場で教皇らにジークが勇者だと告げる気か?
「むしろそっちこそだ。我が呼んだ者以外の人間がいるようだが?その娘…ユウだったか。ユウは兎も角、そっちの二人は?」
「ノール子爵家のレティシアとシルヴァンです。何故連れて来たのかの説明は後程させていただきますので。どうか…」
「…いいだろう」
チラッと教皇に視線を向けて言外に教皇らに聞かれたくない話だと陛下に告げるアニエスさん。
色々と漏らせない秘密ばかり増えて行きますなぁ…
「よく来てくれた我が友よ!そしてこれからは僕が君を護ると誓うよ!だから僕と結婚しようじゃないか!」
「ジーク殿下…いつも通りでウンザ…安心しましたが落ち着いてください。顔を近づけないで、近い近い」
「「「………」」」
教皇御一行は何故ちょっとキラキラした眼で見てるんですかね…アイさんや?何故眼を逸らす。まさかとは思うがお前、教皇一行にまで布教活動してないだろうな。
「あー…それで殿下、身体に痣が現れたとの事ですがどのような痣ですか」
「ん?…本来なら君達に身体を見せたくはないのだがね」
上着を脱いだジーク殿下の右肩には太陽のような痣…ああ、これはあの精霊だな。
「…レティシア」
「ウフフ…太陽と光の大精霊サンね…」
だよね。ジークは太陽と光の勇者になったわけね。なんか勇者の中の勇者ってイメージだな。
「因みにサンに波長が合うのはどんな人間になるんだ?」
「ウフフ…何だったかしら?…ああ、そうだったわね。サンが気に入るのは応援したくなる恋をしてる子よ」
そこで俺を一斉に見るな。ジークが俺に持ってる感情は恋愛感情じゃない、断じて。百万歩譲って俺に恋して…ゴッフゥ!………こ、恋してるんだとしてもそれは盛大な勘違い!全人類が勘違いしてもしょうがないねって言えるような勘違い!過ち!間違い!気のせい!
『全人類が勘違いするような恋って、それはもう真実の愛やで。神様も認める純愛やで。愛の傍観者たるわいも認めるで。だからマスターもジークの愛に応えるんや!』
なーにが愛の傍観者じゃ!自分をいいように言うな!ジークとの恋愛に走るくらいなら幼女から熟女まで手あたり次第に手を出す変態になる方がマシじゃろがい!
子作りっていうエロース様からの御願いもあるやろが!
『えー…そんな変態になるんならやで。もひとつオマケで変態になってもええやん』
なるかい!つうか変態って言ってる時点でお前も間違ってる事理解しとるんやろが!
「あー…そ、それよりレティシア。もしかしてこの場に居るのか。その精霊が」
「ウフフ…ええ、居るわよ…そこに」
え、居るの?そこって…俺には何も見えないが。
『見えるように出来るで。普段はわいが見えへんようにしてるだけや。大精霊は兎も角、普通の精霊は結構そこらへんにおるからな。見えるようにしとったら気になってしゃあないと思うてな』
なるほど。もしかして精霊が見えるってのもバレたら面倒な事になる感じか。
『なるやろな。教皇らもおるし、今は見えへんままのほうがええんちゃう。隠し事が増えて行くんは避けたいんやろ』
そうだな。その方がいい――
「ウフフ…ジュン、ジークとのイチャイチャをもっと見せてっサンが言ってるわ…新しい愛の形をもっと見せて欲しいそうよ…」
メーティス、見えるようにしろ。デウス・エクス・マキナで地平線の彼方まで吹き飛ばしてくれる!
『いやいやいや。落ち着きぃやマスター…』
くっそ!サンはBL好きなのか!まさかこれもアイの布教活動のせいじゃなかろうな!
「あー…ローエングリーン、レティシアにはもしかして勇者かどうかの判別が付くのか」
「はい、陛下。詳しくは説明出来ませんがレティシアは勇者に関する知識が揃っています」
「フッ…つまり僕の新たなライバルはジーク殿下ですか。相手にとって不足無しです!」
「…シルヴァン殿は何を言っているのだ、ローエングリーン伯爵」
「………それも後程説明しますので宰相殿」
シルヴァンは何処に向かって進むつもりなのか…フォローが効く段階で止まりなさいね。手遅れな気もするけども。頼むから自分が勇者だって暴露してくれるなよ。
「まぁいい。ジークが勇者かもしれないという前提で話を進めるのは変わらん。そこで、だジーク。改めて教皇に言ってやれ。お前はノワール侯爵と敵対するつもりはあるか」
「ありません。ジュンは僕が護ってみせますよ」
「と、言うわけだ教皇。確かにノワール侯爵の傍に勇者が現れたがジークとノワール侯爵が敵対関係になる事は無い。本人も否定してる事だしノワール侯爵がエロース様の使徒だというのはやはり間違いだったのではないか」
「「「………」」」
ああ…そういう方向に話を持って行く為に教皇一行をこの場に呼んだわけね。なるほど確かに教皇らの理屈で言えば俺を使徒だと断定出来なくなる。
しかし裏事情をしってる俺達からすれば穴のある理論なんだが。
「…まだ確定したわけではありません。ジュン様が使徒様の可能性はまだ残っています」
「……何故、そこまでノワール侯爵に拘る。何か理由があるのか」
「それは…」
「エル、今はやめておこう。帝国へ赴く際の長旅で話す機会がいくらでもある。それよりもノワール侯爵、神子のレイが失踪した話は聞いているな」
「…ええ」
「失踪の原因について何か知らないか。正直、突然の事で我々も混乱しているんだ。何の心当たりもなくて」
「彼は王都ノイス支部に赴任するにあたって相応しい人物だと選定された上で来ています。精神状態も問題無かった筈です。院長先生が母親かもしれないというのは予想外でしたが」
「院長先生と会話を重ねているのは聞いていました。戸惑っているものの大きな問題は無さそうだと聞いてましたのに…まさか失踪するなんて」
…レイさんにも痣が浮かんでいた事はまだ知らないのか。司祭様ありがとうございます、マジで。
「…申し訳ないですが失踪の原因に心当たりはありませんね。院長先生の息子となれば私にとっても他人ではありませんので捜索には協力しますが」
「ふむ。ユウ、お前にもわからないのか。帝国では見事な分析をしてみせたではないか」
「申し訳ありません陛下。情報が足りませんのでなんとも。でも、そんなに心配要らないんじゃないかと思ってます」
「ほう、何故だ。男が一人でうろつくのは危険極まりない行為なんだがな」
「勘です」
レイさんが勇者になったなら大丈夫だろうなとは俺も思う。でもそれは言えないからな。勘としか言えんわけで。
勘で大丈夫と言われても教皇一行には気休めにしかならないだろうが。
「勘か。まぁよい。ではユウよ、ジークを勇者だと世界に向けて公表した場合、どうなると思う」
「…は?何故私にそんな…宰相様にお聞きした方が…」
「良いから答えよ。どんな答えでも咎めはしない」
「…ジーク殿下を狙う人物が増える事になるでしょう。縁を結びたいと考える者は勿論ですが王国の力を削ぎたいと考える他国、面白くないと思う人間から命を狙われるでしょう。ですがそれ以上のメリットもあります。ジーク殿下の即位がスムーズにいくでしょうし他国に対する――」
「そこまでで良い。概ね宰相と同じ意見だ。大きな問題は無いという事だな宰相」
「はい陛下。ジーク殿下を狙う女がいるのは今も変わりませんし、暗殺対策は五大騎士団のいずれかが城に常駐していれば問題ないでしょう。ノワール侯爵家の協力もあればより確実ですな」
うちの協力って…ああ、カミラ達元暗殺者メイドチームの事か。
餅は餅屋、暗殺対策は元暗殺者に聞けってね。
「よし。というわけだローエングリーン、レーンベルク。お前達にも協力してもらう、忙しくなるぞ」
「「…御意」」
ああ…あの顔はアレだ。また仕事が増えるのかって顔だ。
『昨日マスターが仕事増やしたばっかりやしな』
…お黙り!
「話は終わったようだね。じゃあこれからの事を話し合おうじゃないか、ジュン。二人きりで」
「陛下ー!なんとかしれくださいー!]
「…自分で責任をとれ。以上だ」
俺に何の責任があるっちゅうねん!あ、ちょ、引っ付くな!引っ張るなぁ!
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