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第260話 大役が来ました

 ベルムバッハ伯爵の胸にあったのは人の顔のように見える痣…聞き覚えのあるソレが浮かんでいた。


 レイさんに浮かんだのは怒りの形相をした痣だったそうだがコレとはまた違うものなのか。しかし聖痕っぽい…よな。


「妙な形の痣…まさか聖痕じゃあるまいな」


 ドンピシャで俺の頭に浮かんだ事と同じ事を言う陛下。そこで俺に視線を送らないでください。教皇らはいないけど、勘ぐられそうで嫌です。


 しかし、だ。


「それが聖痕ならベルムバッハ伯爵が勇者という事か?」


「いえ、それはないでしょう」


「何故断言出来る?言ってみよ」


 だって暴走したのはベルムバッハ伯爵含め五人。


 五人も勇者になったとは考えにくいし、なによりそれじゃ暴走した説明が付かない、この痣は聖痕ではあっても別の何か…だと思うんだが。


 てか、それくらい陛下もわかってるでしょうに。


「そうだな。ではノワール侯爵。他の四人も同じ痣がないか調べてみよ」


「他の四人も俺一人でですか?効率が悪――」


「いいからやれ」


 有無を言わせぬ…なんでやねん。これもパワハラになるんちゃうのん。日本じゃ大勢の前で女性の服を脱がせるなんて犯罪になりかねんのやで。


『だぁからぁ~この世界じゃ罪にはならんし逆なら罪になるって世界やねんて。ええから早うやりぃ』


 だからお前は…ええい!


「すみません。出来るだけ手早く済ませますから!」


「……本当に大丈夫か、アレ」


「女として育てるとああなる…いえ、それでもあそこまでなるとは…何かローエングリーン伯爵らにされたのでは?」


「ご、誤解です宰相!むしろ正しい男の有りようを教えて来たのです!」


「そうです!この流れでそんな事言わないでください!誤解されるじゃないですか!」


 何か背後が煩いがサッサとすませよう、うん。


 ああ、もう他の四人も美人なんだよなぁ、もう!全員20代っぽいし!揃いも揃って巨乳だしさぁ!


『しかし残念な事に胸に痣がありそうなんは茶髪の女だけや。三つ編みの女はお尻で。眼鏡をかけてるんはへその下辺りやな。一番巨乳なオレンジ髪の女は太腿や。残念やったな』


 …ちっとも残念じゃありませんけど?それになんだかんだとエロいとこにあるし…彼女らに何かした犯人は紳士じゃないのは確かだな、うん。


「ふむ…全員に同じ痣があるか」


「聖痕という線は薄そうですな。ならば呪いの類…おや?」


「…消えた?」


「消えましたね」


 全員を脱がせ、痣が見えるように寝かせていたのだが痣がフッと消えてしまった。


 これはつまり…


『ベルムバッハらの異常は正常に戻った…と考えてええやろ。もうなんの力も流れてないしスキャンしても異常は無いわ。念の為って言って身体中弄ってもええで?』


 お前、俺を何処へ誘おうとしてんの。色町の女衒じゃないんだから。


 俺はこの世界では紳士でいたいの!これまでもこれからも!


『紳…士?』


 なんだその紳士ってなんだっけってな反応。俺がいつだって紳士だったろうが。


『…この世界では、そうかもしれんなぁ、うん。ええんちゃう?そう思いたいなら』


 お前とは一度じっくりと話合わないといけないようだな、メーティス。


「兎も角。もう服を着させていいですか。もう元に戻ってそうなので」


 眼に毒だし、流石に半裸状態で放置は可哀想。特に尻丸出しの人。


「ん?…いや、待て。レーンベルク、部下にこいつらを医務室へ運ばせろ。簡単に拘束をしてな」


「目を覚まして異常が無いか確認したら尋問を。会議が終わり次第、私も立ち会う」


「はっ!」


 あ、会議続けるんだ…こんな事あったのに。タフなハートしてらっしゃる。


「当然だ。状況から考えてベルムバッハらは何者かに利用されてああなったんだろう。その目的は間違いなくノワール侯爵だろうが…その為に会議が中止になってはな。お前にも避難の眼が行く事になりかねんぞ」


 俺の事を考えて?陛下…惚れてまうやろっ。


「何より会議が中止になったと聞けば犯人が喜びそうで腹が立つ。何が何でも会議は無事に終わらせるぞ」


「休憩を挟んで再開ですな。ああ、団長達は呼び戻しておきましょう」


「そうだな」


 Oh…そっちが本命の気がするのは気のせいじゃなさそう、女王のプライドってやつですかね…


「ああ、そうだ。ベルムバッハらに服を脱がしたのはノワール侯爵だと教えてやれ。せめてもの情けだ」


「勘弁してください」


 陛下…あんた俺の味方なの敵なのどっちなの…



「では会議を再開する。先ずフィーアレーン大公国の公子が代表の使節団が我が国に――」


 本当に再開したよ…何事も無かったかのように。


 城内で指揮してた各騎士団長も戻ってるし。怪しい奴も物も無かったそうだけど。


 ベルムバッハ伯爵らは休憩時間中には目を覚まさなかったし…つまりあの痣以外は何も情報が無いままなんだが…気になるな。


 というわけで、何か解かったか相棒。


『な~んにも。手掛かりがあの痣だけやし。偵察機飛ばしてるけど城内にも王都にも怪しい奴はおらんからなぁ。出来るんは想像、予想だけや』


 なら、その予想とやらを言ってみ。


『アレが神子のレイの痣と同じ類の何かでレイが勇者になったんやとしてやで。ベルムバッハらはレイとは別の勇者に何かされたんやろ。勇者の能力でな』


 …やっぱりアレはレイさんとは別の勇者の仕業なのか?


『多分な。あの消えた痣…アレが勇者が持つ聖痕と同じ形の痣やとすれば、や。アレは勇者が持つ能力なんやろ』


 つまりベルムバッハ伯爵らの偽造証拠での告発も何者かに操られた結果だと?


『それはわからんわ。様子がおかしなった後からかもしれんし、もうずっと前からかもしれん。何せ情報が足りんわ』


 情報か…そう言えばベルムバッハ伯爵以外名前も知らんな。


「(というわけでアニエスさん。ベルムバッハ伯爵以外の四人の名前、あとあの五人の共通点とか教えてもらえますか)」


「(ん?ああ…知らないのか。あいつらは――)」


 茶髪の女性がクレーベ子爵で三つ編みの女性がアルトマン男爵。眼鏡の女性がミュラー男爵でオレンジ髪の女性がライフアイゼン子爵。


 そして五人全員が王国東部に領地を持つ領主らしい。


 ベルムバッハ伯爵領を囲むように四人の領地が有り、ベルムバッハ伯爵がまとめ役なのは以前からの事だそうな。


「(という事は東部の代表的な立場なんですか、ベルムバッハ伯爵は)」


「(いいや。東部のまとめ役はファーブロス辺境伯だ。ほら、あそこにいる白髪で血色の悪い女がそうだ)」


 どれどれ…って、ほんとに血色悪そうだな。頬もこけてるし身体弱そう。


「(見た目通りに病弱でな。当主として優秀ではあるんだがベルムバッハ伯爵を始め東部諸侯連中に舐められていると聞く。まだ当主となって浅いし、仕方なくはあるんだが)」


 ふうん…そこらへんにベルムバッハ伯爵らを相手にしなかった理由があるんスね。


「(我々にはファーブロス辺境伯と揉めるつもりは無いしな。ま、今後はファーブロス辺境伯の心労は減るだろうさ)」


「(というと?)」


「(仮に何者かに操られた結果だとしても何も御咎めなしとはならんからな。ベルムバッハ伯爵らの発言力は下がるのは必然だ)」


 操られた結果だとしても、か。それは厳しいと思うし多少の同情するが…王国会議の場でのやらかしだからな。仕方ないのか。


 でも…緩いペナルティで済むように進言しておこう。


『なんや優しいやん。裸見たからかいな』


 …半裸な、半裸。


 そうじゃなくて彼女達は巻き込まれただけだろう。ターゲットは俺なんだろうから。


 黒幕が誰かは知らんが俺を狙う何者かに利用されただけ…なら厳罰が下るのは気の毒過ぎる。ただでさえ痴態を晒してるんだ。これ以上は――


「聞いているか、ノワール侯爵」


「へ?あ、はい」


 嘘です、聞いてませんでした。何の話してたんでしょ。アニエスさんは…俺と同じく聞いてませんね、はい。


「ならば返事をしないか。受けるのか受けんのか」


「あ、はい。受けます。お任せください」


「…受けるのか?意外だな。何か心境の変化でもあったか?」


「へ?」


 しまった…陛下に拒否の言葉を向けるのはマズいかと思って受けたけど拒否するのが正解だったか。


 どんな内容だったんだろ。


「(というわけでシーダン男爵。内容は聞いてました?)」


「(聞いてなかったのかい…フィーアレーン大公国の使節団の事だよ)」


 フィーアレーン大公国の使節団?それが何――


「良いのではないですか。先方の希望でもある事ですし」


「そうだな。ならばフィーアレーン大公国の使節団の歓待と世話役はノワール侯爵の仕切りとする。アイにも手伝わせるからローエングリーンらと上手くやれ」


 ………Oh。


 中々の大役じゃあ~りませんか……

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[一言] 相棒も教えてやれよ は~つっかえ(゜д゜)
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