第258話 妙な展開になりました
「…以上で報告は終わりです。ふわぁ…」
「…御苦労だった。だがもう少し真面目にやれ」
王国会議は先ずは一人一人が自領、任されている仕事等についての報告から始まる。
最初は五大騎士団の各騎士団長の報告から始まり。今、赤薔薇騎士団団長のアウレリアさんの報告が終わった所だ。
五大騎士団からの報告は彼女で最後になる。
「五大騎士団からの報告には大きな問題は無いようだな宰相」
「はい。他国に遠征していた赤薔薇騎士団と黒薔薇騎士団は完璧な仕事をしてくれました」
赤薔薇騎士団と黒薔薇騎士団は長期遠征中だと聞いてはいたが内容は知らなかった。
その内容を今、聞いた訳だが…同盟国に出来たダンジョンを潰す事が目的だったらしい。
発見が遅れて巨大な魔獣の巣になったダンジョンを潰すには強大な戦力が要る。それも二箇所で発見されたなら二倍の戦力が必要だ。
自国の戦力ではどうにも出来ないのでアインハルト王国に頼った結果、赤薔薇騎士団と黒薔薇騎士団が派遣されたようだ。
…それ、なんで俺に教えてくれないかなぁ。喜んで滅っするのに。
外から魔法で潰してもいいし、単身突入して殲滅してもいい。
俺なら一日とかからずやっちゃうのに…経費とか浮きまっせ?
『マスターが侯爵になった時にはもう派遣されとった筈やん。文句いいなや』
わかっとるわい。でも、今年はまだ俺Tueeeee出来てないしさぁ。
早くレイさんや勇者なんかの問題を片付けて俺Tueeeeeやりたいな…
「という訳で〜カラーヌ子爵領では〜大きな問題は〜起きていません〜。ノワール侯爵の〜御蔭で〜賑わってますし〜」
「ほう。何をしたんだ、ノワール侯爵」
…おっ?どうやって俺Tueeeeeしようか考えてたら俺の名前が挙がった?
やっべぇ、話聞いてなかったわ。
『アレや、アレ。カラーヌ子爵領に鉱石運搬の中継地点を作った件』
ああ、アレね…アレを説明しろと。
「どうした?人に言えないような事をしたのか」
「いえ。カラーヌ子爵領に鉱石運搬の中継地点を作らせてもらっただけです」
「ほう。あの鉱山のか。よし、ついでだ。次はノワール侯爵家からの報告を聞こう」
ええ…そういう段取りにないアドリブやめましょうや。王制の国で女王からの無茶ぶりって部下泣かせやでほんまに。
『無茶ぶりっていうほどでもないやん。順番が急に来ただけで。ほら、はよう報告報告』
へいへい…つっても俺が話す事なんてあんまりないけどな。精々がノワール侯爵領になった街と村の状況を述べる程度だ。
統治は代官任せだし挙がって来た報告をまとめて話すだけだ。そのまとめ作業も俺じゃなくアニエスさん達がやってくれたし…いや、俺が丸投げしたんじゃなくやらせてくれなかったんよ、ほんと。
「――以上です。ノワール侯爵領で大きな問題は起きていません。鉱山に関しての報告は…シーダン男爵」
「はい。ここからはアタ…私が代わって報告させてもら…頂きます。まずミスリル、アダマンタイト、オリハルコンの産出量ですが―――」
此処でシーダン男爵にバトンタッチ。彼女が話す内容も事前に聞いてた内容と同じだ。鉱山の運営もドラゴンがいつまで棲み続けてくれるかという不安材料はあれど大きな問題は無し。
だが…
「質の方はどうなのかな」「運搬や保管に関して聞きたいのだが」「鍛冶師は足りているのかな」「街を大きくする必要もあるだろう」「ダンジョン化に備えての対策は出来ているのかね」
etc etc…
今まで黙って聞いていたのに急に矢継ぎ早に質疑応答が始まった。俺には何も言わなかったのにシーダン男爵には集中砲火…なんで?
「(あの者らはお茶会の誘いに応じなかったし呼ばなかった者ならだな)」
と、隣にいるアニエスさんからの耳打ち。
ああ…つまり俺との接触を断たれてる人達の嫌がらせ、或いは何とか俺に取り入りたい人達のあら捜しなわけね。
そんなんして俺に気に入れられるとか本気で考えてんのかねぇ…逆効果になるとは思わんのだろうか。
『普通に考えたらそやねんけど、先ずは関心を持ってもらわな話にならんて思ってんのやろ。悪感情でも関心は関心、敵対関係でも関わりは関わりや。先ずは接触出来な話にならんってな』
…そこまで?そうまでして俺と関わり持ちたいか。
『持ちたいんやろなぁ。まぁ、そんな手段とってまうような人間やからお茶会に呼ばれんかったし招待に応じる事もされんかったわけやけど』
…アニエスさん達の選別に間違いは無かったわけね。俺に対して攻撃せずに家臣のシーダン男爵に攻撃するのは最後の理性か…むしろ、そっちの方が癇に障るが。
で、集中砲火を浴びてるシーダン男爵は…
「あ、あー…その件はですね…ええと…」
「(騎士と~兵を~増員して~対応してます~でしょ~)」
「(お、おう…なんでアンタが知ってんだよ…)」
何やらカラーヌ子爵が小声でフォローしてるようだ。あの人も最初はシーダン男爵から崩して鉱山の利権に関わろうとしたみたいだけど、今となってはシーダン男爵が崩れたら困る立場だからな。
御蔭で乗り切れそうやね。
やっぱり仲良し?
「そこまで。あの鉱山は今や王国でも最重要な物の一つ。それが恙無く運営出来ているようで安心した。今後も期待しているぞノワール侯爵、シーダン男爵」
「は、はい!」
長くなりそうだったが陛下が適当なとこで打ち切ってくれた御蔭で俺とシーダン男爵の出番は終わり。
チラホラと舌打ちしそうな顔の人がいるが陛下が相手では黙るしかないらしい。
その理性を俺にも働かせて欲しい。是非に。
「では次だ。宰相」
「はい。では次は…レンドン伯爵から」
「はい。我が領地では―――」
あ、居たのね、イーナママ。ルー達の失踪騒ぎから忙しくて会ってなかったから忘却の彼方でしたよ…
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「――以上です」
「うむ。やはり冬場の流行り病には毎年頭を悩まされるな」
「魔法で対処が可能とは言え限度がありますからな。さて各領主からの報告は以上となりますな」
「そうか。では他に何も無ければ小休止の後、次の――」
「お待ちください陛下」「どうか我々にこの場で嘆願する事を御認め頂きたく!」「何卒!」
ようやく報告は終わり次の段階…王国が抱えている問題についての話合いに移ろうという段階でなんか出て来た。
あの人らは…シーダン男爵に絡んで来た人達だな。そうでない人も多数…なんか激しく嫌な予感がするんですけど。
「お前達…この場をなんと心得る。王国の今後について話し合う場ぞ。決してお前達の願いを叶える場では――」
「よい、宰相。お前が代表か?ベルムバッハ伯爵。述べてみよ」
「は、ははっ!ありがたく!」
ええ…聞くのぉ?一蹴しちゃいましょうよ…だってあの人達、さっきから俺に視線送って来るんだもの。
どうせ阿呆な事を言うに決まって―――
「我々はノワール侯爵家をローエングリーン伯爵家、レーンベルク伯爵家等の悪鬼からの解放!そして我々で保護する事の許可を望みます!」
………なんて?
本年は今話で最後になると思います。
皆様、良いお年を。




