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第257話 勢揃いしました

「いっぱいいますね」


「居るな」


「正直、何度か顔合わせした人ばかりだけど覚えきれてないわ」


 今日は王国の貴族家当主が一堂に集まり会議を開く日。朝早くからアニエスさんらに連れられ王城の大会議場に来ている。


 昨日はジーク殿下とピオラのデモ活動やら勇者やら何やらで忙しなく、結局は院長先生に会えず終い。


 挙げ句レイさんが勇者になったぽくて行方不明…会議なんてすっぽかして今すぐ院長先生に会いに行きたいくらいなんだが…そうも行かないのが辛いところ。


「よーう!ノワール侯爵!」


「お久し~ぶりです~ノワール侯爵〜」


 …仲が悪いのに一緒に来たな。御近所さんだからかな。


 シーダン男爵とカラーヌ子爵だ。なんか脇腹を肘で小突きあってますけど…見ようによっては仲良しだな。


 シーダン男爵は鉱山の運営についての報告。で、カラーヌ子爵は…


「ノワール侯爵~改めて~鉱石の件~ありがとうございます~」


「いえいえ。うちにも利益のある話だったので」


 以前、カラーヌ子爵の鉱石運搬の中継地点をカラーヌ子爵領に作らないかという話。皆と検討した結果、損は無い、むしろこれ以上ないとまで言える場所だった。


 交渉なんかはアニエスさん達に丸投げになったがカラーヌ子爵領に中継地点を作る計画は進んだのだ。中継地点が出来た後はシーダン男爵が窓口になってカラーヌ子爵とやり取りしてたのだが…


「二人は…上手くやれてます?」


「ええ~勿論~」


「仕事に私情は持ち込まないよ。嫌いな人間だからって取引を台無しにするような真似はしないさ。シーダン家が子爵家になれるかがアタシの仕事にかかってるんだからね」


 ああ、それね。今のとこ順調だし、もう数ヵ月頑張れば無事に子爵になれるだろうさ。


 でもご近所付き合いもあるんだから言葉だけじゃなく表面上も仲良くしなさい。いつまでも脇腹を小突きあってないで。


「が、頑張ってみるよ…じゃ」


「また後ほど~」


 と、言いながらも小突き合いながら自分の席に向かう二人。行動が同じ…やっぱり仲良し?


「やぁノワール侯爵。元気そうだな」


「ブルーリンク辺境伯。御久しぶりです」


 今度はブルーリンク辺境伯の御登場だ。国境警備の依頼を受けた時以来か。


「今回は御一人で?」


「いや父とな。妹は留守番だ。散々文句をたれていたが仕方ない。ドライデンはまだ不安定だし誰かが残らねば」


 ドライデン…不安定と言っても反エスカロン派はほぼほぼ壊滅。完全な一枚岩になりつつある。


 昨年のドライデンによる犯罪も起こってないし今後は良き隣人でありたいと周辺国に言ってるらしいが…またどっかで絡んで来るんだろうなぁ、あの人。


「忙しい母と会える機会だから連れて来たかったのだがね」


「母…ああ、青薔薇騎士団の」


「うん。今日の会議は五大騎士団の団長も参加だからな」


 他国に長期遠征中の黒薔薇騎士団と赤薔薇騎士団の団長も一時的に帰って来てるという事か。


 赤薔薇騎士団の団長が三つ子姉妹の姉で黒薔薇騎士団の団長がマルグリット嬢の姉だったか。


 五大騎士団の団長が勢揃いするのか………あ、なんか面倒ごとの予感がふつふつと。


「ああ、噂をすれば。母が来たよ」


「え。どの人…って、ああ」


 あの青い騎士服の女性か。青髪のポニーテール、顔に傷のある少々厳つい見た目の女性。二人の娘とはあまり似てない…な。


「ヒルダ、此処に居たか」


「ええ、お母様。お父様は?」


「ガウル様とお会いになっている」


 ああ…そう言えば紳士会の集りやってるんだったな。会議はかなり時間がかかるらしいから俺は参加せずに済むが。


 …未だに紳士会の面子の矯正、出来てないんだよなぁ。


「で…変わりないようだなレーンベルク団長。それにローエングリーン伯爵」


「ええ、ブルーリンク団長」


「そちらも御変りなようでブルーリンク団長」


 元辺境伯で現団長、加えて年上のブルーリンク団長にはアニエスさんとソフィアさんも丁寧な物腰だ。


 それなりに敬意を払ってるのがわかる。どうやらまともな人なようだ。


「そして君は噂の美少年か」


「美少年……ジュン・レイ・ノワール侯爵です。初めましてブルーリンク団長殿」


「フラウ・アスル・ブルーリンクだ。君の事は夫と娘から聞いている。とても優秀なようだな。男にしておくのが勿体ない…と言ったら怒られるかな?」


「はは…自分としては男で良かったと思ってますね」


「ふむ…ちょっと失礼」


「え?」


「「「あああ!?」」」


 突然、身体をポンポンと触られた。セクハラ目的じゃなく俺の身体つきを確かめているようだが。


「何のつもりですブルーリンク団長!」


「私の婚約者の身体を目の前で触るなんて!」


「そうですよお母様!娘の婚約者に何を!」


「すまないな。少し筋肉の付き方を確かめただけだ。良い筋肉だ。うちの副団長に勝ったというのは嘘ではなさそうだな」


 ああ…アズゥ子爵の事ね。当然聞いているか。って、あの人も子爵家の当主なら来てる筈だな。


 あとアニエスさんとソフィアさんは良いとして。貴女は婚約者じゃないでしょうブルーリンク辺境伯。


「副団長に勝っただけでなく大物の魔獣も討伐したんだったか。実に興味深い…今度模擬戦でもしないか?」


「ええ、是非に」


「楽しみにしている。ではまた後で。行くぞヒルダ」


 見た目通りに武闘派な思考なのな。年齢は娘の年齢から考えて四十代後半か。御多分に漏れず美人だし若々しいが。


「やぁノワール侯爵」


「レッドフィールド公爵。御久しぶりです」


 今度はレッドフィールド公爵…と、もう一人。レッドフィールド公爵家と同じ赤髪の女性が。


「紹介しよう。私のもう一人の娘アウレリア・ブリジット・レッドフィールド。現赤薔薇騎士団の団長だ」


「…どうも」


 ああ、やっぱり。レッドフィールド公爵に似てるし赤髪だし、そうだと思った。


 しかしイザベラ達三つ子とは雰囲気が全く違うな。他の団長達と比べても団長っぽくないし。


 ボサボサの長い赤髪。気怠そうな眼。年はソフィアさんと同じか少し下くらいか。


 …この人をジーク殿下と婚約させようって?肉食系じゃなさそうだから良いかもしれんが。


「…じゃ」


「おい、アウレリア…全く」


 …今までのパターンから求婚されるかと内心身構えていたんだが…アッサリ、いやノッソリと歩きながら自分の席に向かって行った。


 公爵家の娘で騎士団長にしては覇気が無いというかなんというか。やる気が感じられないな。


「何だかイザベラさん達とは似てませんね」


「…まぁ、アイツには事情もあってね。やる気は無いが能力はあるんだ、うん」


 本当かね…まぁ俺に関わって来ないならいいけど。


 事情とやらには踏み込まない。聞けばきっと同情したり何かに巻き込まれたりするんだ。俺も学習するんだぜ。


「…はぁ。私達には何も言わずに去りましたね。長期の遠征で久しぶりに会ったというのに」


「別に構わんがな。親しいわけでもないし」


「す、すまないな…あ、あ~もう一人の団長が来たぞ」


 と、今度は誰……子供?黒い騎士服を着た十二歳前後の子供が来る。


「誰です、あの女の子は」


「お、おいジュン。子供扱いは――」


「おいお前!聞こえているぞ!私を子供扱いするんじゃない!」


 お、おう?耳良いな。この距離で聞こえるか。しかし偉そうな子供だな。


「ジュン君、彼女はレオナ・サン・ポラセク。黒薔薇騎士団の団長よ」


「へ?」


 え?じゃあマルグリット嬢の姉?嘘でしょ。どう見ても小学生、良くて中学生くらいの女の子ですけど。


 でも確かにマルグリット嬢と同じダークバイオレットの髪…顔もポラセク侯爵に似ているような。


 じゃあ本当に?少なくとも俺よりも年上なのか…


「あー…し、失礼しました、ポラセク団長殿。ジュン・レイ・ノワール侯爵です」


「フン!お前が噂の男か。妹が世話になったそうだな。レオナ・サン・ポラセクだ」


 …そう言えば騎士らしくないとか似合ってないとか聞いてたな。


 うん、確かに騎士っぽくない。見た目の幼さでは美魔女のノール子爵より上だな。


「…何か言いたそうだなノワール侯爵」


「ナンニモナイデスヨ」


 勘が鋭い…とても強そうに見えないが五大騎士団の団長なだけはあるのか。


 プクッと頬を膨らませ薄っすら紅くした顔を見るととてもそうは思えないのだが。子供扱いされるのが嫌ならそういうとこから変えたらいいのに。


「言いたい事があるなら――」


「陛下が参られました!皆様、着席を!」


 おっと。陛下と…宰相も来たか。なら会議が始まる時間だって事だな。


「チッ…後で覚えておけよノワール侯爵。私を子供扱いしてただで済むと思うな」


「ええ…」


 子供扱いされて怒るのは子供だけなんですよ…って言ったら怒るんだろうなぁ。


「それでは本年度の王国会議を始めます。皆様静粛に」

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― 新着の感想 ―
[一言] しかし会議で何が俎上に上がるか 直近部外秘とか機密ばっかじゃね?(゜д゜)
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