第252話 早まりました
「失礼します、陛下」
「うむ」
王城で行なわれていたジーク殿下とピオラの抗議活動が終わった後、アリーゼ陛下に呼ばれ城内の客室へ。
そこにはアリーゼ陛下とアイ。教皇一行が揃っていた。
勿論、神子のレイさんは居ない。レイさんは教会で院長先生と話をしている筈だからな。
俺と一緒に入室したのは案内役のブロンシュ宰相とジーク殿下。アニエスさんとソフィアさんだ。
「「「「……」」」」
「……」
Oh…冷たい眼で睨み合ってるのに火花が散っているよう。
入室して早々に教皇一行とジーク殿下の睨み合い。それを見て居心地悪そうにしてるのがアイだ。
ジーク殿下を拗らせた元凶だからな。反省なさい。
『元凶はマスターの気もするけどなあ』
お黙り!
「…陛下、お呼びとの事ですが、何用でしょうか」
「うむ。予想しているだろうがお前と教皇の事だ。いい加減に話を進めんとな。が、その前に…行方不明になった子供達とやらはどうなった。無事なのか」
あぁ…そう言えばあの場には陛下も教皇一行も居たんだった。
なら結果を報告する必要があるか…勿論、犬神の事はぼかして。
「はい。四人の子供達は無事に保護。先程、王都に戻って来ました」
「そうか…レーンベルクから聞いたが、その子供達は敵討ちの為に出奔したらしいな。それはどうなった」
「果たしました。あの子達の手で。私も多少手伝いましたが」
「そうか。ならば良――」
「どのような相手だったのかな、ご同輩」
陛下の言葉を遮って質問したのはファフニール。陛下が不快そうに見るが何処吹く風。
高位のドラゴンだけあって怖いもの知らず…しかし、ファフニールに突っ込まれるとは思わなかった。
どう答えるべきか…
「どうかしたかの、ご同輩。何か答えられない理由でもあるのかな」
「いえ…何故、そのような事を?」
「わしはな、強者の気配に敏感でな。少し前から此処より東にある強者の気配を感じておったんじゃが、数日前に消えた。お主が倒したんじゃろう?」
…此処からあの山までどんだけ離れてると思ってんだ。いくら犬神がこの世界において異端で強者とはいえ…その気配を正確に感知出来るとは…もしかしてファフニールは亜神なのか?
『あー…可能性はあるなぁ。エロース様に遣わされた存在って事やし。異世界から来た存在には敏感なんかも』
おいおい…その理論で行くと俺の事も…
『もしかしたらファフニールが一番確信してるんかもな。マスターが使徒やって』
Oh…一番関心が無さそうだったファフニールが一番注意しなければならない存在だったか。
拙いな…増々下手な事は言えん。
「どうした?答えられんのか」
「いえ…ファフニール様が仰る強者かはわかりませんが見た事も聞いた事もない魔獣でした。何せ人語を解する魔獣でしたので」
「人語を解する魔獣?魔石はあるかの」
「…忘れてました。魔石は回収してませんね」
というか魔石があるのかもわからん。直ぐに埋葬したし。
犬頭ではあったが人間に近い姿の遺体を解体する気にもなれなかったし。
「おいおい…ジュン、それは…」
「勿体無い…折角のお手柄なのに」
「いいじゃないですか。今回は敵討ちが主目的だったんですし」
手柄を立て過ぎるなとも言われてたしね。
て、そんな事はいいんだ。肝心のファフニールは…
「ふぅん…人語を解する魔獣…そんなのおったかのぅ。どのような魔獣じゃったか、詳しく――」
「後にしてもらおうか、ファフニール殿。続きは旅の道中ですればよかろう」
「…仕方ないのぅ」
アッサリ引き下がったのは良いが…旅の道中?何の話だ。
「陛下、旅の道中とは…」
「ああ、今から話す。ノワール侯爵、教皇と共にツヴァイドルフ帝国へ行け。アイも同行しろ。護衛には白薔薇騎士団を付けてやる。ローエングリン伯爵も行きたければ行け」
「「「は?」」」
…帝国に教皇と一緒に?ナンデヤネン。
「…どういう事でしょう」
「詳しくは言えん。だがエロース様の使徒が誰なのか確かめる術が帝国にある。それを使わせてもらえるかは教皇猊下次第だが」
どういう事……もしかしてアレか。エロース様と連絡が取れるアーティファクト。アレの事を言ってるのか。
『多分、そやろな。アレの使用権をもらってたんやろ、女王は。その権利を譲ったわけや無さそうやけど』
で、アーティファクトの存在を教皇にリークした、と。
詳細を語ったわけじゃないだろうけど他国の重要機密を漏らしていいんかいな…
「しかし、それなら私が同行する必要は無いのでは?」
「お前は騒動の中心だろう。キチンと結果を見届けろ。それにどうせ御茶会に呼ばれて帝国に行くんだろう。少し早まっただけだろう」
あぁ…ついでにそっちも済ませて来いと。一応は俺への配慮もあったわけですね。
「流石に今すぐというわけには行かんがな。帝国からの返事待ちになる。既に書状は送ってあるから、待っていろ。教皇も、それでいいな?」
「はい。御配慮、感謝致します」
「タダではない。騎士団を動かすのも金がかかる。対価は払ってもらう。それと、だ」
「わかっています。ノワール侯爵様が使徒だと確定しても無理矢理エロース教本部に連れて行く事はしません」
「アインハルト王国を敵に回すつもりも無いし、ノワール侯爵に嫌われる事も避けたいからな」
「ウチが一緒に居るんだから手出しもさせないしね」
あぁ…アイは監視役でもあるわけね。
「くっ…すまない友よ。僕は帝国にだけは行きたくない…」
「あ、はい。お気になさらず」
最初っからジーク殿下の同行は望んでません。来られても困ります。普通に。
『えー…マスターはもうちょいジークに優しくしてもええんちゃう?』
御免こうむる!腐女子に燃料投下する気はない!
「話は以上だ。他にも帝国に連れて行きたい者が居るなら好きにしていい。他に何かあるか?」
「ありません…ああ、いや。ミネルヴァ様はどうなりますか」
「ん?…あぁ、お前のとこで預かってる皇女か。元々春までという話だし返してしまえ。何度も帝国を往復するのは面倒だろう、お前も」
「ありがとうございます」
カサンドラ様…落ち込むだろうな。諦めてもらうしかないが。
「という訳だ、ジーク。近い内に教皇らは出て行く。安心したか」
「ありがとうございます、母上」
「うむうむ」
ああ…ジーク殿下のお願いだから積極的に動いたわけですね…納得。
「ならば解散だ。帝国へ行く準備は進めておけ」
帝国からの返事待ちなら出発までそれなりの日数はありそうだな。
その間に院長先生とレイさんの事を――
「明日は王国会議があるので、それも忘れないように。特にノワール侯は初参加になる。ローエングリン伯爵からよく聞いておくといい」
「ああ、そうだったな。おっと忘れる所だった。ノワール侯爵、この後ガウルの所へ行け。丁度御茶会を開いているから間に合うようなら来て欲しいそうだ」
Oh…王国会議、忘れてた。
御茶会に関しては辞退…ダメっスか。はい、行きます…




