第213話 頑張ってました
〜〜ユウ〜〜
「――と、言う訳で。お兄ちゃんを従わせる為に私達の誰かを誘拐しようと動くかもしれないって事だから。対策を立てる必要があるの」
私は早朝会議に出てなかった皆に状況を説明。
ドライデンのいざこざに巻き込まれつつある事を話した。
反応は様々で…困惑してる人。怯えてる人。よく分かってない人。獰猛な笑みを浮かべる人…本当に様々。
因みにお母さんはよく分かってない人。
「対策としては極力一人にならない事。特に戦う力の無いお母さんとピオラ先生、クリスチーナ、フラン。あとイーナさん」
「あの…ユウさん?わたくしは戦えますが…」
でもダメ。イーナさんは戦力として当てにしてはいけないと、帝国までの旅路で思い知ったもの。
「私達の護衛はリヴァさん、お願いします」
「ん?あーし?いいけど」
「おい、ユウ。あたいらを忘れてねぇか?」
「そうだよぉ。わたし達だって強いんだよぉ」
「若手有望冒険者チーム」
「……」
「わふっ」
勿論、アム達にもやってもらいたい事がある。
それなりに危険が伴うけれど…ドミニーさんとハティも一緒だし、大丈夫なはず。
「これを見て」
「なんだ…地図?」
「こっちは闘技場の見取り図かなぁ」
「もう一つは帝都の地図」
「いくつか☓マークが付いてるね。ユウ、これは?」
「人が隠れたり物を隠したりするのに適した場所って言えばわかる?」
守りを固めるだけじゃダメ。こちらから積極的に狩らないと。
フフフ…お兄ちゃんを害そうなんて奴らは早めに潰すに限る…
「なんかユウがピオラ姐さんみたいな顔してんぞ」
「ユウはそっち行っちゃダメだよぉ」
「戻るべし」
「どういう意味なの…」
ハッ…んんっ。いけないいけない。ピオラ先生のお兄ちゃんへの愛の深さは尊敬するけど…私はヤンデレになるつもりはないの。
一緒に暮らしてるから影響されやすいのかな…気をつけないと。
でも最近私達の出番が少ないし…活躍しないと!
「兎に角!アム達にはその☓マークの場所に行って怪しい物、怪しい人物が居ないか探って欲しいの。ドミニーさんとハティ、クリスチーナもお願い」
「……」
「わふっふっ」
「私もかい?私は戦闘能力は無いんだが…」
「クリスチーナに期待してるのは知識と現場指揮ね」
クリスチーナは商人だから魔法道具や禁制の品なんかの知識があるはず。
知識があれば隠してある物を見つけた時、正しい対応が出来るから。
会長だから人を使う事にも慣れてるはず。
「それが私の役割か…わかった、任せたまえよ」
「じゃあ闘技場の中からお願い。何も見つからななくても街に出る前に一度戻って来てね」
「おう!じゃあ早速行くか!」
「って、待って待って。捜査は決勝トーナメントが始まってからでいいから」
今はまだ帝城。お兄ちゃんは準備中だし、陛下達も出発してない。
私達だけ先に向かうわけには行かないから。
「しかしユウ。これだけの場所を探すのにアム達だけでは手が足らないんじゃないか?私も手伝うが」
「そうだけど…」
本当なら私達も行った方がいい。でも……
「戦闘になる可能性がある以上、足手まといは…アム達だけだと確実に護れるのはクリスチーナ一人と考えないと…」
「「「捕まっては話になりませんしね」」」
それに貴賓席からあからさまに人が減ってるのもよくない。
他国に対する体面や、帝国に対する体裁もある。
白薔薇騎士団から人手を出してもらう?…ううん、白薔薇騎士団だって人手が十分とは言えないはず…御金があれば解決出来る手段があるけれど…
「話は聞かせてもらったわ!」
「ちょっ、ちょっとマーヤ…ノックもせずに…」
あの人は…グリージャ侯爵?財務大臣の…もう一人は黄薔薇騎士団の団長さんだよね。
「グリージャ侯爵…此処はノワール侯爵家が使用してる部屋です。いくら同じ王国貴族だからと言っても礼節は弁えていただきたい」
「まぁまぁ。硬い事言わないでよ、カタリナ殿。それよりもさっきの話よ。人手が必要なんでしょう?」
「…何か案が?」
「有るわ。冒険者を雇いましょう。御金は私が出すから、平気よ」
…それはまさに私が考えてた事だけど…でもね…
「御協力は感謝しますが…だからと言ってお兄ちゃん…ノワール侯爵様に口利きしたりしませんからね」
「うっ…せめてノワール侯爵に私が協力した事は伝えてくれるかしら」
「わ、私と黄薔薇騎士団も協力します」
…それくらいなら、まぁ…事実を報告するだけだし。
「…それで御二人は何か別の用事があったのでは?」
「あ、うん。…そう睨まないでよ、カタリナ殿。用件は二つ。ユウさん、貴女、私の家臣にならない?高給を約束するわよ。支度金もたんまり用意するわ」
「お断りします」
「あ、無駄ですよ。うちの娘はジュンにベタ惚れですから。どんな大金積まれても行かないです、はい」
それ以前に女王陛下の誘いを断ってるのに侯爵の誘いに乗るわけが…貴女もその場に居たじゃない。
「まぁそうよね。これはダメ元で聞いただけだから気にしないで。で、もう一つの用事。こっちが本命」
「ノワール侯に気に入られるにはどうしたらいいでしょう?」
「恥を忍んで貴女達全員に聞くわ。教えてくれたら御礼をする。教えてくれないかしら」
…なりふり構わずね。お兄ちゃんが一緒にいない今がチャンスと思ったのね。
でも、此処にお兄ちゃんの情報を売るような―――
「そんなの簡単ですよ。ジュンは困ってる、落ち込んでる女の子は助けずに居られない子だから。ジュンに相談したり弱ってる所を見せればいいんですよー」
「お母さん!?」
どうして言っちゃうかな?!しかもかなり的確なアドバイスを!
「そ、それは本当かしら!」
「あ〜…確かにジュンはそうだよな」
「優しいもんねぇ」
「ジュンは困ってる人は見捨てない。悪人じゃない限り」
それはそうなんだけど!この中にもお兄ちゃんに助けられた人は多いけど!今、言っちゃうのはダメじゃない?!
どうしてそれがわからないの?!
「なるほど…良い話を聞けたわ!御礼は金貨でいいかしら?」
「あ、なら帝国土産を孤児院に送ってもらえますか?」
「孤児院…ノワール侯が暮らしていた?」
「そうですそうです。私、普段は孤児院の職員で。私はジュンの母親みたいなものです」
「「お、御義母様…」」
……間違ってないけど!母親代わりを自認してるならお兄ちゃんを第一に考えてよ!
「わかりましたよ、御義母様!孤児院に沢山の帝国土産を贈らせて頂きます!」
「ありがとうございました、御義母様!」
ああ…行っちゃった。…あの二人の中でお母さんが重要人物になってそう…
「…お母さん」
「まぁまぁ、いいじゃない。ジュンを知ればいずれわかる事だし。孤児院の子供達も喜ぶし。それによくわからないけど、ユウの作戦?に協力してくれるんでしょ?ならお母さんとしては御礼の一つくらいしないとね」
…それは、そう、かもしれないけど…
「ジェーン先生は孤児院に食い物が送られるの期待してんだろ」
「食べ物ならジェーン先生も食べれるもんねぇ」
「食い意地張ってる」
「あら、バレバレ?」
ハァ…お母さんたら…でも人手が確保出来そうなのは助かる…かな。
これで何とかなる程度の事ならいいんだけど…




