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第206話 圧巻でした

『姫様の推薦である仮面の戦士…名前はギーメイ…はい、間違いなく偽名ですな。安直!』


 …悪かったな、安直で。偽名に拘りなんてないからなんでもよかったんだよ。


 てか偽名だとバラすな。


『皇帝陛下の推薦なのに偽名?しかも仮面とマントで全身隠してるし、もしかしてヤベェ奴なんじゃ?と、考えた貴女!御安心ください。とある事情で素性を隠してはいますが素性はなんら問題のない、むしろとても素晴らしい人物だと、素性を知る私が保証します!』


 …あんた、隠すつもりある?あるなら何も言わないで欲しいんだが。


『しかし素性、正体を隠すつもりならもっと目立たないようにすればいいのに仮面もマントも真っ白!異様に目立ちますなー。隠すつもりあります?』


 …ぬうおおお!あんたに言われたくねぇ!こっちが返事出来ないのをいいことに好き放題言いやがってからに!


 大体だな…ん?急に暗く―――


『さてそんなギーメイ選手の対戦相手ですが…こちらも異色です。今大会出場選手中最大の巨女!その名もマリリン!』


「がおおおっ!!」


 ……でかっ!え、人間?人間なの?このデカさで?!こんなデカい人、一回戦で居た?!熊…北極熊くらいデカいぞ!3メートルは確実にあるだろ!


 こんなデカいの見落とす事ないと思うんだけど!


 てか巨体で蛮族みたいな格好してんのに可愛い名前だな、おい!


 魔獣の毛皮か、それ!?


『マリリン選手は一回戦は不戦勝。彼女を見た途端に他の九人は棄権しました。故にギーメイ選手と共にこれが初戦。二人の実力は如何に!注目しましょう!』


 お、おう、なるほど。無理もない。威圧感が半端ないもんな。


 持ってる得物はアホみたいにデカいハンマーで、家だって破壊出来そうだもん。


 眼光も鋭いし…子供が見たら泣いちゃいそう。俺だって夜道で会えば身構えるだけでなく道を譲っちゃうレベル。


 だが俺Tueeeeeには良い相手か…どうやって勝つかな。


 …よし。

 

「用意はいいか……始め!」


「がおおお!」


 審判の合図と同時にマリリンはハンマーを振り下ろして来た。


 普通の人間なら距離を詰めなければ届かないくらいには離れているのだが、彼女は開始位置から一歩も動かずに攻撃して来た。


『マリリン選手いきなりの先制攻撃!ギーメイ選手は避けていない!まさか潰され…てない!これはー?!』


 マリリンは見た目通りパワータイプ。なら、そのパワーで上を行ってやろうじゃないか。


『う、受け止めています!ギーメイ選手、マリリン選手の巨大ハンマーを受け止めています!それも片手で!』


 ふっふっふっ…筋トレは欠かさずやってるし、身体強化魔法を使えばこれくらいの芸当は容易い。


 それにマリリンは見た目より優しいらしい。殺さないように手加減した一撃だった。


 だから俺も優しく勝とうじゃないか。


「がっ??!」


『こ、これは!持ち上げたぁ?!掴んだハンマーごと、マリリン選手を持ち上げたました!』


 んで、場外に向かってポーイ。これで俺の勝ちだ。


 ふっふっふっ…フハハハハハ!パワー自慢の相手により圧倒的なパワーで勝つ!しかも優しく!


 これはこれで俺Tueeeeeとして大いに有り!


『じ、場外!これは驚きです!まさかマリリン選手相手にパワーで上を行き場外に落とすという、とても優しい勝ち方!まるで子供扱い!見た目はマリリン選手が大人でギーメイ選手が子供なのに!』


 更に言えば魔獣の毛皮のせいでもあるが見た目が異様。


 獣のように叫ぶし、大概の人間はビビるだろうな。


 ほんと、棄権した人らは運がなかったとしか。


「あなた、凄いわね」


 え?今の声は誰…なんかアニメ声だったけど…


「何キョロキョロしてるの。あたしよ」


 マリリン?!この萌声の主がマリリン?!あんた見た目以外は可愛いんだな!


「何で黙って…あ、そっか。正体を隠してるんだっけ。だから喋れないの?」


 コックコックと。思わず大きく頷いてしまう。


「そっかそっか。じゃ、簡潔に。あたしはあなたが気に入ったわ。帝国北東部のフルトって街で手芸屋『マリリン』をやってるから、来てくれたら安くするわよ。その時は正体を教えてね。それじゃ」


 お、おう…その巨体で手芸屋…ギャップが凄い。


 見た目以外は本当に可愛いな。だからってギャップ萌~とはならんが。


『えーギーメイ選手。次がつかえてるので速やかに降りてくださーい』


 おっと。マリリンのギャップに驚き過ぎて動けずにいたわ。


 舞台から降りても視線を感じる…その中でも熱い視線を送って来るのが…


「ジー……」


「(近い近い。怪しまれますから離れてください、ジェノバ様)」


 やっと見つけたとばかりにジェノバ様が近付いて来た。貴女も目立つんだから、そんなにくっついて来たら関係を疑われてしまう。


「ジェノバさん。ギーメイが困ってるから離れてあげなよ。困らせるのは本意じゃないでしょ」


「…はい」


 アイも傍に来て注意した事でようやくジェノバ様も離れてくれた。


 メーティスも近くに…居るな。


 てか、この二人に挟まれるって目立つぅ。


「取り敢えず、場所変えよっか。ジェノバさん、人気の無い場所ある?」


「あります。普段は闘士の控室になっている部屋が」


 それなら今は選手が使ってるんじゃないかと言えば、そうでもなく。


 開放したとしても入りきらないので今は誰も使っていない。


 決勝トーナメントが始まる明日から使用する予定だとか。


「此処です。どうぞ」


「此処って…」


 例の間者疑惑満載の会話が聞こえた部屋か。


 なるほど、奴らもこの部屋の事を知っていたわけか。


「何か?」


「いえ…」


 …伝えるべきか?いや、まだメーティスからの報告が上がってないしなぁ。


 先ず間違いなくアインハルト王国の間者では無い。でもメーティスの報告を聞いてから…もしくはアニエスさん達と相談してからがいいよな。


「…で、何か話がある…と、一応結界を張っておくか」


「あ、うん、お願い。ちょっとヤバい話だからさ」


 ヤバい話?アイの方でも何か見つけたのか?


「よし、いいぞ。これで俺達の会話が外部に洩れる事はないと思う」


「ありがと。話は二つあってね。一つ目はブラックって名乗ってる女。アイツと接触したいの。協力してくんない?」


 ………なんで?

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