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第180話 動き始めました

「内乱って…同じ国の人間同士で戦うって事だよな」


「えー…どうしてそんな事するの?」


「内輪もめ、よくない」


「……」


「zzz…」


 無言だったから居ないと思っていたかもしれないが、アム達もちゃんと居る…むしろ冒険者に聞かせていい情報なの、今までの会話って。


 ノワール侯爵家の家臣だから問題無い?ああ、そっスか…


「じゃあ詳しく聞かせてもらえますか。ドライデンが内乱の危機というのは間違いのない話なのですか?」


「もちろんだ。我がブルーリンク辺境伯家はドライデン連合商国から王国を護る盾としての役目を頂いている。仮想敵国の情報は逐一収集させている。怠ったりはしない」


「では…二つに割れての内乱と仰いましたが二つの派閥があると言う事ですよね」


「うん。一つはこれからは男性が国を支配し導くべきだと、それに相応しい存在を王に頂こうと主張する派閥。もう一つは男は子を作る為の道具に過ぎず、足りないなら買って来ればよいと主張する派閥。どちらも男に焦点を当てているが、後者はもう救いようが無いと私は思うな」


 …もしかしなくても後者の派閥が王国に対して色々…誘拐やら魔草栽培やらやってた奴らの黒幕か。


「ところがそうでもない。誘拐事件の黒幕は前者…私達は派閥の長、エスカロンの名でエスカロン派と呼んでいるが…誘拐事件の黒幕はエスカロン派と見ている。対して魔草栽培の黒幕は後者…アルカ派だと見ている」


 …前者はまだまともな思想かと思えばやってる事は禄でもないってのは一緒か。


 しかもエスカロンって。俺にドライデンに来るよう招待状を出した奴じゃないっけ?


「何にせよ、ドライデンという国が一つにまとまっていないのは確か。そんな状態で正面からぶつかってくるとは思えない」


「恐らくは何らかの功績を挙げて派閥の強化をしたい、といったとこですね」


 何らかのって…この要塞に痛手を与えるだけでいいのかね。返り討ちにあって全滅でもしたら支持を失うし。


 いや…ドライデンの戦力はほぼ傭兵と魔獣。失っても痛手では無いし、捕虜になってもトカゲのしっぽ切でドライデン上層部には辿り着けないって、パターンか。今までと同じように。


「それじゃ今回仕掛けて来るのはどちらの派閥ですか?」


「それは掴めていない…でもアルカ派だろうね」


「アルカ派の方が勢力が大きいんです。ですから――」


 傭兵とはいえそれなりの戦力を此処に集めれば、大きな隙になる、と。


「そういう事だね。どちらの派閥の戦力だとしても叩き潰す事に変わりはない」


「でもお姉様。ドライデンが此処まで露骨に、大々的に動くのは近年、例の無い事です。決して油断は――」


「わかっているよ。だからカミーユ、お前はもう帰って有事に備えていてくれ」


「……嫌です」


「フフッ、心配しなくていい。私も未婚のまま死ぬつもりは無い。どんな事があっても―――」


「いえ、お姉様の心配はしていません。ただノワール侯爵様の傍に居たいだけです」


「よし帰れ」


 …突然姉妹の仲に亀裂を入れるのやめてくれませんかね。いたたまれなくなるじゃないか。


『理由はマスターやねんから、亀裂入れたんはマスターになるんやない?悪い男やなぁ、マスターは』


 だからそういう俺の罪悪感を煽るような事言うのやめない?


「……はぁ。取り合えず大体の事はわかりました。じゃ、仕事の説明をしてもらえますか」


「…そうだな。ノワール侯爵達には要塞周辺を巡回してもらう事になる。具体的には――」


 そこで漸く仕事の話に。本来なら騎士や兵士がやる巡回警備を冒険者に補わせる事で交代で休暇を取らせたいらしい。


 休暇と言っても要塞内で待機になるが。ずっと働きづめってわけにもいかないしな。それはわかる。


「あの…ノワール侯爵」


「アズゥ子爵?なんでしょう」


「先程の勝負で私が負けた際の要求ですが…ノワール侯爵の手柄を私のモノにするとは一体…」


「ああ、それですか。言葉通りの意味ですよ。アニエスさん…ローエングリーン伯爵やレーンベルク団長から目立ちすぎだと言われまして」


 これ以上功績を挙げても陛下も扱いに困ってしまう。増々言い寄って来る女も増えるし暫く自重しろ、というのは未だに言われている。


 とはいえ俺Tueeeeeをすると功績は付いて来るだろうし。ならば功績を押し付ける相手が居れば問題無し、というわけだ。


「は、はぁ…いや、しかしですね、青薔薇騎士団副団長の私が他人の功績を奪うなど…」


「まぁまぁ。奪ったわけじゃなく俺が譲るんですし。それに俺が功績を立てたらの話で、一番大きな功績だけ貰ってくれれば結構ですから」


「ですが…」


「あれあれ~?自分から勝負を吹っ掛けて、負けたらごねるんですか~?」


「うぐっ!わ、わかりました…」


「…功績を立てたらジーク殿下が褒めてくれるかもしれませんよ」


「はう?!い、いや、他人の功績で褒められても…」


「もしかしたらジーク殿下の婚約者になる事も可能かもしれな――」


「な、な、舐めないでもらおうか!ノワール侯爵!ジーク殿下の婚約者には実力でなってみせる!他人の功績でなってなんの意味があろうか!」


「…だったらジュンの手を離せよ」


「ガッチリと握手して…取引成立してない?」


「身体は正直」


 それとジーク殿下に惚れてるの隠さなくていいのかね。手遅れだけど。


「…ジーク殿下の婚約者になれるほどの功績となると、相当の大事件が起こる事になるのだがね」


「ノワール侯爵様がいらっしゃれば大丈夫ですよ、きっと」


 それはアイツらが何を待ってるのかによるかな。俺Tueeeeeの為にも特大の隠し玉を期待しているんだが。


『何で何かを待ってるってわかるん?わて、そんな報告してないで?』


 だってあくまで国境付近のヤツらは陽動。本命はどこか別にいる。


 その本命の準備が整うのを待ってるから仕掛けて来ないんだろ。それか陽動だとしても戦力が足りてないから補充が来るのを待ってるか。或いは両方か。


 どちらにせよ、その作戦は叩き潰されるわけだが。可能なら本命の方も潰したいなぁ。どうせ碌でもない作戦に違いないし。


『確かに。引き続き本命の方探してみるわ。しっかしマスターも成長したやん。わてに言われんでも考える事出来るようになってるやん』


 …まるで普段は考え無しのバカみたいな言い方はやめい。


「兎に角、話は終わりですね。それじゃ早速仕事しますか」

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