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第164話 気に入ってました

「「「「「ぽっ」」」」」


 …なんか、俺を見て微動だにしないが…取り敢えずは治療だな。


「か、回復魔法?」


「凄い…折れた脚まであっというまに…」


「あ、ありがとうございます侯爵様…って!」


「侯爵様、身体!」


「せ、石化してますよ?!」


 え?うおう?!マジやんけ!


『大丈夫大丈夫。マスター自身は石化しとらへんから。石化したんは防具と衣類だけ。それも上半身だけやから』


 なんだ、そうか。でもサーコートと軽鎧がダメになっちったな。


 まだそれほど使ってないのに…作り直しか。


「ジュン!無事かよ!って、あああ!」


「いやぁぁぁ!ジュンが!ジュンが石になっちゃう!」


「は、早く街に!」


 大急ぎで戻って来たアム達まで石化した防具を見て慌て…いや、取り乱している。


 よくみりゃ石化は途中で止まってるってわかるんだけどな。


 無理もないけどな。


「大丈夫だから落ち着け、ほら」


 剣の柄で石化した部分をガンガンと叩けば防具は崩れ落ちていった。


 見えてくるのは素肌だ。勿論、肌色の。


「大丈夫なわけ!…って、防具だけ?」


「な、なんだ…ビックリさせないでよ!ジュンのバカァ!」


「お仕置き確定」


「ま、まぁ?あーしは心配してなかったけどね」


「わふわふ!」


 肉体は石化してないと知って漸く安心して落ち着いたらしい。


 さ、泣き止んたなら撤収準備を―――


「いやいやいや!侯爵様!まずいですよ、その格好は!」


「は、早く何か着てください!」


「へ?」


 ……あぁ。そうだった。上半身だけとはいえ、外で男が人前で裸になるのはおかしいって世界だった。


「って、お前ら!ジュンを見るんじゃねぇ!」


「ジュンの裸を見ていいのはわたし達だけなの!」


「散れ。さもないと眼を潰す」


 …そんな事、誰が決めたんだ、カウラ。


 眼を潰すのはやり過ぎだぞ、ファウ。


「「「「「も、もう我慢出来ない!、侯爵様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」」」」」


 る、ル○ン飛びだと?!飛びながら防具はおろか、服にブラまで?!


 パンツ一枚だけ残して全部脱ぎ去りやがった!しかもフォーメーション土下座と同じくVの字型フォーメーションで!


 こんな所でナニ考えて―――お?


「「「「「ぶべらぁぁぁぁぁ!!!」」」」」


「…ドミニーさん?」


「……」


 俺に向かって飛び込んで来た五人を盾で吹き飛ばしたのはドミニーさん。


 俺は嫌われていると思っていたが、護ってくれたらしい。


「ありがとうございます、ドミニーさん……あれ?」


「……」


「さっさと服着ろ、変態。だってさ」


「辛辣ぅ…」


 盾で俺を見ないようにしてるのは俺が嫌いだからか、男の裸を見ない淑女だからか…どっちにしろ変態扱いは心外です。


「はいはい、わかりましたよ……ん?なんです?」


「……」


「それはそれとしてタイラントバジリスクの素材は私に任せてくれるよな?何せお抱え鍛冶師だからな。だってさ」


「ちゃっかりさん…」


 じゃあ石化しちゃった俺の防具を作って……任せろ?鍛冶が絡むと男だろうと問題ないんすね。


「はっ…一体何が…」「何で私達は裸なの?」「もしかして…侯爵様に脱がされた?」「ええ!こんな青空の下で?!」「の、望むところです、侯爵様!」


「馬鹿言ってないで、帰りますよ」


 それから念の為、他にもタイラントバジリスクが居ないか、慎重に確認してから王都へと戻った。


 彼女達の馬車は壊れていたがドミニーさんが応急処置。ゆっくり進む分には問題無い程度には直していた。


 馬も骨折していたが魔法で全快。元気ハツラツで王都まで歩いてくれた。


「おお、帰って来たか…なんだ『ファミリー』と一緒に帰って来たのか?」


「ええ、まぁ…だからイチイチセクハラするの止めてくださいってば」


 冒険者ギルドに入ると、当然のようにステラさんの出迎え。流れるように俺の尻を揉み始めた。


 いい加減に飽きませんか、このパターン。


「チッ…それでAランクの依頼はどうだった?」


「達成しましたよ、討伐完了です」


「ほう。討伐したか。ま、お前達なら大抵の魔獣は―――」


「いや、今回の魔獣はかなりやべぇ魔獣だったぞ」


「何せタイラントバジリスク…Sランクの魔獣だったもんねぇ」


「激ヤバ」


「――何?」


 そこでザワッと職員含め周りが騒ぎだしたので個室へ移動。そこで詳しく話す事に。


 証言するからと『ファミリー』も着いて来たが死体があるんで必要ないんですがね。


「…なるほど、タイラントバジリスクが…遠目に見れば確かにドラゴンに見えなくもないな…しかし、よく倒せたな。石化対策を用意していたのか?」


「……」


「そんなモノは無い。そこの馬鹿が無謀な事して、運良く石化前に倒せただけだ。だってさ」


「……ドミニーの考え、良くわかるな、お前」


 …説教なら帰り道で散々されたので御勘弁を。


 話の矛先を変える為にタイラントバジリスクの一部を提出、間違い無いと認められた事で無事依頼達成となった。


「よっしゃ!これであたいらBランク昇格試験、受けれるんじゃね?」


「どうかな?」


「きっと受けれる」


「あ、あぁ、そうだな。受けれる、問題無く受けれるが…」


「なんだよ、何かあんのか?」


「ついさっき気が付いたんだがな。お前達、パーティーを組まないのか?」


「「「は?」」」


 パーティー…俺とアム達でか?いや、何で今更…


「ランクが離れてると、寄生だなんだと騒ぐ輩が居るが、今は同じランクだろう。まぁ…BランクとCランクがパーティーを組んでいてもおかしくはないから、問題無いが…同じパーティーになれば無理に引き離そうとする輩は減るだろ」


 そう言えば俺はアム達と同じCランクなったんだった。


 で、パーティーを組むなら同じCランクの内に組んでおけって事か。


「ランクが上の冒険者対策は今回のように偶にドミニーと臨時パーティーを組めば問題無いだろう。なぁ?」


「……」


「偶になら構わない。だってさ」


「…本当によくわかるな」


 つまり高ランク冒険者対策はこれで完了。焦ってランクを上げなくてよくなったって事か。


 パーティーを組んでもソロ活動が出来ないわけじゃないし…どうせ大体は冒険者活動時はアム達と一緒だからな。まぁ、良いか。


「俺はそれで構わな―――」


「そりゃダメですよ、侯爵様!」「男が一人で女だけのパーティーに入るなんて!」「うらやま…いえ、危険ですよ!」「間違い無く襲われますって!」「女は狼ですよ!」


 Oh…あんたらが言うのな。あんたらに言えた事じゃない筈だが。


「あんたらと一緒にすんじゃねぇよ」


「わたし達、ジュンを襲った事なんてないもん」


「ずっと忍耐の日々…我慢強さには自信がある」


 そうかなぁ…最後の一線を越えてないだけで色々されてると思うけどなぁ…むしろ俺がよく我慢出来てるなって思える程には。


「じゃ、じゃあ!私らのパーティーに入ってくださいよ、侯爵様!」「何でもします!」「細々した雑用から日々のお世話だって!」「そりゃあもう使用人の如く!」「何だったら性奴隷にでも!」


「はい、御断りしまーす。土下座してもダメでーす」


 どうしてそう流れるようにフォーメーション土下座するかな。


 三つ子もビックリの息の合い方だよ。


「ぐ、ぐぐぐ…な、ならアム!私達と勝負――」


「仮にアム達が勝負を受けて貴女達が勝ったとしても何も変わりませんよ」


「「「「「う、うぅ…」」」」」


 そんな眼で見られてもなぁ…これ以上婚約者候補を増やすつもりは…


「…はぁ。お前達、騎士になったらどうだ」


「ステラさん?」


「「「「「騎士?」」」」」


「知っての通りジュンは侯爵だ。だが再興したばかりのノワール家だ。だから…」


「そ、そうか!ノワール侯爵家に仕える騎士がいないのか!」


「つまり…騎士を募集するって事?」


 あぁ…確かにノワール家に仕えてくれる騎士や兵士を雇う必要があるって話はアニエスさん達としたけど…ローエングリーン家や白薔薇騎士団の身内から推薦するって話だったような…


「実際、どのくらい募集するかは知らん。だが全く雇わない、なんて事もないだろう。なぁ?」


 ……これは上手く誤魔化せって事か。


「…そうですね。いつ、何人募集するかはわかりませんがAランク冒険者の皆さんなら騎士の資格を得るのは容易いでしょうし、募集に備えてみては?」


 嘘は言ってない。


 募集しないかもしれないし、騎士になるのが容易いのも本当。


 だからノワール家で雇われなかったとしても嘘は言ってない。


「そ、そうか、その手が…」「わっかりました!私達騎士になります!」「待っててくださいね!」「必ず応募します!」「その時は宜しくお願いします!」


 と、早速騎士になる為に動き出すらしい。『ファミリー』は全員出て行った。


 王国では騎士は準貴族。それなりの身分が保証される。冒険者活動も認められてはいるが…以前よりは確実に縛られる。


 そこんとこ、わかってんのかなぁ。


「良いのかよ、ジュン。あんな事言って」


「募集しなくっても家臣にしてって言って来ると思うよ?」


「絶対来る」


 その時はその時。一応は一緒に冒険した仲だし、話を聞くらいはしてもいいだろ。


 ま、名前と顔が一致してるのコズミさんだけだけど。


『そういや自己紹介もしてへんもんな、あいつら。でも裸も見たし、フォーメーション土下座とかル○ン飛びとか、おもろいって思ってんねやろ?』


 …まあな。なんであんな技術を身に付けたのか…理由を想像すると不安になるけど騎士として雇うくらいは…してもいいかな?


『ふぅん…やっぱ気に入ってたんや。マスター好みのおっぱいもあったしなぁ。それ狙いか?』


 そんなこたぁないわい!


「ジュン、どした?」


「いや、なんでも…それじゃ帰ろうか」


「ああ、いや、待て。まだ話がある。ドライデン方面でまた怪しい動きがあるらしい。傭兵を集めたり武器を買い付けたりな」


 …戦争の準備にしか聞こえないんだが?


 男が足りなさ過ぎて戦争を起こして奪うとかか?


「目的はわからん。だが戦争をするには規模が小さ過ぎる。戦争以外の何かだな」


「…どうしてそれを俺に?」


「お前はなんだかんだでドライデン絡みの事件に係わってるじゃないか。それに確かドライデンから招待状が来たんだろう?狙いはお前かもしれないんだ、注意しておけ」


 …ああ、そうだったなぁ。


 都市ガリアの代表エスカロンだっけ?


 今回もそいつがやってるんですね?あぁ…やだやだ。

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