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第147話 謎が少し解けました

 ハティのダーティプレーにより地下空洞に生息していた魔獣は一時的に姿を消した。その為、魔獣はおろか動物にも遭遇する事なく歩みを進めていた。


 実に遺憾である。


『いや遺憾て…ハティは悪い事したわけやないやん。それにダーティプレイって。客観的に見ればスーパーファインプレーやろ。一手で数百のスケイルバットを無力化して全員無傷…褒めて然るべきやろ』


 それは頭ではわかっているし、ハティを責めるつもりはないのだが。心が不貞腐れるのまでは止められない。


『はぁ…ほんとにもう…俺Tueeeeeの事になると視界が狭くなるんやから。そんなんでほんまに大丈夫か?犠牲者出したくはないんやろ』


 うっ…き、気を付けます。


「ジュンは何で不機嫌そうな顔してんの?」


「空腹ですの?」


「空腹で不機嫌になるとか子供か…うん?」


 地下空洞を歩いていると遠目にも太陽の光が差し込んでる場所、つまり天井が無く地上と繋がってる場所だと判る。


 それだけじゃなく光が差し込んでる場所がキラキラと光って反射している事からそこには水がある事も判る。


「地底湖ってやつ?」


「みたいですわね…深さはわかりませんが、結構な大きさですわね」


「すんすん…がうううぅぅぅ!」


「どったのハティ…って、うわお」


 地底湖の水面が突然盛り上がったと思えば中から出て来たのは鯨。全長15mくらいの、大きな背が赤く腹が白い鯨だ。


 地底湖だし淡水だと思ってたが海水なのか?それともこの世界の鯨は淡水域にも生息しているのか?


『魔獣やからやな。アレは色が変わっとるけどシューティングスターホエール。鼻から魔力で固めた水や食べた魔獣の骨を飛ばしたりするんや』


 その攻撃が流星みたいだからシューティングスターってか?で、アレは魔獣なのか…襲って来たら厄介だな。俺は大丈夫だけど、アイ達が水中に引きずり込まれたら厄介だ。


『大丈夫やろ。シューティングスターホエールは好戦的な魔獣やない。って、おおう?』


 シューティン…鯨が潮を吹く…って、アレは呼吸だったか。兎に角、鯨が吹いた水柱は天井の穴を通って外へ。そして雨となって森に降り注いで――


「って、水量多いな!」


「すごーい。この水柱、何十メートルあるのかな」


「あ、虹が出来てますわよ。鯨は…潜りましたわね」


「わふふ」


 あの高さ、あの水量だと相当な広範囲に水がばら撒かれたと思うが…まさか昨日降ったのは雨じゃなくて鯨が吹いた潮?いやいや、まさかね…


『どうやろうなぁ…この地底湖が何処まで広まってるか知らんけど、同じような場所が他にもあって複数個所で同じ事してたら…どうやろな』


 可能性はあるって事か…それにあんなデカい鯨が生息してるって事はこの地底湖は相当デカいのだろう。


『それはそうやろな。で、ちょい気になってるんやけど、ちょいあの地底湖の水、掬ってくれるか、マスター』


 水を?いいけど…コップで掬えばいいか?


『水中にある魔獣の反応はあの鯨だけやけど、気ぃつけるんやで。あ、あと透明なグラスがマスターにもわかりやすくてええんとちゃうかな』


 透明のグラス?そんなん収納してたかな……入ってるわ。いつ入れたっけ、こんなワイングラス。


「ジュン、何調べてんの?」


「まさか地底湖の水、飲むんですの?」


「飲まない。イーナじゃあるまいし、そんな迂闊じゃない」


「うっ…やっぱり不機嫌ですの?」


「…不機嫌じゃないって」


 少しトゲのある言い方だったかな…で、この水……無色透明に近いけど、薄っすらと色が付いてるな。ピンク…いや赤か?この森は地底湖の水すら赤いのか?


『いや、多分逆やな』


 逆?逆と言うと、この地底湖の水が赤いから上にある森も赤くなったと?


『多分やで。この地底湖と同じ水、森全体に広まってるんちゃうかな。何故、水に赤色が混ざってるのかは詳しく分析しなわからんけどな。でも、森の動植物と同じで極微量の魔力がこの水にも含まれとるで』


 …なるほど。今のように鯨がばら撒いたり、森の何処かに湧き水として地上に流れ出てたり。どういう形でかはわからないが森に棲む動植物の飲み水として活用され飲み続けた為に赤くなっていったと。


『長い長い時間をかけてな。もう遺伝的に赤くなってこの森の固有種みたいになってると考えていいと思うけどな』


 つまりこの森の生物を他所で育てて繁殖させても赤いままって事ね。


「ジュン、ジッと水見たまま無言だけど、何か解かったの?」


「ん、あ、ああ…この水も薄っすらと赤みを帯びてるなってね」


「ええ?ん~…あ、本当ですわ」


「じゃあもしかして、この水を飲めば昨日の野イチゴと同じように森の中で急に進行方向変えたりしなくなるのかな」


「…可能性はあるな。ま、それは今度調べるとして、だ。先に進もうか」


 地底湖を避けるように進む事一時間。俺達が入った入口から結構な距離を歩いたとは思うが…魔獣が襲って来る事も無く、地底湖以上の発見も無い。


 このまま何も発見が無いまま地下空洞の探索は終える…なんて未来は勘弁願いたいが。


『おっとぉ、その心配は無さそうやでマスター。この先に強大な魔力を持った何かがおるわ。多分、ドラゴン。ミスリルドラゴン級のな。それも複数体』


 おおう、ドンピシャかよ。それが本当なら後はベルナデッタ殿下の予言のように背中に乗せてくれるような友好的な存在なら…って、多分?


『未知のドラゴンっぽいねんなぁ。デウス・エクス・マキナのデータバンクに入ってないって事は神様も認知してない新種のドラゴンの可能性が高いっちゅう訳で』


 そうなのか…もし戦闘になったら空間転移でアイ達を先に逃がすぞ。流石に複数体のドラゴンを相手にするんじゃな。負けないにしても万が一があるかもしれんし。


『合点。まぁマスターなら瞬殺出来るとは思うけど、ちょっとは反省してるやん』


 …そりゃさっき反省したばかりだからな。っと、どうやら終わりが見えて来たな。


『ん?そうみたいやな…って、なんや、アレ』


 地下空洞を進んだ先には今までよりも大穴が空いた…というより、天井の無い空間があり、そこが地下空洞の終わりのようだった。


 それはいいのが…問題はそこに鎮座しているモノだ。


「…ねぇ、ジュン。アレはヤバくない?いや死んでるっぽいけどさ」


「なんて巨大な…アレはドラゴンですの?」


「…正確にはドラゴンだったモノ、だな」


 そこには犬がする伏せのように寝そべりながらも地下空洞から地上にまではみ出し鎮座する、頭蓋骨だけでも地底湖にいた鯨よりも巨大なドラゴンの骨が存在していた。


 まるで俺達を出迎えるようにこちらを向いて。

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