第145話 地下空間でした
「グスッ…スンッ」
「…もういい加減泣き止みなさいよ。折角御風呂に入ったのに、また汚すつもり?」
「またとか言わないでくださいまし!」
今日は俺が用意したコテージで休む事になり。先に御風呂に入ったアイとイーナが出て来た。
…俺も入るつもりだけど、お湯は入れ替えよう、うん。
いや、特に他意は無いんよ?ほんとに。
「あ、ジュン。御風呂空いたよ。……何してんの?」
「何って、洗濯」
「洗濯って……いやぁぁぁ!止めてくださいまし!」
「あっ」
洗濯機なんてないから手洗いで汚れてしまったイーナの下着を洗っていたのだが…何をそんなに慌ててるんだ?まだ途中なんだけどな。
「だから返しなさい。ほら、水滴で床を汚してるから」
「嫌ですわ!自分で、自分で洗いますから!ジュン様は何もしないでくださいまし!」
「孤児院じゃ普通にやってたから、気にしなくていいよ。だから、ほら」
「い・や!ですわ~!!」
「…ジュン、今回は止めてあげなよ。ほら、御風呂入って来たら?」
何故かアイにジト目で風呂に行くよう促されてしまった。何か悪い事でもしただろうか…
『うん、まぁ…マスターは孤児院でもおねしょした子の世話とかしとったから感覚が麻痺しとるんかもしれんけど、成人後にお漏らしするって凄い恥ずかしいし、汚れた下着を洗われるって更に恥ずかしいんちゃう?同じ年頃の異性に洗われるとか尚更』
………うん、まぁ、そうね。確かにそうだわ。女として生きて来たと言っても前世の男とそう大差ない振る舞いで生きて来たから女らしさなんて皆無だと思ってたけど…初めて弊害が出て来たな。
「ふぅ、スッキリ…って、まだ落ち込んでんの?」
「まだどころかずっとですわ…一生忘れられませんわぁ…」
風呂から上がってリビングに戻るとテーブルに突っ伏したイーナと何かをスケッチするアイが。
…つか、二人共風呂上りでラフな格好なのはわかるんだけどさ。
イーナは、ね。ノーブラでそんな風にテーブルに倒れ込んでると…はみ出ちゃうぞ?
「で、アイは何をスケッチしてるんだ?」
「さっきまでのイーナの泣き顔を。巨乳で美人な貴族令嬢の泣き顔とか貴重だし。記憶が鮮明な内に残しとこうと思って」
「残さないでくださいまし!わたくしにとっては消し去りたい大事件ですのよ!」
…アイに俺を責める資格はないな、うん。カメラで撮ってないだけマシなのかもしれないが。
「えー…でもイーナだってウチに自分をモデルにしたエロ漫画を描いて欲しいって言ったじゃん」
「そ!それは…それはそうですが!何も今じゃなくてもよろしいのでは!?」
おう…イーナ、お前もか。自分をモデルにした内容のエロ本とか…普通嫌だと思うんだがなぁ。
「全くもう…油断も隙も無い…無断で泣き顔なんて絵にしないで欲しいですわ」
「ごめんごめん。…でも、ちょっと元気出た?」
「うっ…励ますならもう少し別のやり方でお願いしますわ」
「えへへ。ごめんね」
…今の、励ましだったのか。わかりにくい…実際、多少は元気が出たみたいだからいいけどさ。
「大体さ、恥ずかしい所見られたって言っても見たのは同じ女のウチとハティ。それに婚約者のジュンだし。ジュンにはいずれもっと恥ずかしいとこ見せるんだから気にする必要ないじゃん」
「気にしますわ!それにもっと恥ずかしい姿って何ですの?!」
「それはジュンの性癖に依るんじゃないかなぁ。妻が千人以上も居るなら複数人プレイは当たり前にあるだろうし。ジュンはそこんとこどう思ってる?」
「ノーコメント!」
なんちゅう事聞くんやお前…そんな不満そうな顔しても俺は答えない。答えんからな!
「…ぶぅ。まぁいいや。それじゃ明日の話しようよ。今日はもうこのまま此処で休むんでしょ。明日はあの穴から地下に行くの?」
「そのつもりだ」
あの地下へ続くトンネル…先んじてメーティスに偵察機を飛ばさせたのだが進んだ先には広い地下空間があった。
土の壁ではなく鍾乳洞のような空間が広がっていて生命反応もあったそうだ。
が、その先に何があるかは確認させていない。
何故ならば!恐らくは誰も知らない地下空間に進むなんて、すっごく冒険者っぽいからだ!
折角の未知なる空間あるのに偵察機で全て知るなんて野暮な真似出来っか!
『…未知なる場所こそ偵察が重要やと思うで、普通は。マスターは大丈夫やとしてもイーナは怪しいから注意せねあかんで。アイとハティかて大物が居たらもしかするし。気を配らなあかんで』
それはわかってるよ。だが俺が居る限りどんな危険からも護る所存!むしろ俺Tueeeeeの為に危険カモン!welcome!
『…前々から思ってたけど、それって危ない思考しとるで?まぁ、わてがフォローするけどな』
危ない思考?…確かに自分から危険を望むってのは危ない思考か。他人を巻き込みかもしれないと考えれば尚更な。
…うん、注意しよう。俺Tueeeeeは俺の至上目的だけど、誰かを犠牲にするつもりは無いのだ。身内ならば尚更だ。
『ふ~ん…アイとイーナは身内なんや』
そこ踏み込むの!?いや、そりゃね?一応は婚約者ではあるわけだし?赤の他人では無いし他人と呼ぶには無理があるし。
今更二人を他人と呼べるほどに薄情ではないつもりだ、うん。
『なら尚更注意するんやで。油断大敵やで』
お、おう…やけに念押すな。了解しました。
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んでもって翌朝である。
どうやら夜中に少し雨が降ったようで、地面に水溜まりがある。
地下空間に水が溜まってる、なんて事はないと思いたい。
「さてさて。行きますか。今日は俺が先頭ね」
「そ、それはダメですわ!殿方に一番危険な役割を任せるなんて!」
「ウチが守ってあげるから大丈夫。さ、いこ」
「わふっ」
イーナの反対を押し切り、松明を手に地下へ。入口は斜めに下っているが地面がザラついているし石があって凸凹してるので滑り落ちる事は無さそうだ。
そんな土と石で出来た道を下って行き、途中から壁も地面も無機質な岩になった。
雨が降ったせいなのか、少しひんやりとする。
斜めの道が終わるとそこに広がってるのはメーティスが言った通りの鍾乳洞のような空間。
壁が水で濡れてはいるが…壁は石灰岩ではなさそうだ。
高さは3m…いや5mはあるか?松明の灯りで見える範囲では先が見えない。
「はてさて…この先に何があるのかな」




