第138話 助けてもらいました
「という訳で。助けてください」
「どういう訳なのよ…」
ミスリルドラゴンの番を一ヶ月以内に見つけないといけなくなった俺達。
以前、ステラさんから貰った情報を元にアニエスさんが部下を使って探してはいたのだが、今の所有益な情報は無し。
本腰を入れて探そうにもステラさんの情報だけを頼りに探すには範囲が広い事もあって人手も時間も足りない。
そこで思い出したのがエリザベスさんだ。
以前、フランのお父さんを見つけた御呪い、いや魔法?だったか。
アレに一縷の望みを託しエリザベスさんに会いに来たのだ。
と、いう事を説明した。
「ふうん…なるほどねぇ。ドラゴンの番を探すとか、面白い事やってるわね」
「…面白いですかね?結構焦ってるんですが」
女王陛下からミスリル鉱山を下賜されてまだ一月も経っておらず。
なのにもう廃鉱になったとなれば騒ぐ連中が必ず出て来る。
アニエスさんとソフィアさんも、伯爵としての資質を問われる事態になりかねないし、イーナの母親であるレンドン伯爵も協力していたので同じように巻き込まれかねない。
ユーバー商会もミスリル鉱山の運営に出資していて頓挫すればかなり拙い事になるから何とかしてくれとベニータに泣きつかれた。
…やたらと俺の身体をまさぐって来たが、その為の演技では無かったと信じたい。
「それに貴方、男だったんだ…しかも侯爵、ね。へぇ、ふうん…」
「…それで、協力してもらえます?」
「良いわよ。ただし、今回は貸し一つ、ね」
エリザベスさんに借り一つ、かぁ。
何となく嫌〜だなぁ。仕方ないけど…
「じゃ、始めるわよ。王国の地図を出して。貴方は手を置いて、貴方が抱えてる問題の解決を願いなさい」
フランの時とほぼ同じ手順。そして今回もある一点が光った。
「此処は…王都?」
「王都ね」
…どういう事だ?王都にドラゴンが居るとでも?
「そう結論を急がない。次は王都の地図を出して」
同じ手順を、今度は王都の地図を使って行う。
すると次に光ったのは…王城?
「いやいや…いくらなんでも王城にドラゴンが居るわけ…」
「そうね。ドラゴンは居ないでしょうね。でも貴方の問題を解決してくれる人なら居るかもしれないわ」
…ミスリルドラゴンの番と成りうるドラゴンを知ってる人物が王城に居るって事か?
「兎に角、王城に行ってみなさいな。探し物が三ヶ月位内に見つかる御呪いもかけてあげるから」
「…ありがとうございます」
という訳で。ソフィアさんと合流して王城へ。
アニエスさんは忙しく動き回ってるので、今回はソフィアさんのみだ。
「それで王城に来たのは良いけれど…どう探すつもり?」
「手当たり次第に利いて周る訳には行きませんもんね」
ミスリル鉱山が廃鉱になりそうだから協力して!なんて言える筈もなし。
取り敢えずは…
「アイに協力を頼みましょう」
「殿下先生ね…そうしましょう」
ジーク殿下も協力してくれるだろうけど、アイが先だ。
断然アイの方が良い。
『え〜?ジークとイチャイチャせぇへんの?』
そういう反応する奴が多いから嫌なの!ソフィアさんも鼻息荒くなるしさぁ!
ここの所、急激に腐女子が増産されてる気がするんだよなぁ…その元凶はアイで間違い無いと思うが。
「で、ウチに会いに来たって訳ね……はい、これもベタよろしく!」
「今回は締切に余裕で間に合いそうですね、殿下!」
アイに面会を希望して案内役のクオンさんが来て通されたのはアイの仕事部屋。
以前と違い修羅場ってない。アシスタントさんが増えているのが余裕を生んだ原因か。
「ふぅ…これで一段落っと。…勿論、ウチも協力するけどさ。こういう場合、ウチよりベルを頼るべきなんじゃない?」
後半は小声で話すアイに同意する。当然俺もベルナデッタ殿下の予知…未来視に期待する事を、エリザベスさんの御蔭で思い付きはしたが…以前も言っていたが、メーティス曰く。
『ベルナデッタの未来視は望んだ未来を視れるような便利なモノやないで。何でも望んだ未来を視れるなんて…神様でも無理やねんから』
との事だった。
どんな未来でも望めば視れるなら、それは確かに神様以上の力なんだろう。
だからベルナデッタ殿下に期待し過ぎてはダメなんだ。
まして、彼女はまだ子供なのだから。
「それに、今はベルナデッタ殿下に簡単に会えないだろ」
「…そうだったね。ウチかジークが一緒じゃないとね」
女王陛下にベルナデッタ殿下の能力を話して以来、箝口令は未だに布かれたままだし、ベルナデッタ殿下の周囲の警備はより厳しくなった。
俺が単独で面会を希望しても通らないのは確実だ。
「んじゃ、ベルに会いに行こっか。他に当てもないんでしょ?」
「…だな。仕方ないな」
期待し過ぎてはダメだと言ったばかりなのにアレだが…アイの言うように他に当ては……お?
「これはこれは。アイシャ殿下にノワール侯爵。ご機嫌如何かな」
「珍しい所で会うわね、宰相」
アイの仕事部屋を出て少し歩くと、曲がり角から宰相ブロンシュ侯爵が姿を見せた。
叙爵の儀以来だな。
「レーンベルク伯爵も一緒だったか。最近は城内で見かけなかったが。少し痩せたかな?お疲れのようだ」
「…平気です。宰相閣下こそ、お忙しいのでは?こんな所に居て宜しいのですか?」
「年寄りにも息抜きは必要でな。ノワール侯爵が来ていると聞いたので、目の保養をさせて貰おうと思ったのだ。同じ事を考えている連中が、ほれ、後ろに居るぞ」
宰相の後方を見ると…確かに行列が。
仕事はどうしたんですかね、皆さんは…
「…そうですか。しかし、ジュン君も忙しいのです。それでは」
「まぁまぁ。土産話を持って来たんだ。今、ノワール侯爵が最も欲しがってそうな土産話をな」
「…何を知っているんです?宰相閣下」
「ミスリルドラゴンの番、探しているのだろう?」
…何で知っている?いや、ミスリルドラゴンが番を求めている事は以前から変わっていないし、探してはいたから宰相が知ってるのは当然なんだが…問題はタイミングだ。
何故、このタイミングでその話題を出す?
「レッドフィールド公爵領にある広大な森を知っているかな?」
「…赤の楽園の事ですか?」
レッドフィールド公爵領は王国北東部にあるのだが、そこに未開の地である広大な森がある。
そこは一年を通して赤い葉をつける木…常緑樹ならぬ常赤樹
の森だ。
尤も森の奥、中心部がどうなってるのかは誰も知らないので外周部のみの話かもしれないのだが。
「その森にはドラゴンが棲んでいるらしい。何度か遠目での目撃情報、森の中でドラゴンらしき痕跡を見つけたとか。大昔には森で迷子になった子供をドラゴンが助けた、なんて言い伝えもあるそうだ。興味深いだろう?」
…それが本当なら、ね。確かに有力な情報だし、エリザベスさんの件もある。間違い無さそうだが…
「…何故、その話しを俺…私に?」
「なあに。前途ある若者を助けたかっただよ。それでは、これにて失礼」
…本当に言いたい事だけ言って去って行ったな。何が目的なんだ?
「…相変わらず、耳の早い人ですね。ドミニーさんが事件を起こしたのは昨日だと言うのに」
「独自の諜報機関を持ってるって噂…ほんとかもね」
…そんな噂があるのか。信じていい…のかな?
赤の楽園…行ってみる、か?




