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「TOKIの世界譚 」宇宙の神秘と日本神話な物語  作者: ごぼうかえる
五話

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栄次と更夜3

 静夜と別れた。

 木暮の雰囲気は良く、優しく静夜を迎えてくれた。


 更夜はまともに祝言をあげられない事を謝罪し、将来の嫁として代わりに育ててくれるよう頼んだ。ちなみに、家は望月のが上である。


 「祝言も床入りも早すぎる。私は祝言まで生きられそうにない」

 更夜は木暮家に、自分の生が長くないことを伝える。


 木暮の当主は静夜を優しく撫でると、気の毒そうに承諾した。


 「私の息子が彼女の二つ上なのです。仲良くなれるでしょう」

 「……すまぬ」

 更夜は頭を下げた。


 静夜は木暮の息子になにやら遊びを教わっていた。楽しそうに笑っている。


 「中でゆっくりお話でも? 長旅でお疲れでしょう」

 木暮にそう言われたが、更夜は断った。


 「いや、このまま離れる。望月はまだ続く。姉、千夜の息子が望月を立て直してくれた。今後ともよろしく頼む」

 「……はい」

 木暮は更夜が死地へ行こうとしていると、悟った。


 更夜が離れようとした刹那、静夜がこちらを振り返った。


 「おとうさま」

 「……静夜、お前はこれから木暮だ。もう戦も終わる。幸せに暮らせ。ずっと愛しているぞ、静夜」

 更夜は今までで一番、優しい顔をすると、振り返らずに歩きだした。


 静夜の視線が悲しげに揺れているのがわかる。


 ……静夜、ごめんな。


 更夜は夕日に向かい、ただ黙々と歩き続けた。


 ……あの少女は俺を殺したかっただろうな。まさか娘と同じくらいの子が俺を殺しにくるとは思わなかった。

 ……俺は静夜を選んでしまった。

 だが……後悔はしていない。


 更夜はもう、気配を探ることもしない。守るものはもうない。


 ずっと歩き続け、何日も過ぎた。更夜は自分がいた屋敷付近の山にいた。かなり大胆な行動である。


 戻ってきた理由はひとつ。


 「墓を作る。あの子の」

 近くにあった木の枝を拾い、穴を掘り、枝を刺し、土を被せる。


 「平和な時代が……来るといいな」

 更夜はその場に座り込んだ。


 「本当はお前も……俺の娘にしてやろうと思っていたんだ。静夜の姉様になれるかと。だが俺は何も理想を叶えられなかった。それどころか、すべてをなくしたんだ。過去に殺したヤツらの恨みなら、受け入れよう。俺は、おそらくもう、幸せにはなれない。お前を殺した後にな、俺は静夜を捨てたんだ」


 更夜の拳に涙が一滴、二滴と落ちる。


 「全部なくなっちまったよ。嫁を殺されて、追手がついて望月から離れて、娘を捨てた。俺に何が残った? 俺の人生は……。俺の行き場のない怒りはどこにぶつければいい?」


 更夜が小さくつぶやいた刹那、背後で気配がした。


 ……ああ。

 やはり、お前か。

 「栄次」

 

 ※※


 栄次は運悪く更夜を見つけてしまった。

 「……更夜、なぜここに……」

 栄次は戸惑った。こんな近くにいるとは思わなかったからだ。


 「そんなことはいい。やはり、追手はお前か。栄次」

 更夜はいつもの軽薄な雰囲気で栄次に笑いかけた。


 「ああ、お前を殺さねばならなくなった」

 反対に栄次の表情は暗い。


 「だろうな。ああ、皮肉だな。行き場のない怒りをぶつける場所を、神がよこしたということか」

 更夜は開き直ったのか、不気味な笑みを栄次に向けた。


 そして、そのまま栄次に襲いかかる。栄次は霊的武器「刀」を取り出すと、更夜の隠し刀をすばやく避けた。


 しかし、栄次は避けきれず、胸を薄く斬られていた。


 「……っ」

 「本気で来い。お前は俺を殺しにきたんだろ? 後ろにそんなに見物客を連れて。俺を殺せなかったらどうするんだ?」

 「……本当は、やりたくない」

 栄次は更夜の挑発には乗らない。


 「では、俺がお前を殺してやろう。あの娘が叶えたかった相討ちだ。愉快だな。ああ、俺は男には……手加減はせんぞ」

 更夜は再び栄次の首を刈ろうと動く。忍だけあり、かなり速い。


 忍の中で高度な技、八ツ身分身を使い、残像で八人に見える。


 攻撃は鋭く、速く、栄次は防ぎ切れず、あちらこちらを斬られ、血を流す。流れ出る血を見ている内に、栄次の中に不思議な高揚感が芽生え始めた。


 ……まずい……。


 栄次は更夜に刀を振ってしまった。更夜は人間とは思えない運動神経で避け、飛び上がりながら、手裏剣を多数投げる。手裏剣は的確に栄次の急所を狙い、栄次は刀を使って手裏剣をすべて叩き落とした。


 すぐに鉤縄(かぎなわ)が飛んできて栄次に絡む。更夜はそのまま小刀で栄次を殺しにきた。


 栄次は更夜の攻撃を縛られた状態でかわし、縄を切った。

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)


 そのまま刀がぶつかり合わない攻防戦へと突入。刀同士がぶつかると隙ができるため、お互いが、ぶつかり合わないよう刀を振るっている。


 「なかなか強いな。斬れそうで斬れない。まさにヘビ」

 更夜は風を斬る音が響く中、感心したようにつぶやいた。


 「俺の背後をこれほどとるとは、今まで戦った中で一番強い。まさにタカだな」

 栄次は気がつくと夢中に戦っていた。集中が高まり、死ぬか生きるかのすれすれを何度も乗り越え、高揚感が高まる。 


 更夜も同じようだった。

 夕闇の森に二人の血が散らばる。


 ……強い……。

 栄次は肩で息をしながら、いつまでも終わらない死闘をやり続ける。


 ……勝負がつかん。

 鋭い攻撃はすべて急所を的確に狙ってきていた。


 ……本当に人間なのか……。

 相当な手練れ。


 栄次が更夜を分析していると、

 「お前、強いな」

 と、更夜が声をかけてきた。


 「お前も強いな」

 栄次は更夜に短く答えた。


 「だが、次で死んでもらおう」

 更夜は小刀を構え、八ツ身分身をしながら栄次を襲う。

 八人になった更夜の本物を見分けようとした刹那、栄次の体が動かなくなった。


 「……っ!」

 「俺がタダで話すわけないだろう? 糸縛りと影縫いだ」

 良く見ると栄次の体に無数の細い糸が絡まり、影にクナイが刺さっていた。


 「はっ!」

 栄次は空気を震わせるほどの気迫を出すと、細い糸を覇気で解いた。同時に、心理的に動けなくさせる影縫いも簡単に解いてしまう。


 「そんなこともできるのか。お前には武神でもついているのか?」

 更夜の刃は一瞬の違いで栄次の首元をかすっていった。

 隙がわずかにできた栄次に更夜はクナイを投げ、栄次の刀を飛ばす。


 「しまった!」

 栄次の刀は霊的武器なため、栄次が手を離すと消えてしまう。


 「不思議なことに、刀が消えたな」

 更夜は特に戸惑うことなく、栄次を攻撃する。栄次は更夜の容赦がない剣撃を避けつつ、ここで最大の間違いを犯してしまう。


 「刀を貸せ!」

 後ろで見守る五人に栄次はそう叫んでいた。

 五人は栄次が死んだら、更夜に殺されると思い、怯えていた。


 「はやくしろっ!」

 五人の内の一人が怯えながら、栄次に刀を投げる。  


 栄次はすばやく刀を掴むと、すぐに抜き、更夜の刀を受けた。

 初めて刃がぶつかり合う。


 「こんなに強い男は初めてだ」

 「俺もだ」

 しばらく競り合った後、更夜が力を抜いた。栄次はそのまま刀で袈裟に斬る。それを関節を外し、あり得ない角度から更夜は避けた。低い位置から栄次の脇腹を切り裂く。


 「……うっ……」

 低く呻いた栄次は怯む隙すらなく、そのまま背後から斬りつけてきた更夜をなぎ払う。


 「……っ!」

 更夜だと思ったのは木の枝だった。

 「変わり身かっ!」

 下から突いてきた更夜を三歩さがり、かわす。


 「かわしたか」

 「片目だが、距離がわかるのか」

 栄次が尋ねると、更夜は冷たい笑みを向けた。


 「スズが目をやったおかげて、片目が潰れたが、元々俺は目が悪い。見えなくても、目には頼っていない」


 再び消えた更夜に、栄次の気持ちが高ぶる。


 ……こんなに強い人間が、この世にいるとは。

 もう二度と……こんな男は出てこないかもしれない。


 「強い……」

 栄次は自然と笑みをこぼしていた。


 「強いな……」

 栄次の瞳が赤く染まり、武神の神力が溢れ出す。


 「本当に武神がついているのか? 気が異常だな」

 ふと近くで更夜の声がした。

 栄次は刀を振り抜き、更夜の腹を切り裂く。


 「俺が見えたのか」

 更夜は栄次の刀をうまくかわし、近くに着地した。

 軽くかすり、着物が赤く染まる。


 「いや、見えなかった」

 「気を読んだな?」

 「ああ」

 二人はさらに斬り合う。

 やはり刀はぶつかり合わない。

 力負けした方が斬られるからだ。


 あまりに勝負が決まらないため、後ろで見ていた五人の一人が更夜に向けて弓を放った。


 「弓か。この男には当たらない。無意味なことをするな!」

 栄次はいらだっていた。

 獲物をとられた獣のように気が立っていた。


 しかし、更夜は何かを守るように、弓に当たった。


 「……っ」

 栄次は戸惑った。


 ……なぜ、当たった?

 どういうことだ。


 栄次の思考が一時停止したが、体が勝手に動いていた。

 更夜が見せた唯一の、「隙」。

 栄次の体は留まることを忘れていた。


 「……っ!」

 気がついた時には……

 栄次は更夜を袈裟に斬ってしまっていた……。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 二人のそれぞれの想いや事情が分かっているので、二人が死闘を繰り広げるのを見るのが本当に辛い……(´;ω;)ウゥゥ
[一言] 非殺だったはずの栄次が切ってしまうとは…なかなか由々しきことが起こりましたね…これが後悔だったりするのでしょうか…でもこれはまだパーツの一つのようにしか思えませんし…気になります。
2022/07/26 16:57 退会済み
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[一言] ああ(´;ω;`) これも、運命なのか。
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