月夜は過去を映す5
「じゃあ、まず……竜宮に行くか」
プラズマは珍しく戸惑いながら、アヤとリカにそう言った。
「そうね。プラズマ、どうしたの?」
アヤに尋ねられ、プラズマは苦笑いを浮かべる。
「いやあ、高天原に入ってから、高天原南の竜宮に行くだろ? 龍神は気性が荒いんだよ……」
「あの、プラズマさん、襲われるってこと、あったりします?」
プラズマの発言にリカは怯えながら尋ねた。
「ないとは言いきれないんだよなあ……、組織で動いているとは言え、オーナー天津が見ていないところでアトラクションとしてじゃれてくることもありそうで……じゃれて来られたら、どうなるか、俺は怖いぜ」
「あなた、もしや、竜宮に行くのが怖くて渋っていたの? あなたのことだから、前々からある程度、予想していたんでしょ?」
アヤに問われ、プラズマは頭をかく。
「あんた……本当に頭がきれるなあ……。ま、まあ、もういいや。さっさと行くか。ああ、あんたらはまだ高天原に入れる神力がないから、俺の付き添いって感じになるからな?」
「……足手まといにならないよう、頑張りますー……」
リカが小さくつぶやき、アヤは頷いた。
プラズマは高天原南と書かれたチケットを取り出すと、神力を提示する。足元に五芒星が現れてから、プラズマはチケットを床に置いた。
すると、ワープ装置らしきものが作動し、プラズマ、アヤ、リカを高天原へと飛ばした。
※※
深夜の森の中。
栄次はスズという少女の声に導かれ、入ってはいけない境界を超えようとしていた。
「……どこに向かう?」
栄次が尋ねると、スズは子供らしく笑いながら答える。
「当時に戻って更夜と私を救ってみる?」
暗い山道を歩いていた栄次は足を止めた。
「私はね、あなたの奥底にある『後悔』に気づいている。あなたは、唯一殺してしまった更夜にずっと『後悔』している」
「……なぜ、それを知っている。俺は人の子の前で神だと言った事はない」
栄次の声が鋭くなったので、スズは栄次をからかうように言葉を発し始める。
「自分で考えなよ。私はあなたに『呼ばれただけ』だから」
「……どういう……ことだ」
栄次は訝しげに尋ねたが、スズは関係なく、話を進めた。
「さあ、行くよ。帰っちゃ来れない、過去の恐ろしい『輪』の中へ。あなたの心が繰り返しを要求しているのだ。従え、栄次」
スズの声はそこで途切れ、足元に時計の陣が現れる。栄次は口をつぐむと、素直に時計の陣の真ん中に立った。
夜の闇に淡い緑色の光が多数舞う。栄次は緑色の光に抱かれながら、懐かしい『あの時』を思い出し、そのまま、その場から消えた。




