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ハードルは踏みつぶすもの




 議員さんたちに必要な能力を渡して数日。


 今日の一面は事故で10人の死者が出たニュースを抑え、第2身分が誕生したという昨日もやったような報道だった。


 そんな新聞を片手間で読みながら、俺は今迷っている。


「天地ちゃん。行きたい高校は決まりましたか?」

「それが全く」


 この国で新学期は4月に始まるが新学期に入学できる人の条件は、去年の12月31日までに所定年齢を迎える人である。


 つまり1月2月3月生まれの人は、新学期が始まる前に他の人より1歳上になるわけだ。


 なんでこんなにめんどくさいことをするんだという疑問はもっともだが、これには明確な理由がある。


 まずこの国の義務教育は6歳から始まり11歳で終わる。


 義務教育は人に向けての制度なので、人間かそうでないかを識別するため、これ以上早めることは出来ない。


 そして5年生が最高学年である、理由は10歳でその人が何かが出来るか大方分かるから、それ以上の一般教育は意味がないから。


 運動に関する赤ならば勉強せずに体育会系にすすみ、医療に関する水色ならば生体の知識を学ぶのは無駄なく当然。


 そして高校になると入学試験は全国共通の筆記試験と自己アピールになる。

 筆記試験はよほどの馬鹿を省くためのもので、足切り扱いでしかない。


 重要なのは自己アピール

 高校の入試は1月から始まる。皆ギフトが使える状態であり、それを使ってアピールする。


 いかに派手に、いかに美しく自分のギフトを紹介する。


 そして俺はすべての系統で能力を使えるため、全ての高校に挑む権利が与えられている。


 それだけじゃない。

 むこうから逆推薦という形で、我が高校に入学してくださいとの特注のパンフレットが来ている。


 日本で最難関と呼ばれる高校も、今年の募集人数を一人増やしてでも受け入れると校長の直筆の手紙で送ってきた。


 それ以外にも学費はいらない。むしろ新たに特待生枠を作りお金をやる、なんてところはザラ。


 それくらい俺の身分は高かった。


 多分この国で俺くらいだろう。


 進路を漠然と悩んでいるのは。


「……分かんない。でもやることは決めた」


 俺がしたいことなんて何もないけれど、何もしたくないが俺のしたいことだけど。


「本気で入学してほしいところに入学する」


 各大学に以下のようなメールを送った。



*******************

 入学するにあたっての条件


・偽名の使用を許可すること

・学内で身分を偽ることを許可すること

・卒業するまで色葉天地が在籍していることを明かさないこと

・顔を外部に出さないこと

・他学生に色葉天地がいることを明かさないこと

・教師間もできるだけ秘密にすること

・寮の場合ペットの持ち込みを可にすること


 他校の兼ね合いにより条件の追加や削除はある

 

 返信は4日待ちます。

*******************



 吹っ掛けすぎたかと不安になったが、6割の学校が完全承諾。残りも交渉したり条件付きでの承諾だったので逆に困った。




 仕方がないのでいろんな大人と相談し、私立としては最高峰で比較的家からも近い所に受験することにした。


 名前を書き、証明書を提出し、アピールを2つ3つした後、その場で合格を言い渡される。


 ちょろかった。


 


 私立フェリックス高校


 入学条件

 色彩指定:なし

 異能濃度:5以上(俺は7)

 年齢制限:15歳以上

 学力制限:300/500(俺は360)


 ギフト主体の社会で、更にギフトによる上下関係が激しい高校。


 例え3年だろうが1年よりも濃度が薄ければ、立場が低くなる厳しい高校。


 入学条件の異能濃度5以上は非常に厳しい。


 新生児の数が120万、そこから人間になるのが100万

 濃度1が全体の過半数を占め(血のつながった父さんがここ)、残るのが40万ちょい(二十歳の父さん)

 更に濃度2が6割で16万(弟) 濃度3で3万

 濃度4で1万をきり、濃度5以上で1000人と言われる(母さん)

 ちなみに濃度6で100人、濃度7になると5人いれば豊作と言われ、年度によっては1人も産まれてこない年もあるくらいだ。


 つまり初期段階で0.1%しか入学条件を満たさない。

 そして毎年100人程度しかとらないので、そこから倍率が上がる。


 ここまで人気な理由は、やはり学園長の存在が大きい。


 学園長 大城三笠 はこの国で唯一の第2身分の女。


 ただでさえ珍しい濃度7のギフトを2つ持っている。


 国が学園長にお金を出し、そのお金で学園を回している(だからフェリックス高校は大城三笠の所有物として、私立の扱いになっている)


 設備も教師も最高のモノが揃っており、創立され10年ほどしか経過していない高校だが、今までの高校をぶっちぎって人気NO.1となった。


 そんな高校である以上、逆に自分達の高校に自信があるわけで、条件をいくつか変更したいという交渉があった。


 俺も代理人と共に交渉席につき、重要なものだけを残していくつかの条件をのむことにした。


 こうして訪れる四月


 遂に入学の日を迎える。






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