この世界は俺にだけ優しい
新時代記念。
多分メインが終わるよりこっちが終わる方が早い
俺と母さんと父さん、5つ年上の父さん2号と養子縁組の弟と妹と血の繋がったいもうとペット1匹
これが俺の家族。
「今日は、15になる天地ちゃんのために、板前さんがわざわざ来てくださいました」
我が家は確かにお金はある方だが、その稼ぎで誕生日に☆3つをとれるような料理店の板前を呼ぶことは出来ない。
本当にきてくれたんだろう。
正確には色葉家の知らないところで頼まれたんだろう。
「何が食べたい?」
誕生日だからではない。
いつもと変わらず、最初に手を付けるのは俺だ。
「サーモン。ワサビは少なめで」
快く板前さんがシャリを握る。
「あいよ」
本当においしい。
続いて母さんが注文し、父さんが2人が注文し、俺が食べ終えたのを見て、再び俺の注文が入る。
ちょううまい。
その後弟と妹が注文し、各々舌鼓を打つ。
いもうとは注文しない。いや、そもそも俺以外誰も視界にも入れていない。
それもそうだ。
いもうとは人扱いされていない。
「おすすめを2人分。1つはワサビ抜きで」
仕方がないので注文をする。
「あいよ」
口では俺が何をしたいのかわかってか、ワサビ抜きの方は明らかに手を抜いて握っていた。
まあいいか。
「あ、落としてしまった」
迫真の演技で寿司をいもうとの前に置く。
「落としてしまったものは俺はもう食えないなあー。仕方ない。いもうと、喰え」
いもうとは頭だけ深々と下げ、ゆっくりと最上級の寿司を味わった。
この家のヒエラルキーは俺が頂点である。
違うな。
世間の一般論として、この家の場合、一番偉いのは俺だ。
5年で人かどうかが決まり
10年で人の価値が決まり
15年で人生が決まる。
この国を始め先進国と言われるすべての国々でこの言葉と似たような意味の言葉が広まっている。
21世紀半ば、ギフトと呼ばれる異能力が認められている。
この能力は現在すべての人間が持っているとされている。
訂正。
正確には5歳児の時にギフトホルダーだと識別された存在が、人間と呼ばれる。
つまりその試験にパスできない2割が人間未満とされ、人間扱いされない。
そして10歳の時、とある水槽試験が義務付けられている。
自分の手を試験薬の入った水槽に入れ、その濁りを確かめる。
濁りの色によって能力の系統が知ることが出来る。
たとえば身体能力の強化なら赤色、火や風といったエレメント関係の能力なら緑色。
もちろんこの色も重要だが、それ以上に濁りの濃さがより重要になる。
濁りの濃さによって持っているギフトの強さを知ることが出来るからだ。
例えば同じ赤でも、100mを9秒で走るのが限界の人間と余裕で1秒で走れる人間がいる。
そういう人たちがいた場合、赤は赤でも後者を測定したほうがより濁りの強い状態になるわけだ。
そういう背景があり、水の濁りと場合によって色、ごくわずかの例外として血統を測定し、その色によって身分が10段階に分けられる。
この身分が1つ2つ違うならともかく、3つ以上離れると絶対服従が法で決められており、3回以上逆らうとその場で死刑となるなど、完全な身分制度がとられている。
また当然身分が高い人間ほど権利も多く存在し、選挙の時1票の価値が1ではなく、5であり25であり125になったり、母さんのように重婚が許可されていたりなどするわけだ。
この測定結果が良かったので、俺は周囲から優しく扱われている。
そして始めて15になった日。
能力者は必ず明晰夢を見る。
その夢によって自分の能力が何なのかを知ることができ、そしてギフトが使えるようになる。
その日が来るまで能力を使うことが出来ないので、どんなに濃度が高くても人間と変わらない。
逆に、その日が来れば別の意味で人間として扱われなくなる(今も人間扱いされているとは言えないが)。
今日がその日
夢を見るとされている日。
成人式や結婚式とはわけが違う、その人の人生が決まる日。
11時を回り、本来両親はまだ起きている時間。
だが光で眠りの妨げになってはいけないと皆が皆自室に入る。
いつもは俺のペットとして同室しているいもうとも、さすがに今日だけは別の部屋に移動していた。
「寝るか」
1か月前に見つけた自分に合った安眠法を試し、心地よく眠くなった。
5分で寝た。
ああ、これが明晰夢か。
そして自分の目の前に、人によくにた人ならざる存在を確認する。
それは俺を見て優しく微笑みかけ
あなたの、いいえあなた様の能力は
ギフトを授ける能力 です。
リスクはありませんが、この能力以上のものを授けることは出来ません。
自分にも他人にも使用できます。
起きたら使えるようになっています。
これから頑張って生きてください。




