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ゼムナ戦記 フルスキルトリガー  作者: 八波草三郎
一葉落ちて天下の秋を知る

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正邪重ねて(4)

 ビクトルのブレードとパトリックのツイングレイブが激しくぶつかり合い、干渉エネルギーが紫電となって舞い散る。宇宙で無音のうちに行われている激突だが、コクピット内では効果音として流れる。それはパイロットを高揚させる効果も伴う。


「行く行くは星間管理局の統制も必要ない宙区にしたいってか? それはベスティア外人類圏とどう違うって?」

「星間銀河圏を敵視しない。並び立ち、ともに発展する関係性も作れる」

「都合良すぎね?」

 他者のルールに縛られるのは嫌で、しかしメリットは受け取りたいという。


 パトリックは肩に担ぐように構えたツイングレイブをくり返し強く突き入れる。そのパワーはブレードの突撃の比ではなく、生半可には受け流せない力を持つ。

 ビクトルがどうにかブレードで弾きながら隙間にビームを挟もうとしている。だが、彼は突き出されたビームランチャーの筒先をツイングレイブの逆側をまわして斬り取ろうとした。慌てて引いている。


「お前らが宇宙の小間使いって馬鹿にしてる星間(G)平和維(P)持軍(F)がなにしてるって思ってる?」

「出すぎないよう各国の国軍の監視をしている」

「違うさ。ゼオルダイゼも含めた加盟国がどうしてこの銀河を自由に飛びまわれるか考えたことないのか? ほうぼうで湧いてくる宇宙窃盗団だのテロリズムに走る思想集団だのを潰してまわってくれてるからじゃん」


 すかされた切っ先はそのまま流し、回転力を利用して次の一撃につなげる。彼の連撃にビクトルは付け入る隙を見つけられない。

 堪らず機体を引いて間合いを取ろうとする。しかし、そこはルオーの領域である。ベルトルデから離れたが最後、精密狙撃のターゲットでしかない。


「それがなきゃ、貿易品の何%かは年単位で確実に失われる。経済損失は半端じゃなく、そのうち立ち行かなくなるんじゃね?」

「そのための軍事同盟だった」

「同盟軍でどうにかするって? できるもんか。戦力も組織力も段違いさ。それだけの力があるのに、GPFは国軍が悪さしないか見張る程度にしてくれてる。なんなら、加盟国には一定以上の戦力保持を許さない条文を星間法に組み込んでもいいってのに」


 リフレクタをクアン・ザのスナイプフランカーに散々叩かれ、逃げ場のなくなったビクトルは仕方なくパトリックとの勝負に活路を求める。それは彼らの思う壺。

 今度はベルトルデの連撃の前に防戦一方になる。カラマイダを自由に飛ばせられない状態で、どうにか戦うしかない。まるでビクトルが描いたゼオルダイゼ同盟の未来のように。


「親のように見守ってくれてる相手を批判するとかさ。お前、反抗期には遅すぎね?」

「愚弄するな! なにも方法を考えていないわけではない。賊には圧倒的戦力を誇示して見せればいいのだ。その手段がある」

「どこにそんな手段がある? 国民全員兵力とか夢見事を言うんじゃないぞ」


 そのままでは押し切られると思ったか、ビクトルはビームランチャーをキャッチに収め、左手にもブレードを持たせる。付け焼き刃と思ったが、ところが意外と見事に使ってみせる。

 ブレードが両手とツイングレイブの両端の違いだけになった。手数は変わらず、ブレード二本で受けもできる敵手は攻撃に幅が生まれてきている。


「夢などではない。圧倒的技術力がそこにある」

「どこにあるってんの? 宝探しでもする気?」

「ベスティアの向こう側にだ。彼らはそう言っている」

「あるもんか。どこにそんな……」

 パトリックは引っ掛かりを覚える。


 斬撃力はベルトルデのほうが上、防御力はカラマイダが上という状態になった。戦闘開始時とはまるで逆の立場になったようである。


(オレってまだ伸び代あったのか)

 意外とパワーバトルができている自分に驚く。


「あるんです」

 違う思いに捕らわれているとルオーが挟んできた。

「ベスティアの向こう側にはね」

「そうだ。ゴートにはまだまだ技術が眠っている。そこを攻略すれば、GPFなどものともしない戦力を手に入れられる」

「そう、ベスティアにそそのかされたんじゃないです? つい、もらしてしまいましたね」

 ビクトルは絶句している。

「ベスティアと共闘すればゴート宙区の秘密を手に入れられると吹き込まれた。ルビアーノ大統領はそれを目処に同盟拡大を図ってきた。そうですね?」

「……なにが問題だ!」

「呆れてものが言えないって。お前ら、新宙区を侵略しようってのか? 天下の(G)(F)でさえ対抗できるかわからないほどの相手に? 無理じゃね」


 動揺が剣筋にも表れている。急速にパワーまで落ちた斬撃はベルトルデの猛攻を抑えきれない。下がりながら抵抗する場面が多くなってきている。

 それなのに致命的な隙を作らないのはさすがというべきか。ツイングレイブの剣先が各部をかすめながらもどうにか回避している。それでなければトップエースも名も冠せないだろう。


「夢どころじゃないじゃん。勝率ゼロの博打に周りの人間の命という賭け金注ぎ込むようじゃ終わりだって」

「違う。ゴート人類など宝を持ち腐れているだけの未開人。我らが効率よく使ってやればこそ真価を発揮する秘密だというのに」

「中身がわかってないから秘密なんだろ? どうやって真価を測ってるっての」


 論理矛盾に気づいてないビクトルに、パトリックは呆れ声で応じた。

次回『正邪重ねて(5)』 「そんな単純でもなさそうですよ」

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― 新着の感想 ―
更新有り難うございます。 あぁ、唆されて夢、見ちゃったかぁ⋯⋯。
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