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ゼムナ戦記 フルスキルトリガー  作者: 八波草三郎
一葉落ちて天下の秋を知る

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正邪重ねて(2)

 美女にいいところを見せようと張り切っているパトリック。その援護だけでなく、弾幕を抜けてくる敵機も相手しているゼフィーリア。そして、弾幕の要となっている彼ルオーに掛かる負担は大きかった。

 それも解消されつつある。両翼が突出し、敵部隊を側面から挟撃しようとしているのでそちらに戦力を割かれる状態になったので当然だ。当初の作戦どおりに進行している。


「一山越えたかしら」

「どうにか、ですが」

 彼はやっと生まれた隙間にスナイプフランカーの弾液(リキッド)パックを換装する。

「ミアンドラ様が押し出す段階に入ったと判断したようです。僕も一緒に前に出てパットの援護を厚くしますね」

「そうしてあげて。彼、ちょっと大変そう」

「あまり優しくすると、もっと頑張ってしまいますよ?」

「決めちゃうよーん!」

「案外余裕ありそうだわね」


 ゼフィーリアもそれとなくフォローしている。こうして明瞭な回線が確保されているのがその証拠だ。彼女のヘヴィーファングにはフレニオン受容器(レセプタ)が搭載されていない。パトリックのベルトルデを介しているのだ。


「ほどほどに。君の空元気は相方ながら見抜けないときあります」

 苦しいときほど弱みを見せない。

「オレちゃんはさ、ライジングサンのエースなのよ。エースはエースと勝負するのが順当じゃん」

「確かにそうですが、母数が違いすぎません?」

「三分の一だものね」

 相手は三千をゆうに超える。

「少人数で敵を撃破するのが英雄の誉れ」

「そういう英雄ほど、なにかの拍子に命を落としてしまったりとか歴史にありません?」

「変なフラグ立てんじゃないよっと」


 軽口を交わしつつルオーは二人と近づいている。ライジングサンのセンサーも動員し、クーファの認識も共有しているので視界が開けてきた。


(モンテゾルネも、マロ・バロッタとメーザードの連合部隊もきっちり締めに掛かってる。半包囲の圧に苦しんでるな)

 動いているのは両翼だけではない。

(上下に抜けられないよう、ガンゴスリ部隊の後衛も張り出してきた。タイミングに関してはもう僕がミアンドラ様にあれこれ言うまでもないねぇ)


 現在は半球状に包囲の手を広げつつある。分厚い弾幕の圧力に屈して爆炎と化す光も多数見られるようになってきた。

 白兵戦に転じている戦列だけでなく、全体が有機的に機能している。セオリーなら、敵のエース級が突破に掛かる局面だが、それを彼らが抑えているので戦局を動かせなくしていた。


「いいのかい? もうツボに嵌ってんじゃね?」

「こんなものでゼオルダイゼは崩れない。私が貴様を倒して突破口を空けるまでくらいはもつ」

 パトリックがビクトルの焦りを誘うように口撃を仕掛ける。

「無理だって。お前、ルオーとオレの連携を味わうのは初めてじゃん。しんどくなってきたから虚勢張ってんだろ? 素直になれ」

「マロ・バロッタの国軍崩れが、偉そうに」

「調べてんじゃん。だったらわかるだろ? オレ様が国軍に進んでたらとっくの昔にお前と同じトップエースになってたってくらい」

 同等だと言う。


 ただの挑発だ。そんな未来はなかったことくらいパトリックが一番わかっている。もし、彼が国軍に入隊してバロッタに残っていたら、もっとくすんだ人生になっていたことだろう。

 どこにいようがビスト翁の手の内と絶望し、一人で出奔したかもしれない。そうなったら、一人飛び出したルオーとは違う出会い方をしたのだろうか。いずれは交わる運命なのだとしたらそれも面白い。


「だったらなんだ。今の貴様はただの宇宙の小間使い(PMSCパイロット)だろうが」

 ビクトルはあくまで認めようとしない。

「お陰でベルトルデを手に入れた。この機体に乗ったオレは無敵なんだよん」

「その減らず口は戦士のものではない」

「戦士なんぞになるつもりはないね。オレは世紀の色男として歴史に名を刻むのさ」


 斬り結んだ状態から力任せに紫電を撒き散らして離れる両機。ビクトルのカラマイダは隙間にビームを挟んで突き放そうとする。しかし、光条は横からルオーのビームに叩かれてプラズマボールになるだけ。

 それを予測していたパトリックはベルトルデを上に跳ねさせて、紫電球ギリギリをかすめさせるように狙撃する。至近距離の一撃にビクトルはリフレクタで防ぐしかできない。


「貴様らライジングサンさえいなければ!」

 苦戦が言葉となってもれる。

「それは負けフラグじゃね?」

「私は負けん。ゼオルダイゼも負けん。オイナッセンも貴様らのパルミットもどこも我ら盟主国の秩序に従うのが正しい未来なのだ。なぜ、それを捻じ曲げようとする」

「面白いこと言うじゃん。お前、まさか星間管理局の秩序に不満を持ってるのか?」

 言葉尻を捉える。

「そこまでは言ってない。が、足りんのは事実だろうが。実際に戦争はなくなってない」

「管理局はそんなもん掲げてない。皆が平等にこの銀河を使えるようにする秩序だけ。戦争をしているのは国。それとも、国家運営まで統制されたいってか?」

「踏み込まねば平和など実現しない」


(これは誰の言葉? 誰になにを吹き込まれた?)

 ヒントな気がする。

(ビクトルを御せるとしたらルビアーノ大統領? まるで、なにか思想誘導をされてるかみたいな台詞だねぇ)


 ルオーはその言葉の中に真相がひそんでいると気づいた。

次回『正邪重ねて(3)』 (間違ってもオレの野心を第一には考えてくれないもんな)

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― 新着の感想 ―
更新有り難うございます。 何か本格的にキナ臭く⋯⋯。
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